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2026.05.12【東京都美術館】東京都美術館100周年記念 アンドリュー・ワイエス展 プレス内覧会レポート

東京都美術館(上野公園)でアンドリュー・ワイエス(1917-2009)の17年ぶり、没後では日本初となる回顧展「東京都美術館100周年記念 アンドリュー・ワイエス展」が開幕しました。

 

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本店が開催される2026年は東京都美術館100周年、また、アメリカ合衆国建国250周年という節目の年   

 

ワイエスはアメリカ写実絵画を代表する画家。1974年に日本初の大規模な展覧会が開催されて以来、その静謐な画風は、日本の観客を魅了し続けています。本展では日本初公開の作品を含む約100点の作品を通して、あらためてワイエスの魅力に触れる機会となります。会期は7月5日(日)まで。

 

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アンドリュー・ワイエス展ポスター画像

 

ワイエスは、抽象表現主義やポップアートといった同時代の前衛的潮流から距離を置き、身近な人々や風景を緻密に描き続けました。その作品は、現実の情景の再現描写にとどまらない、画家自身の精神世界を強く反映した表現として知られています。

 

彼の作品には生と死、あるいは自己と他者を隔て、かつ繋ぐ象徴としての「窓」や「扉」といった「境界」を示すモチーフが数多く登場します。ワイエスにとってこれらのモチーフは私的な世界との繋がり、あるいは境目として機能します。

本展は、その境界の表現に着目。5つの章からなる構成で、ワイエスが描いた情景の奥底にある彼自身の精神世界へと迫ります。

 

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展覧会会場入り口。展覧会テーマの「境界」を想起させる

 

第1章は「ワイエスという画家」。ワイエスは少年時代から没するまで、生まれ故郷のペンシルヴェニア州と、夏の家のあるメイン州のふたつの地域だけを描き続けました。彼は抽象表現主義、ネオ・ダダ、ポップ・アートといった当時脚光を浴びた美術動向とは距離を置き、独自の絵画世界を築いてきました。

彼の絵画は私的であると同時に、誰もが抱く感情や記憶と響きあう普遍的なものを感じさせます。私たちが彼の作品に惹かれるのは、彼の描く世界に流れる死生観や世の無常という感覚が、日本人の根底に流れる精神性と共通している部分があるからかもしれません。

 

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《自画像》1945年 テンペラ、パネル 63.5×76.2㎝ ナショナル・アカデミー・オブ・デザイン、ニューヨーク

 

ワイエスの作品の多くは、卵黄で顔料を溶く、中世からルネサンス期に主流だった伝統的な絵画技法、テンペラ画法で描かれています。手間と時間はかかりますが、繊細な細密描写、心に染みるような寂寥感ある彼の表現に適した技法だったといえます。

 

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《洗濯物》1961年 水彩、紙 76.8x55.9㎝ カマー美術館、ジャクソンビル

 

第2章は「光と影」。ワイエスは「光と影」を巧みに用いた画面構成がその特徴のひとつとして挙げられます。しかしそれは、表層的な明暗表現を超えて「生と死」という人間が逃れられない命題と向き合った結果として表れたものでした。彼は「生」と「死」は対立するものではなく、つながっているものとして捉えており、こうした感覚は、日本人にも馴染み深い「世の無常」という哲学とも響き合っています。

 

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会場風景。オルソン・ハウスの長く閉じられていた窓を開けると海からの風が吹き込み、レースのカーテンを翻らせたその瞬間、強く絵心を動かされたという。何枚もの《海からの風》習作が並ぶ

 

第3章は「ニューイングランドの家――オルソン・ハウス」。本展で数多く出展されているのは、メイン州にあるオルソン・ハウスとクリスティーナ・オルソンにまつわる作品群です。1939年、妻のベッツィに紹介されて以来、ワイエスはここに住む姉弟2人をモデルに、そして彼らの住んでいたオルソン・ハウスの内外を主題に、30年間にわたって描き続けました。

先天性の病で脚が不自由ながらも人に頼ることなく、強い自立心を持って誇り高く生きた女性クリスティーナと彼女を支える弟アルヴァロ。この2人に深い敬意を抱きながら、つましく暮らした彼らの生活を描きました。

