武士の世が終わり、一気に西洋化が進んだ明治。
1888年4月13日、日本人が営む最初の喫茶店、可否茶館はここ上野（当時の上野西黒門町）で開店しました。可否茶館が店を閉めてしまった今も、レトロな内観の老舗、こだわりのコーヒーを提供する純喫茶など、個性豊かなお店が集まる同エリア。喫茶店めぐりをしたくて上野にやって来る、という人も少なくありません。今回は、都会の喧騒を忘れて特別な雰囲気を味わえる上野の喫茶店をご紹介します。

 

 

しばし現実を忘れさせてくれる、高級喫茶 古城の世界

 

まずは、東上野にある高級喫茶 古城。
創業したのは前回の東京オリンピックの前年、1963年で、「大正モダンボーイだった父が始めました」と現店主の松井京子さん。
こちらのお店の特長は、なんといってもその味わい深い内観。
シャンデリアをはじめヨーロッパの城をイメージしたインテリアや、ロシア皇帝の旧城エルミタージュを描いた壁一面のステンドグラスは、ほぼ開店当初のままだそう。
そのステンドグラスのおかげで、店内には奥行があるように感じられ、地下ながら圧迫感のない空間に。映画やTVドラマのロケ地としても使われているそうです。

 

 

ミックスサンドセット1,300円。ブレンドコーヒーは単品490円（いずれも税込）

 

創業時からの人気メニューは、ミックスサンド。それぞれの具材とパンが絶妙なバランスで味を引き立て合う逸品で、マヨネーズは手作りだそうです。
苦味にこだわったブレンドコーヒーや、さらにはアフタヌーンティとも相性がいい。ちなみに、コーヒーカップは女性にはピンク、男性にはブルーで提供され、これも創業時からの伝統です。

 

 

アメ横ダンケは、多くの人で賑わうアメ横の路地裏に潜む

 

続いてご紹介するのが、アメ横ダンケ。こちらの名物のバターブレンドは、焙煎した直後にバターを染み込ませる独自の手法で、1977年に神戸の御影で誕生しました。

 

 

バターブレンドコーヒー550円（税込）。
カップは上皇后美智子様のバラが描かれたロイヤルウェディングの記念デザイン

 

まろやかなコクと柔らかな香りが楽しめ、ミルクを加えなくても口当たりが優しく飲みやすい。
5種類のスペシャルティコーヒーを厳選し、使う豆にもこだわっています。
なお、このコーヒーを飲めるのは関東ではここだけ。店主の楠陽一朗さんは御影本店で修業したのち、この味をもっと広めたいと思い、東京に出店したと言います。

 

 

一つ一つのカップのデザインにも物語が。そんな話を楠さんから教わるのも楽しい

 

アメ横ダンケの店内には、皇室御用達のメーカーが製造した記念カップなど、貴重な器がずらり。好きなカップを選んで、コーヒーを淹れてもらうことができます。
ちなみに、楠さんは元パティシエでもあり、最高級のクリームチーズを使った濃厚なチーズケーキなど、手作りケーキも評判。バターブレンドコーヒーとのマリアージュも魅力です。

 

 

自家焙煎珈琲屋 cafe Lapinの店内。焙煎士でもあるマスターが店頭に立つ

 

最後は、上野広小路駅からほど近いところにあり、焙煎所にカフェを併設する自家焙煎珈琲屋 cafe Lapin。

 

 

自家焙煎珈琲屋 cafe Lapinの焙煎所はガラス張りで、
タイミングが合えば作業風景を覗くこともできます

 

コーヒーは、ブレンドとストレートを合わせた10種以上。
メインは深煎りで、コクと香ばしさを堪能できます。
看板商品のラパン･ブレンドはブラジルとグァテマラがベースで、バランスを見ながら、豆ごとに煎り方を変えているとか。店内で飲む場合は、注文ごとに1杯1杯、マスターの高野勝茂さんがネルを使いハンドドリップで淹れてくれます。

 

 

ラパン･ブレンド500円。自家製のプリン400円は、
お好みで別添えのキャラメールソースをかけて（いずれも税込）

「甘いものを食べたあとのコーヒーは特別おいしい」と高野さん。ケーキもすべて自家製のものを用意しています。
ラインナップは日によって異なるので、何があるかは、お店に行ってみてからのお楽しみ。プリンはとろっとした舌触りで、くちどけがよく、玉子の甘みにホッと癒されます。

どのお店もそれぞれ個性があり、その違いを楽しむのも喫茶店めぐりの醍醐味。
お気に入りの一軒をぜひ見つけて下さい。

 

高級喫茶 古城
住所　東京都台東区東上野3-39-10 光和ビルB1階
TEL　03-3832-5675
営業時間　9：00～20：00（モーニング～11：00、ランチ11：30～14：00）
定休日　日曜、祝日

 

アメ横ダンケ
住所　東京都台東区上野4-1-8 長谷ビル1階
TEL　03-3837-2111
営業時間　10：30～20：00
定休日　無休
http://www.ameyoko-danke.com/（外部サイトへリンクします）

 

自家焙煎珈琲屋 cafe Lapin
住所　東京都台東区上野3-15-7
TEL　03-3832-7605
営業時間　7：00～18：00
定休日　日曜、祝日の他、お盆、正月にそれぞれ約1週間
http://cafe-lapin.shop-pro.jp/（外部サイトへリンクします）