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谷中霊園付近を歩いていると出会う、一軒のどっしりとした町家建築。屋号を示す「花重(はなじゅう)」の文字が黒い瓦屋根に映え、パッと目を引きます。明治10年(1877年)築とされる木造2階建ての建物は、歴史のある国登録有形文化財。通りに面して花屋が入っていて、併設のカフェ、花重谷中茶屋はひと休みするのにぴったりです。
花重本店。左側の暖簾の向こうに、カフェへと続くアプローチがのびる
かつてこの一帯は感応寺(現在の天王寺)の境内だったそうで、門前には茶屋町が広がっていました。花重本店は、1870年(明治3年)に生花問屋として創業しています。数年後には、すぐ近くに谷中霊園が開設。かの渋沢栄一も、園内にある徳川慶喜の墓所に供える花を購入するため、花重を訪れていたといいます。
時代に合わせて増改築された建物は、どこを見ても趣きいっぱい。花屋の脇からカフェにつながるアプローチには、元々江戸時代の長屋があり、近年は花屋の作業場になっていました。敷地の奥には、戦前、木造二階建ての住居が建てられ、その後は事務所として使われていたそう。この部分を改修し、2023年7月にオープンしたカフェが花重谷中茶屋です。
敷地の奥にあるガーデンテラス。人だけでなく、植物にとっても居心地のいい空間
注文したメニューができあがるのを待つ間、建物探訪をするのが楽しい。江戸から令和まで、ここにいた人々の息遣いを想像すると、わくわくします。改修に際して、古い柱や梁組を活かしつつ、鉄骨フレームを入れてモダンな要素をミックス。全面ガラス張りにし、2階の一部を吹き抜けにすることで、開放感のある空間に生まれ変わらせました。
2階のテラス席。ここからも、緑あふれる庭を見下ろすことができます
花重谷中茶屋のおすすめは「花重フレンチトースト〜北海道ソフトを添えて〜」。浅草の名店・ペリカンの食パンをバターと卵、牛乳で味付けしています。一晩かけてしっかり染み込ませているので口溶けがよく、それでいてふっくらとした食感、小麦粉の風味など、パンそのものの魅力も。北海道ソフトを乗せて頬張ると、濃厚なミルクの甘みがあふれ、鼻腔をくすぐります。
「花重フレンチトースト〜北海道ソフトを添えて〜」990円(税込)
「花重ホットドッグ」は、パンの焼き加減もちょうどいい。表面がほのかにサクッとし、歯応えのあるソーセージとのバランスが絶妙です。サラダのドレッシングは自家製で、実はこれを楽しみに訪れるファンもいるとか。その時々で旬の素材をふんだんに取り入れ、季節を感じられる味わいに仕上げています。
ソーセージの旨味がほとばしる「花重ホットドッグ」660円(税込)。サラダ付き
ドリンクにもこだわり、「自家製レモネードスカッシュ」のレモネード液には無農薬のレモンを使用。フレッシュな酸味が明るい印象を生み、きび糖の自然な甘みが口当たりをまろやかにします。また、オリジナルブレンドのコーヒーは苦味のある深煎りで、香りが豊か。専用のサーバーでナイトロ(窒素ガス)を加えるアイスコーヒー「ナイトロコーヒー」は、クリーミーな泡立ちが癖になります。
手作りの「自家製レモネードスカッシュ」550円。薄切りのレモンも残さず食べたい
水・木・金曜の夜は、2階がバーに変身。風情のある建物や草花を眺めながら飲むお酒は、きっといつもよりおいしく感じられるはず。
店内に漂う空気は、とても穏やか。150年近い時の流れに思いを馳せ、ゆっくりと過ごしてください。
店内のそこかしこに、色とりどりの草花が飾られています
花重谷中茶屋
住所 東京都台東区谷中7-5-27
営業時間 カフェタイム10:00〜17:00 、バータイム15:00〜20:00(水・木・金のみ)
※最新の営業時間は下記Instagramをご覧ください
定休日 火曜、第4水曜
https://www.instagram.com/hanaju_yanaka_chaya(外部サイトへリンクします)