2018.11.05岩倉高校放送部-下町風俗資料館を訪ねる

こんにちは、岩倉高等学校放送部の岸です。部員4名で不忍池畔にある「台東区立下町風俗資料館」に行ってきました。
「台東区立下町風俗資料館」は、庶民の歴史である下町の大切な記憶を次の世代へ伝えるために設立された台東区の施設です。今回は担当の近藤剛司さんにお話しを聞きました。

 

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下町風俗資料館

 

【質問・中川内】
開館されたいきさつについてお教えください

 

【近藤さん】
開館は昭和55年(1980年)10月1日です。丁度昭和40年代から下町の雰囲気が変わり終わろうとした時に、台東区民の方から、このままでは下町の生活というものが失われてしまうという声があがってきました。そこで、下町の暮らしを後世に残す必要があるという事になり、建設構想が生まれ台東区の尽力により台東区の資料館として開館しました。

 

【質問・松本】
下町の今と昔の特にどの部分を感じてもらいたいですか。

 

【近藤さん】
不思議なことを言うと思うかもしれませんが、不便さを感じてほしいです。よく「昔はよかった」という言葉を聞くのですが、本当に昔の方がよかったの?と思いますね。今では当たり前のことが、当資料館に展示してある品を見たり体験したりして不便さを感じてもらいたいのです。そのことによって、すごくありがたみも増すでしょうし、昔の人が大変だったんだなというような驚きなど大きな発見をすることが出来ると思います。

 

 

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【質問・岸】
展示コーナーに遊び心を感じますが、どのような工夫をされていますか。

 

【近藤さん】
2階に、おもちゃコーナーというのを設けています。1階にある長屋の一角は子供の遊び場といった雰囲気を作っています。ここでは、いたずらをする子どもが近所の知らない人に怒られて、こういうことはしてはいけないんだなという学びの場としています。子供の遊びをすごく大切にし、それに導かれるように2階に上がっていただき懐かしいおもちゃの展示を見てもらえるとうれしいです。
また、毎月第4土曜日には「こども土曜塾 -昔のあそびとくらし- 」という小学生を対象に昔のおもちゃを作って遊び方を学ぼうというような工作教室もやっております。

 

 

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【質問・中川内】
ここで学んでもらいたいこと、感じてもらいたいことはどんなことでしょうか。

 

【近藤さん】
1階展示室は大正時代をモチーフにしています。たまたま、大正時代には生まれていない小学生が「なんだか懐かしい」と言ったんです。今と比べると格段に不便な生活ですが、そこには日本人の懐かしいなって思うような生活があるという事を感じてほしいです。こんなことを感じてもらえるのかと思うと、とても良かったなと思いますね。

 

【質問・松本】
来場者数の推移はどのようになりますか。また、どのような方の来館が多いですか?

 

【近藤さん】
今は1日200人くらいで、年間6万~7万人程度となっています。開館の翌年には話題を呼んだこともあり、年間10万人も来場されたそうです。その後、徐々に減少しましたが、ここ3~4年くらいは上昇傾向にあり、去年は外国人観光客が多くなり7万7千人ほどの数になりました。その中で不思議とフランス人の方が特に多いです。なぜなのかと思っていたら、フランスの凄く有名なガイドブックの編集者の方が当資料館のことを気に入ってくれて紹介してくださっていたのですね。他には台東区の一部の小学校3年生が、今と昔の暮らしの違いを学ぼうということで来てくださいます。

 

【質問・岸】
来場者の中(特に外国人)で、ここが楽しんでもらえると言えるところはありますか。

 

【近藤さん】
感じ方は人によって様々ですが、強いて言うなら1階の大正時代の長屋の雰囲気など、パッと見た時に凄いと言ってくれる人が多いです。
また、写真撮影は自由なので半纏(はんてん)を着て写真を取れるところは、外国人の方には楽しんでいただけると思いますよ。

 

 

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【質問・中川内】
中高校生に、ここをぜひ見てほしいというところはありますか。

