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2025.11.27【ことこ茶店】なんでもない日が特別な日になるお茶時間を

2024年12月、世田谷区経堂で惜しまれつつ幕を閉じた台湾茶と国産茶の専門店「ことこ茶店」が2025年6月、台東区池之端に移転オープンしました。

店主の馬場さんは姉からの上海土産のお茶がきっかけで中国茶に魅せられ、お茶の世界へと足を踏み入れました。そのお茶自体は苦茶で飲みづらかったそうですが、杯を重ねるうちにお茶の味が変化するという中国茶の特性に衝撃を受けたそう。専門店で15年ほど働きながらお茶に関する知識と経験を積み、その後日本のお茶メーカーで店長として働いていたところ、縁あって世田谷区経堂にご自身のお店を持つことになったのが2020年12月。その頃から数えるともうすぐ丸5年を迎えるという「ことこ茶店」にお邪魔しました。

 

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上野恩賜公園の北西側、清水坂に面するマンションの一角にひっそりと佇むことこ茶店

 

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扉の向こうに広がる空間に自然と心が踊る。雲南省でとれた茶をチベットへ馬に乗せて運んだ

交易路「茶馬古道」からイメージした馬をお店のトレードマークに

 

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大きな窓に面した小上がりは座敷になっていてゆったりとお茶を楽しめる。

上部にディスプレイされたお茶缶は圧巻

 

烏龍茶は大きく分けると軽発酵で花のような香りがするさっぱりとした味わいのものと、焙煎や発酵により香ばしさやコクがあるタイプのものがあるそう。メニューにはその2タイプで数種類ずつ、また、お花やハーブ、果物と茶葉を合わせた見た目も華やかなお茶が数種類あります。季節のおすすめ茶もあり、さらにはメニューにないものでもお出しできるそうなので、馬場さんにご相談ください。

味わいの相談の他にもお茶を飲んでシャキッとしたいのか、リラックスしたいのかなど、気分に合わせたお茶のセレクトも可能だそうです。

 

お話を聞いて驚いたのは、茶葉と茶器には相性があるということ。茶壷(ちゃふうと読む。急須のこと)には、陶器のもの、磁器、ガラスのものがあり、茶葉に合わせてそれらを使い分けているそうです。知らなかった!特に、陶器焼き締めのものは使い込むほどおいしいお茶が淹れられるのだとか。

 

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馬場さんが育てた茶壷たち。使い込んでツヤが出たこれらの茶壷を使ってお茶が飲める贅沢と言ったら!

 

お茶を選ぶと、それに合わせてベストな茶器を選んでくださいます。せっかくなので馬場さんが育てた土の茶壷と相性がいいお茶をセレクトしていただきました。
いただくのは、つい先週台湾で買い付けてきたばかりという季節のおすすめ茶「司馬庫斯高冷茶(しまんぐすこうれいちゃ)」。台湾の北西部に位置し、標高1,800メートルほどの山間深い集落でとれる貴重なお茶で、軽発酵の清香型烏龍でありながら重厚な味わいが特徴です。

台湾茶は一煎目が肝心で、ここを失敗するとリカバリーが効かないそう。一煎目は馬場さんが美しい所作で丁寧に淹れてくれるので、そこは安心してください。二煎目からは自分が好きなタイミングでポットのお湯を淹れていただくことができます。それでは工程を追って見ていきましょう。

 

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仕入れてきたばかりの「司馬庫斯高山茶」1,300円(税込)をいただく。青々としていてころんと丸まった茶葉がかわいらしい

 

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まずは茶壷(急須)、茶海(ピッチャー)、茶杯(湯呑み茶碗)を沸騰したお湯で温める

 

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茶壷の底が隠れるくらいの量の茶葉を入れ、沸騰したお湯を細く、やさしく注ぎ入れる

 

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ひたひたにいれたら、このお湯は捨てる

 

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再度あふれるくらい熱湯を注いだら蓋をして1分ほど蒸らす。その間、茶壷の上からお湯を注ぐ。

茶壷の内側と外側の温度を一定にすることが目的

 

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茶海に一煎目を入れる。この時、茶壷にお湯を残さず最後の1滴まで注ぎ切ることがポイント

 

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茶海から茶杯へ。澄んだ黄色の水色(すいしょく:お茶を淹れたときの液体の色のこと)が美しい。

清涼感がありすっきりとした印象

 