 

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《クリスティーナ・オルソン》1947年 テンペラ、バネル 83.8×63.5cm マイロン・クニン・コレクション、ミネアポリス

 

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《クリスティーナ・オルソン》習作。習作ではクリスティーナの髪は風に靡いていないことが見て取れる。完成作と並んで展示されているので見比べることができる

 

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会場風景。オルソン・ハウスと描かれた絵画の位置関係が、模型とマップでわかりやすく紹介されている

 

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会場風景。オルソン・ハウスで描かれた作品群。

直接的に人物が描かれずとも、そこに暮らす人の気配や生活の記憶が感じられる

 

第4章は「まなざしのひろがり」。オルソン姉弟の死後、ワイエスはオルソン家を描くことをやめ、身近な風景の中で自分に「カチッ」とスイッチが入る瞬間、描きたくなると思える対象を探して近隣を散策し続けました。

 

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会場風景。人物は不在だが、確かな存在が感じられる数々の作品。見るものの想像がかきたてられる

 

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会場にはワイエスの作品に出てきそうな「窓」や「扉」が設置されていた

 

第5章は「境界あるいは窓」。彼にとって、窓のこちら側と向こう側、氷の上と下といった「境界」は分断を意味するものではありません。その先にある世界へとつながる、連続したものとして捉えていたことを、多くの作品から感じ取ることができます。

 

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《薄氷》1969年 テンペラ、パネル 110.2×121.9㎝ 株式会社三井住友銀行

 

《薄氷》は、氷の下に沈む枯葉は自身が重ねた経験や出会った人々を表し(死を暗示)、氷の上に顔を出す1枚の葉や気泡によって、生と死は単純には分けられず、連続しているということを物語っています。

 

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会場風景。扉の向こうにはワイエスのポートレート。

まるで自分が見つめられているかのような、彼のまっすぐなまなざしにドキッとする

 

最後の展示室では、ワイエスから日本のファンに向けたメッセージも公開しています。アメリカの片隅で過去と現在、自然と人間があいまいに重なり合う「境界」を描き続けた画家の、見応えたっぷりの展示をご堪能ください。

 

展示を堪能したあとは、特設会場でお土産を。実は、世界中で愛されるコミック『PEANUTS』に描かれているスヌーピーは、ワイエスの愛好家だったことをご存知でしたか? このステキなつながりを記念したオリジナルグッズが販売されています。そのほかにも、ここでしか手に入らないさまざまな商品がたくさん。ここではそのごく一部をご紹介します。

 

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スヌーピー(PEANUTS)とワイエスとの限定コラボ商品がずらり。

アパレルからステーショナリーまで幅広くあるのでお気に入りを見つけて ※各商品につき1人3点まで

 

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「SNOOPY トートバッグ」2,750円(税込)。「僕のアンドリュー・ワイエスは最高だよ!」と満足げに眠るスヌーピーがかわいい

 

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「香老舗 松栄堂オリジナル お香」1,500円(税込)。

松栄堂が本展のために特別に調香した限定品。火を灯すとの花やベリーの瑞々しい香りが広がる

 

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これから暑くなるに向けて活躍間違いなしの「ペットボトルカバー」(全2種) 1,100円(税込)

 

本展は東京都美術館100周年記念事業の一環です。新緑が美しい上野公園の散策とともに、100周年を祝う特別なひとときを東京都美術館でお楽しみください。

 

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東京都美術館は2026年5月1日で開館100周年を迎える。

色とりどりの花がエントランスを彩るアニバーサリー・ガーデン(5月6日まで)

 

 

会期     開催中~7月5日(日)

会場     東京都美術館
住所         東京都台東区上野公園8-36
開室時間   9:30~17:30、金曜日は20:00まで(入室は閉室の30分前まで)
休室日    月曜、5月7日(木)※5月4日(月・祝)、6月29日(月)は開室
通常券料金(税込) 一般 2,300円、大学生・専門学校生 1,300円、65歳以上 1,600円、高校生および18歳以下は無料

お問い合わせ   050-5541-8600(ハローダイヤル)
展覧会公式サイト https://www.wyeth2026.jp/(外部サイトへ移動します)

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