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JR総武線浅草橋駅の高架下は、飲食店をはじめ、革製品やアクセサリーパーツの専門店など数々のお店が立ち並び、問屋街の雰囲気が味わえる楽しい散策スポットのひとつです。その高架下の南側に、オープンしてもうすぐ1年を迎える小さな工房があります。コーヒー業界で働いて25年となる春日さんが満を持して開いた、エチオピア産のコーヒー豆だけを扱う焙煎所兼コーヒースタンドです。

浅草橋駅の高架下(南側)沿いを歩くとステキなお店が目に入る
店主の春日さんがコーヒーに魅せられたのは、大学4年生の時に飲んだ1杯のコーヒーがきっかけ。ある日、友人と訪れた江東区亀戸の喫茶店「珈琲道場 侍」で飲んだ本格的なコーヒーのおいしさに感動し、当時決まっていた就職先を蹴ってそのお店に入門(就職)。以来コーヒー一筋でやってきたというからその情熱に驚きます。
独立するにあたり、初めて感動したコーヒーがエチオピア産だったことと、そもそもエチオピアがコーヒー発祥の地であることなどから、取り扱う商品をエチオピアに限定して専門性を高めることにしたそうです。
エチオピア産の豆だけで大丈夫?という心配はご無用。同じエチオピアでも地域の違い、標高の違い、農家の違い、品種の違い…などバラエティ豊か。また、一つの豆でも生産プロセスが違うと味、香り、風味などが全く変わるため、その楽しみ方は無限大なのです。

(左から)嫌気性発酵、ウォッシュド、ナチュラルの豆。生産プロセスの違いでこんなにも
見た目(色)が異なるのがわかる。もちろん香り、風味も全く違うものに

「カラモ」の昨年のものと今年のもの。小粒ながら複雑な味わいを持つ。
生産年によっても多少風味は異なるため焙煎の仕方なども変えるという
コーヒーは常時8種類の豆が並びます。取材時は「タミルタデッセ」、「カラモ」、「ゲイシャ」、「アナソラ」、「アリーチャ」、「コンガ」、「イディドハイレ」、「カフェインレス」がありました。すべてハンドドリップで淹れていただけます。また、これらのラインナップから日替わりで「本日のコーヒー」がセレクトされ、なんと1杯500円でいただけるというからびっくり。本日のコーヒーはお客様を待たせないようマシン抽出で行うそうですが、エチオピア産のスペシャルティコーヒーがワンコインでいただけるのはうれしいですね。お近くの方がうらやましい!

お店のメニュー。コーヒーは常時8種ほど

挽きたての豆の香りを嗅がせていただく。いい香り〜!
コーヒーはオーダーを受けてから豆を挽くので、挽きたての香りを堪能できます。そこから一杯一杯丁寧にハンドドリップで淹れてくれます。目の前でドリップの様子を見ながらコーヒーを待つのはなんとも贅沢なひとときです。
春日さんは長年喫茶店で経験を積まれたので、日本のコーヒー文化の象徴とも言えるハンドドリップを大事にしているそうです。前述の「珈琲道場 侍」ではコーヒーのいろははもちろん、礼儀をはじめとした社会生活を営む上で大切なことを多く学んだと言います。「お客様へのサービス、礼に重んじる部分を大切にしたい」と春日さん。お客様とのコミュニケーションも欠かしません。

じっくり丁寧にコーヒーを淹れてくれる。至近距離でプロの手元を見られる贅沢な時間

カウンターとベンチのみのコンパクトな店内。だからこそ丁寧なコミュニケーションが可能なのだそう

カウンター奥にはステキなカップ&ソーサーが並んでおり、店内でいただく場合は好きなものをセレクトできる。
まだまだ出しきれていないそう
まずは一番人気という「ゲイシャ」をいただきました。名前だけは聞いたことがありましたが、実際にいただくことができるとは。「ゲシャビレッジ農園」のゲイシャ、ナチュラルは標高1,900m〜2,000mで採れる豆。ストーンフルーツやベリーの果実感あふれる複雑な風味とほのかな酸味とはちみつのような甘みが特徴です。

