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2022.07.21特別展「化石ハンター展 ~ゴビ砂漠の恐竜とヒマラヤの超大型獣~」内覧会レポート

2022年は著名な化石ハンター、ロイ・チャップマン・アンドリュースが中央アジアを探検して100年。それを記念した特別展「化石ハンター展 ~ゴビ砂漠の恐竜とヒマラヤの超大型獣~」が国立科学博物館で開催されています。この100年の間に発見された、世界初公開を含む貴重な化石や資料が一堂に会した展覧会の様子をレポートします。

 

 

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アンドリュースはゴビ砂漠で古生物学史上重要な恐竜や哺乳類など、数々の貴重な化石を発見。その多大な功績は後世の化石ハンターに多大な影響を与え、世界の化石ハンターたちが研究を発展させていきました。さらに、第三極圏といわれるヒマラヤ高原で哺乳類の進化・放散したという説も生まれ、近年研究が進んでいます。本展では大きく分けてオレンジのゾーン(第1~4章)はゴビ砂漠を中心に、ブルーのゾーンはチベット高原のゾーン(第5~6章)を中心に展開していきます。

 

第1章「伝説の化石ハンターの誕生」では、冒頭にクジラの大きな全身骨格が展示されています。

 

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上 ツチクジラ 全身骨格(実物) 国立科学博物館蔵/下 イワシクジラ 頭骨(実物) 国立科学博物館蔵

 

アンドリュースは古生物学者に憧れ、ニューヨークの博物館でキャリアをスタートすると初期は鯨類専門家となり、クジラの調査研究のため来日。日本ではツチクジラやイワシクジラなどを調査し、日本全国を横断しました。国立科学博物館の前身である帝室博物館も訪れ、日本のクジラ研究にも貢献しました。

 

その他、アンドリュースがゴビ砂漠を探検するきっかけとなった恩師オズボーンとの交流についても触れ、ゴビ砂漠への大規模な発掘調査に旅立つまでを紹介。

 

第2章「アンドリュース、ゴビ砂漠への探検!」では、1922年から1930年にかけて行った計5回の探検調査の成果である化石や全身骨格を展示。1922年の調査終盤に、偶然にも恐竜の化石が露出している赤い岸壁に到達しました。

 

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プロトケラトプス 全身骨格 国立科学博物館蔵
1922年に炎の崖で頭骨が見つかり、アジアにツノのない角竜類がいる初の証拠となった

 

そこが「炎の崖」と名付けられると、翌年以降も引き続き調査が行われ、角のない角竜類のプロトケラトプスや恐竜の卵の化石、獣脚類や鳥脚類など、この地でさまざまな大発見へと繋がりました。

 

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1923年または1925年に、実際に炎の崖で発掘された恐竜の卵(複製) 群馬県立自然史博物館蔵

 

 

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手前/バクトロサウルス 全身骨格 福井県立博物館蔵

背景にあるモノクロの大判写真が「赤い崖」

 

 

第3章「アンドリュースに続け、世界の恐竜ハンター」では、ソ連隊、ポーランド・モンゴル隊、中国・カナダ隊、モンゴル・アメリカ隊や日本の化石ハンターがゴビ砂漠で発見した化石と研究成果を紹介。ゴビ砂漠を代表するタルボサウルスの頭骨やシノルニトイデスの産状骨格、さらには日本・モンゴル隊が発見したネメグトマイアの全身骨格も。

 

 

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ソ連隊が1946~1949年に発見した頭骨と骨格。
頭骨 タルボサウルス 国立科学博物館蔵/全身骨格 タラルルス 福井県立恐竜博物館蔵

 

 

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モンゴル・アメリカ隊が1988年に発見したシノルニトイデスの産状骨格 福井県立恐竜博物館蔵

 

第4章「アンドリュースが追い求めた哺乳類の起源」では、中央アジア探検隊が発見した数々の哺乳類を紹介。

 

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パラケラテリウム 全身骨格 国立科学博物館蔵(常設展示)

 

史上最大の陸生哺乳類パラケラテリウムや史上最大の陸生肉食哺乳類アンドリューサルクスなど、哺乳類のアジア起源説を探究して発見された大小さまざまな標本が並びます。

 

 

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アンドリュースサルクル 頭骨 国立科学博物館蔵
陸上に住む哺乳類としては最大の肉食獣。頭以外の骨の化石はまだ見つかっていない

 

 

第5章「挑戦の地、チベット高原へ」では、5000 万年前から1000万年前までの「中央アジア」の環境変化を解説。大陸の移動と衝突によって隆起したヒマラヤ山脈やチベット高原の成立によってアジアの環境が変化しました。モンスーン気候の成り立ちとそれに伴う生物相の移り変わりを、砂岩や化石、動物の骨格といった標本によって読み解きます。

 

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キロテリウム 全身骨格 美濃加茂市民ミュージアム蔵
草を主食にしていた中型のサイの仲間

 

 

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チベット高原の北にあるタクラマカン砂漠は、かつて浅い海だったのが環境の変化により砂漠化したのが化石や砂岩を通してわかる

 

第6章「第三極圏の超大型獣に迫る」では、世界初公開となるチベットケサイの全身骨格復元標本と生体復元モデルは本展覧会の見もの。この復元モデルは日・米・中の考古学者が共同で監修した力作です。

 

 

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手前・中央/チベットケサイの整体復元モデル 奥/チベットケサイ 全身骨格復元標本 国立科学博物館蔵
前傾した大きなツノは、雪をかきわけて厳しい冬を生きのびるための進化だと考えられている

 

 

このチベットケサイの発見は哺乳類の放散と進化を示す説「アウト・オブ・チベット」へと発展しました。このように寒冷の厳しい氷河時代に適応した大型動物の起源や、チベット高原から放散していったとされる哺乳類の化石と研究成果、ヒマラヤ山岳地帯に現生する動物の剥製標本も紹介されています。

 

 

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ヒマラヤを中心に現存する動物たち。右 バーラル 中央 ヒマラヤタール 左 ターキン(すべて本剥製) 国立科学博物館蔵

 

第7章「次の化石ハンターとなる君へ」では、監修者から次世代の子どもたちへのメッセージをはじめ、研究活動の様子を紹介。展示されているチベットケサイの制作映像もあり、緻密な作業が見て取れます。

 

そして展覧会会場を抜けると、グッズ売り場へ。
かわいらしい、さまざまなアイテムがたくさん並んでいます。人気アニメのPUI PUI モルカーとのコラボも多数展開しています。

 

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「チベットケサイぬいぐるみ」子(左)1,650円、親(右)2,750円(ともに税込)

 

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「化石てぬぐい」全3種 1,650円(税込)

 

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「PUI PUI モルカー クッション」2,750円(税込)

 

好奇心にあふれたアンドリュースとさまざまな化石ハンターたちによる100年の軌跡をぜひ追体験してください。

 

ロイ・チャップマン・アンドリュースの中央アジア探検100周年記念 特別展「化石ハンター展 ~ゴビ砂漠の恐竜とヒマラヤの超大型獣~」
会期 2022年7月16日(土)~10月10日(月・祝) ※会期等は変更になる場合があります
開館時間 9:00~17:00、8月5日(金)~14日(日)18:00まで ※入場は閉館時刻の30分前まで
会場 国立科学博物館
観覧料(税込) 一般・大学生2,000円、小中高生600円
※本展は日時指定予約制。詳細は下記展覧会公式サイトをご確認ください。
https://kaseki.exhn.jp/(外部サイトへリンクします)
問い合わせ 050-5541-8600(ハローダイヤル)

 

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