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2016.02.05Special Interview「上野のれん会、山と街と共に」③

[第3回:輝く文化が集まる街・上野]


●上野のれん会会長 須賀 光一さん ●聞き手 佐藤 輝光(松坂屋上野店)

 

上野と共に歩み、その変遷を見つめてきた、上野のれん会。自然、そして山と街と歴史が織り成す上野の多面的な魅力について、上野のれん会会長・須賀光一さんに伺いました。

 

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■一つ一つが輝いている

 

須賀:上野というのは、山の存在が大きな特色になっています。街に対して山の面積が2/3を占めていて、航空地図で見ても山の方がはるかに大きい。そこに明治維新から森鴎外などの著名人が集まってきた、そういう魅力のある場所なんですね。山があり、不忍池があり、冬には渡り鳥が渡ってくるというように、上野を俯瞰して見ると、自然と、それと隣接した街とが一体化しています。山の文化を満喫して、街に降りて来ると、昔ながらの老舗があって下町のテイストもある。非常に多面的で魅力的な場所です。

 

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不忍池と水鳥

 

 

佐藤:上野に来る方の年齢層も幅広いですね。


須賀:上野動物園は内容からすれば、やっぱり日本一の動物園で、小さい子がたくさん来る。数から言えば、集客数がいちばん多いと思います。国立科学博物館は中学生くらいからで、科学の好きな人にとっては非常に楽しい場所。東京国立博物館は、国宝や仏像などは素晴らしいものを所蔵していて、大人にとって見ごたえ十分。西洋美術館もあって、それぞれ一流の文化を内包した施設が揃っており、その一つ一つが輝いています。数年前に東京国立博物館と国立科学博物館、西洋美術館、東京都美術館、上野の森美術館といった文化施設ものれん会に入っていただきました。民間団体に国の施設が入るというのは、珍しいケースだと思いますが、一緒に手を組んで知恵を出し合っていかないと上野の本当の繁栄にはつながりません。文化施設にもそういう思いを持っている方がいらして、「一緒に協力しあいましょう。」と言っていただいた。とてもありがたいことで、今後も取組みを継続していきたい、と思います。

 


■山の有り難み

 

佐藤:こうして取材でいろいろな方にお会いすると、皆さん、山と街で循環して人が流れるようなわかりやすい導線をつくるような工夫が必要だろうとおっしゃるんですね。もちろん今でも、街の集客にとって、山や公園の有り難みは絶大ですが。

 

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「得々クーホ?ン」企画_2015秋上野ミューシ?アムウィーク

 

 

須賀:山や公園のない上野、というのは考えられませんね。先日、松坂屋さんでチラシと500円以上のレシートを持ってきた先着100名の方に美術館のチケット2枚進呈するというイベント企画をやりましたが、さすが松坂屋さんで、100人以上の方が並びました。こういうイベントを通じて山の集客につなげていくのは、街にとってもいいことだと思います。そして逆のパターン、山から街へ降りてくる数の方が圧倒的に多く、その導線の確保は課題です。山から下りてくると、どこからが街なのか、わからないという人が多いですね。山下の交番のあたりでイベントやっていると、「上野の街はどこですか?」と訊かれます。「公園口の横道を下りていけばと上野の街です。」といっても、「ここ、行き止まりじゃないんですか?」って言われちゃう(笑)。一体としての環境づくり、まずはとにかく、街へ降りてもらう努力をしないといけません。

 

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文化施設も加盟

 

 

佐藤:桜の時期以外にも、たくさんの人が街へ降りてきているので、僕らは、もっと山の有り難みをリアルに感じて、山と街が一緒になって、この街を良くするようにしていかないといけないと思っています。

 

須賀:山や公園による集客力を具体的に測っていないので、店の力で集客していると思いがちですが、とても大きいものです。要するに環境というものが大事なんですね。上野は、この環境があるから、人が集まるんです。徳川からの歴史がある場所ですし、もっともっとそれを活かせるはずです。のれん会にできることは限られているかもしれませんが、一つ一つのことを着実にやっていくことが大切だと思います。(つづく)

 

 

[第1回:上野のれん会誕生とその理念]

[第2回:上野のれん会誕生とその理念]
[第4回:商いとアート]
[第5回/最終回:人々の想い出に刻まれる場所として]

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