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「ピカソとその時代 ベルリン国立ベルクグリューン美術館展」が、国立西洋美術館で10月8日(土)より開幕しました。ベルリン国立ベルクグリューン美術館が所蔵する20世紀美術の名品、97点が来日します。そのうち76点が日本初公開! その内覧会の模様をレポートします。
4章「両大戦間のピカソ──女性のイメージ」展示風景
ベルリン国立ベルクグリューン美術館は、ドイツ生まれの美術商、ハインツ・ベルクグリューン(1914~2007)のコレクションで構成された美術館。ベルクグリューンは、パリで画廊を経営する傍ら、自分の気にいった作品を集め、世界有数の個人コレクションを作り上げていました。このコレクションをドイツ政府とベルリン市の援助によって買い上げられ、ベルリン国立ベルクグリューン美術館となったのです。今回、美術館が改修のため長期休館することが決定したことから、本展が実現しました。この展覧会では、ベルクグリューンが重点的に収集していたピカソ、クレー、マティス、ジャコメッティを中心に、国立美術館所蔵の作品や資料も合わせて展示していきます。
ベルググリューン画廊 展覧会カタログ 国立西洋美術館研究資料センター蔵
見どころは、なんといっても第一級のピカソコレクションが鑑賞できるところ。展覧会の出品作品の約半数がピカソの作品で、日本初公開の作品は35点に及びます。また、展覧会を構成する全7章のうち、3つの章がピカソを紹介する内容となっています。ピカソファン注目の展覧会です。
さっそく展覧会を見ていきましょう。1章「セザンヌ──近代芸術家たちの師」では、ピカソも影響を受けたポール・セザンヌに着目したセクション。ピカソや20世紀の画家たちはセザンヌの表現に大きく影響を受けています。
《セザンヌ夫人の肖像》は、画家のジャコメッティがかつて模写していたこともある作品。本展では2つの作品を並べることで、画家同士の個性に着目することができます。セザンヌ夫人の顔立ちは若干面長になっていますね。これは誰でも面長にしてしまうジャコメッティの個性がよくあらわれています。
左/ポール・セザンヌ《セザンヌ夫人の肖像》1885~86年頃 ベルリン国立ベルクグリューン美術館蔵、ベルクグリューン家より寄託 右/アルベルト・ジャコメッティ《左:セザンヌの模写―セザンヌ夫人の肖像、右:レンブラントの模写ー窓辺で描く自画像》1956年 国立西洋美術館蔵(皆川清彦氏より寄贈)
続く2章から4章まではピカソにスポットを当てた章。2章「ピカソとブラック──新しい造形言語の創造」では、青の時代に描いた《ジャウメ・サバルテスの肖像》や、バラ色の時代の《座るアルルカン》など、ピカソのその当時の特徴がよくわかる作品を提示し、キュビスムに向かうピカソを追っていきます。
2章「ピカソとブラック──新しい造形言語の創造」 展示風景
3章「両大戦間のピカソ― 古典主義とその破壊」では、第一次世界大戦末期から1920年代初頭にかけて古典主義に回帰していったピカソについて注目します。画風が常に変化するピカソの素描もまた、注目です。
3章「両大戦間のピカソ― 古典主義とその破壊」展示風景
4章「両大戦間のピカソ──女性のイメージ」では、1936年作《緑色のマニキュアをつけたドラ・マール》、1939年作《黄色のセーター》、1942年作《大きな横たわる裸婦》など、2つの世界大戦の間で激しく変遷を重ねたピカソの女性像について着目していきます。画風は大きく変化するのに、どの作品を見ても「ピカソの絵」だとわかるのがおもしろいですね。
4章「両大戦間のピカソ──女性のイメージ」展示風景