「ゲイシャ」950円(税込)。華やかな香りと甘さが感じられる贅沢な一杯
持ち帰りもできる「バナナブレッド」とともにいただきました。こちらは春日さんのコーヒー仲間が作っているものを取り寄せているそう。店内でいただく場合はトーストしてバターとともに提供されます。サクッと香ばしく、バナナのやさしい甘さが染み入ります。

「バナナブレッド」500円(税込)とコーヒーとの相性は言わずもがな
2杯目は「カラモ」。「ニグセゲメダ農園」のカラモ、チャルチョ ナチュラルは標高2,200m〜2,400mで採れる豆。エチオピアで開催される品評会で優勝したこともあり高く評価されています。いただいてみると先ほどのゲイシャよりエレガントな印象。複雑でフルーティな果実味と少しスパイシーな表情がありユニークな味わいです。
こうして同じ産地でも地域、生産方法、品種など様々な違いを感じながら飲み比べできるのも楽しみ方のひとつです。

「カラモ」1,000円(税込)。透明感があり上品な味わい

外のベンチ横には「コーヒーノキ」が。この夏は暑かったから実がなる!?かも!?

コーヒーインストラクター1級の資格を持つ春日さん。今年9月に開催されたSCAJ(日本スペシャルティコーヒー協会)
主催の競技会のイベントで見事W1位を獲得した時の賞状も
最後に、夢のある一杯をご紹介。実は、エチオピアのカフェ文化には紅茶とコーヒーを半々で割って飲む「シャイブンナスプリース」という飲み物があると言います。そこから着想を得たのが「ゲイシャトニック」。物販でも販売しているゲイシャ100%の濃縮リキッドコーヒーと自家製の紅茶シロップをトニックウォーターで割ったさわやかなドリンクです。レモングラスティー(青)とケニアのパープルティー(ピンク)、エチオピアのピーチフレーバーの紅茶(黄)の3種のシロップから選べます。
喫茶店と言えば「クリームソーダ」ですよね。それに匹敵するようなドリンクを作れないかと春日さんが考案したのだそう。暑い夏のために考えたそうですが、人気のため、通年のメニューにするかどうか現在考え中だとか。
もともと華やかで果実感があるコーヒーなので、フレーバーティーとの相性も思いのほかバッチリ。先ほどいただいたゲイシャとは全く表情の異なるさわやかな酸味と風味が心地いい一杯です。つい3色コンプリートしたくなってしまいます。

この写真に惹かれ、話を聞いてどうしても飲みたくなってしまった「ゲイシャトニック」。写真は(青)

「ゲイシャトニック(黄)」1,000円(税込)。底に沈む自家製シロップの鮮やかなカラーが目に楽しい

やわらかな物腰の店主、春日さん。コーヒーについて知りたいことがあれば気軽に聞いてみよう

コーヒー豆、ドリップパックやエチオピアコーヒーの花から採れた貴重な生はちみつなど
プレゼントにも重宝しそうな品々が並ぶ
コーヒー豆を買って、自宅で飲む場合に少しでもおいしくいただくための簡単なポイントを教えていただきました。ひとつは新鮮な豆ほど風味がいいため、こまめに、飲み切れる分を都度買う方がいいということ。保存するときは遮光性がある容器に入れること。また、コーヒーを淹れる際には沸騰したお湯を直接注ぐのではなく、何かに一度移し替えるだけで温度が7、8度下がるので、そうして温度を下げてから抽出することが大事とのことでした。もちろんまだまだコツは無限にあると思いますが、このくらいなら自分でもできそうですね。
コーヒーについていくらでもお話ししてくれそうな春日さん。エチオピアのコーヒーはとてもフルーティーで、コーヒーが苦手な人がハマるきっかけにもなるような魅力的なコーヒーがたくさんあるそう。自分好みの一杯を探しに、ぜひ足を運んでみてください。
nano coffeeroaster
住所 東京都台東区浅草橋1-17-4高架下南側
TEL 090-6540-9372
営業時間 月、火、木、金、土曜10:00〜18:00
定休日 水曜、日曜
JR総武線浅草橋駅から徒歩1分
ホームページ https://nanoroaster.handcrafted.jp(外部サイトへ移動します)
インスタグラム https://www.instagram.com/nanocoffeeroaster/(外部サイトへ移動します)