 

【近藤さん】
資料展示物など外観を見るだけでなく、解説を見てほしいですね。例えば、視覚的な印象だけでなく、よく解説を読んで、この品は何年前のものなんだという風に見てもらえれば、展示している理由が具体的に分かり、より楽しく見ることが出来ます。

 

【質問・松本】
この資料館で一番古い品はなんですか。

 

【近藤さん】
今一番展示している中で一番古い物ですと、二階にある指ではじく豆鉄砲と兵隊の的とか鏡とかのようなブリキの小物玩具ですね。
展示しているものは地域の方に寄付していただいたものがほとんどで、実際に使っていたものなので、実は「それってほんとに価値あるの?」というものなのですけど、むしろそういったものに価値があると考え展示しています

 

【質問・岸】
変わった質問かもしれませんが、開館した当初からの常連さんといった方はいますか。

 

【近藤さん】
常連さんは把握をしてはおりませんが、現在年間パスを持っている方が30人ほどいます。
ある日「昔、私銭湯で働いていたの」というおばあさんがきて、展示品である銭湯の番台にひょいっと乗ってそこで居眠りしてしまたんですよ。生活の一部としての記憶がよみがえったそうで、喜んで帰られましたね。

 

 

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【質問・中川内】
近藤さんが思う下町の良さとは何ですか。

 

【近藤さん】
何と言っても、人とのつながりですね。年を重ねてお風呂が好きになって上野周辺の銭湯に行った時のことです。近くの神社のお祭りの前日で大混雑の中、よそ者は私だけだと思うくらいみんな話しているんですよ。また、「あれの準備終わったの?」て言ったら「あの人が知っているよ」ていって名前を呼ぶと、多くの人がすぐ来るんですね。私の住んでいるところにも銭湯があるんですけど、このような光景は見たことがありません。こういった光景は、すごく強力な町のつながりを感じます。下町の良さはそこではないでしょうか。

 

 

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[まとめ]東京下町は、昭和30年代後半には東京オリンピックを契機とする再開発が積極的に進められ、すっかり様変わりしました。 便利さを取り入れた代わりに、古い時代の大切なものが忘れられようとしていました。そういった中、庶民の歴史である下町の大切な記憶を次の世代へ伝えるための資料館設立の構想が生まれました。これを実現するために台東区内外からたくさんの貴重な資料が寄贈され、この資料館ができました。開館から40年近くの月日が経つ資料館ですが、多くの人たちが長い年月をかけた願いはしっかり引き継がれています。

 

[感想]
【岸】
教科書や図鑑などには載っていない下町の生活様式や素晴らしさ、面白さ、さらに知恵や工夫を学ぶことができました。様々な資料や体験を通して、具体的な時間を持つことができました。特に印象に残ったのは、小学生向けの工作教室の内容や、銭湯の番台の名前の由来です。

 

【中川内】
2階のおもちゃコーナーはとても興味深い場所でした。見たことがないものがあったということもありますが、このような変遷から時代が作られていったという部分が特に印象に残りました。継続している文化と大きく変化してしまった文化を対比して感じることができる資料館は、ぜひ多くの人に訪れてもらいたい場所でした。

 

【松本】
「不便さを感じてほしい」 何より近藤さんのこの言葉が印象に残っています。洗濯やご飯を炊くなど一つ一つが手作業で、今がどれほど恵まれている環境なのかを実感しました。物のありがたさという点で、電化されてただ楽になるのはいいことなのかと思うきっかけになりました。あらためて、家事の手伝いをしていきたいと思いました。

 

【山家】
どこか懐かしいという雰囲気にあふれている資料館です。展示されているものが区民の方々の寄付と知り驚いたと同時に、区民の方々の下町を残したいという想いをとても感じました。「多くの人につながる懐かしさ」を大切にしており、変化の激しい世の中で、ここだけは時間が止まったような空間です。多くの人がここに集まってくれたらいいなと思います。

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