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お茶をいただいている間は、香りがこもることを避けるため蓋は閉めないのがポイント

 

おいしいお茶を淹れるには、お湯の温度やタイミング、注ぎ方はもちろん、数々の技の積み重ねが必要です。詳しく知りたい方は、小さな講座やお茶会を定期的に開いているそうなので、こちらに参加してみることをおすすめします。おいしいお茶の淹れ方、飲み方など知識を教えてもらったり、いろいろなお茶を飲み比べることができたりと、魅力いっぱいです。お店のインスタグラムやホームページをチェックしてみてくださいね。

 

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二煎目は一煎目より10秒ほど浸出時間を短くする。甘やかでまろやかな口当たりに変化!

 

台湾茶器が小さいのは、少量のお茶の葉で何度も淹れる「多煎(たせん)」という淹れ方をするため。一煎目、二煎目…と杯を重ねていく際に変化していく味わいや香りを楽しみます。1回分の茶葉で6煎ほどは楽しめるそうです。

お茶だけを楽しむのもいいですが、やはりお茶菓子もいただきたいところ。おすすめは台湾土産の鉄板ともいえる「パイナップルケーキ」と3種のドライフルーツがセットになった「鳳梨酥プレート」。馬場さんが台湾に行くたびに試してきた数々のパイナップルケーキの中で、ここが一番という選りすぐりの逸品です。実は、現在は岡山県でお店をされている台湾出身の方が作られたものを取り寄せているそう。

 

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台湾茶に最高に合うお茶菓子とともに。「鳳梨酥プレート」500円(税込)

 

注文後にリベイクして提供されるパイナップルケーキはサクサクの生地の中にフレッシュで甘酸っぱい餡がたっぷり詰まっていて本当においしい!私史上でもNo.1かもしれません。台湾茶との相性もバッチリです。ドライフルーツは季節によって異なり、この日はライチ、ローゼル、茶梅。ライチは濃厚な甘さと豊かな香りが特徴。台東産無農薬のローゼルはとても立派な大きさで、酸味があって爽やかな味わい。台湾から取り寄せている茶梅はまろやかな甘味と程よい酸味に癒されます。十分すぎるほどのお茶請けラインナップに、お茶がグイグイすすみます。

 

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パイナップルの酸味とサクサクの生地が最高においしい

 

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あふれるほどお湯を注いでも、穴が空いた受け皿が受け止めてくれる。すべて計算された効率的な道具に感心する

 

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お茶を飲み切った空の杯の残り香を楽しみ、余韻に浸る

 

好きなタイミングでお茶を淹れ、お茶請けをちょっぴりかじり、お茶を飲む。普段はコーヒーばかり飲んでいる私ですが、お茶を飲むとこんなにもゆったりと安らぐ時間が持てるのかと目から鱗。なんだか日常とは違った特別な時間が流れている気がします。
お店にいらっしゃるお客様方も、ずっと携帯を見たりパソコンで作業したりする方よりも、読書をしたり、書き物をしたり、物思いに耽ったりとリラックスして思い思いに自分の時間を楽しまれる方が多いのだそうです。気づけば3時間も4時間もいらっしゃる方も。お茶をいただく行為のほかにも馬場さんのやわらかなお人柄と心地よい空間がそうさせているのだと思います。

 

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物販も充実。すてきな茶器がたくさん

 

店内では馬場さんがセレクトした数々の台湾茶と国産茶、茶器がずらりと並んでいます。国産茶は、ウーロン茶と製法が似ており、その味に惚れたという熊本県芦北産の伝統釜炒り茶を販売しています。先ほどいただいたドライローゼルもあり、自身のお土産や、お茶好きな方へのプレゼントに喜ばれそうなものがたくさんあります。

上野で美術館や動物園にお立ち寄りの際、また、谷根千散策などと合わせて、わざわざいきたいお店です。ぜひ、特別な時間を味わってみてください。

 

ことこ茶店
住所 東京都台東区池之端4-16-29 タカミ千葉ビル1階
TEL 080-1903-5280
営業時間 木〜日曜、第1、第3水曜11:30〜19:00(L.O.18:15)
定休日 月、火、第2、第4水曜
東京メトロ千代田線根津駅から徒歩16分
ホームページ    https://cotocopo-tea.stores.jp(外部サイトへ移動します)
インスタグラム https://www.instagram.com/cotoco_chaten/(外部サイトへ移動します)

 

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