そして展覧会の後半は、クレーやマティスの作品を紹介していきます。5章「クレーの宇宙」では、ベルクグリューン美術館が所蔵する約70点のパウル・クレーの作品のうち34点を展示。クレーもまた作品ごとにタッチやモチーフを大きく変える画家。ピカソからも大きく影響を受けているといいます。
5章「クレーの宇宙」展示風景
左/パウル・クレー《植物と窓のある静物》1927年 ベルリン国立ベルクグリューン美術館蔵、ベルクグリューン家より寄託 右/パウル・クレー《ネクロポリス》1929年 ベルリン国立ベルクグリューン美術館蔵
左/パウル・クレー《暗い扉のある部屋の透視図法》1921年 ベルリン国立ベルクグリューン美術館蔵 右/パウル・クレー《夢の都市》1921年 ベルリン国立ベルクグリューン美術館蔵
また、ベルクグリューンはマティスのコレクションも非常に重要視していました。6章「マティス──安息と活力」では躍動感や生命力に満ち溢れたマティスの作品を見ていきます。デッサンや油絵、晩年の切り絵など、彼もまたさまざまな作風で見る人を魅了していきます。
6章「マティス──安息と活力」展示風景
左/アンリ・マティス《レースの襟の絵馬》1915年 国立西洋美術館蔵 右/アンリ・マティス《家に住まう沈黙》1947年 ベルリン国立ベルクグリューン美術館蔵
左/アンリ・マティス《雑誌『ヴェルヴ』第4巻13号の表紙図案》1943年 ベルリン国立ベルクグリューン美術館蔵、ベルクグリューン家より寄託 中央/アンリ・マティス《植物的要素》1947年 ベルリン国立ベルクグリューン美術館蔵 右/アンリ・マティス《ドラゴン》1943-44年 ベルリン国立ベルクグリューン美術館蔵、ベルクグリューン家より寄託
最終章となる7章「空間の中の人物像 ―― 第二次大戦後のピカソ、マティス、ジャコメッティ」では、第二次世界大戦後に評価を確立したピカソとマティス、そしてこの時代に円熟期を迎えることとなったジャコメッティの作品が並びます。ベルクグリューンが直接交流を持った3人の作品が一堂に会する空間で、彼がどのようなものを美しいと感じ、集めようと思ったのかに思いを馳せることができるでしょう。
左/アンリ・マティス《ロンドン、テートギャラリーの展覧会(1953年)のためのポスター図案》1952年 ベルリン国立ベルクグリューン美術館蔵 右/アンリ・マティス《縄跳びをする青い裸婦》1952年 ベルリン国立ベルクグリューン美術館蔵
そして、今回も展覧会を見終わったら、ミュージアムショップへ行ってみましょう。オリジナルグッズが勢揃い。クリアファイルや絵はがきなどに加えて、柄が選べるトートバッグや絵柄にあわせて切り抜きできる「カタヌキバウム」などが手に入ります。
「展覧会オリジナルトートバッグ」全4種/各1,650円(税込)
「カタヌキバウム」756円(税込)
ベルクグリューンの審美眼で選びぬかれた良作ばかりが並ぶこちらの展覧会は、日本初公開の作品ばかり。新しい発見と感動に満ちている必見の展覧会です。芸術の秋にぜひ訪れてみましょう!
ピカソとその時代 ベルリン国立ベルクグリューン美術館展
会期 2022年10月8日(土)~2023年1月22日(日)
開館時間 9:30~17:30(金・土曜日は20:00まで) ※入館は閉館の30分前まで
会場 国立西洋美術館
休館日 月曜、12月30日(金)~2023年1月1日(日)、1月10日(火) ※ただし2023年1月2日(月・休)、1月9日(月・祝)は開館
観覧料(税込) 一般2,100円、高・大学・専門学校生1,500円、小・中学生1,100円
※本展は日時指定制です。詳細は展覧会公式サイトをご確認ください
https://picasso-and-his-time.jp(外部サイトへリンクします)
問い合わせ 050-5541-8600(ハローダイヤル)