• TOP
  • 記事一覧
  • 【国立西洋美術館】「チュルリョーニス展 内なる星図」「北斎 冨嶽三十六景 井内コレクションより」内覧会レポート

2026.04.03【国立西洋美術館】「チュルリョーニス展 内なる星図」「北斎 冨嶽三十六景 井内コレクションより」内覧会レポート

芸術家・チュルリョーニスは、1875年に北ヨーロッパのリトアニアで生まれました。2000年以降、ヨーロッパ各地で展覧会が催され、再評価が高まっています。現在、国立西洋美術館で開催中の「チュルリョーニス展 内なる星図」では、絵画を中心に、リトアニアの国立M. K. チュルリョーニス美術館(カウナス)が所蔵する約80点を展示。芸術を制作することで人間の内面世界や宇宙の神秘を追求し続けた、チュルリョーニスの世界に触れてみましょう。

 

画像

日本では34年ぶりとなる大回顧展。2025年に生誕150周年を迎え、祖国リトアニアは祝賀ムードに包まれた

 

画像

上野公園にある国立西洋美術館で開催中。周囲を緑に包まれ、ほがらかな空気が満ちている

 

教会のオルガン奏者をしていた父のもと、幼少期を過ごしたチュルリョーニス。やがてワルシャワ音楽学院で作曲を学ぶようになり、卒業後は音楽家として活動しながら絵画にも惹かれ、ワルシャワ美術学校で絵も学びました。若くして亡くなったチュルリョーニスが、35年という短い生涯で画業に費やすことができたのはわずか6年ほどでしたが、作品数はなんと300点以上。本展では、展示室に彼の手掛けた音楽が流れ、目と耳でその世界を体感できます。

 

画像

チュルリョーニスは、自然の風景を題材にしながら、そこに叙情的な気分や象徴的な意味を吹き込んだ

 

バルト海の東岸に位置し、沿岸に風光明媚な景色が広がるリトアニア。森林や湖がたくさんあることから「森と湖の国」と呼ばれることもしばしば。面積は北海道よりも少し小さく、日本と同じように四季があります。チュルリョーニスがどんな気持ちで筆を動かしていたのか、穏やかな画風からその時の気持ちが伝わってくるようです。

 

画像

春にまつわる作品群。すみずみまでじっくり観ていくと、自然の再生のプロセスが読み取れる

 

画像

《春》(作家:ミカロユス・コンスタンティナス・チュルリョーニス/制作年:1907年/国立M. K. チュルリョーニス美術館(カウナス)所蔵 M. K. Čiurlionis National Museum of Art, Kaunas, Lithuania.)。半分溶けた雪の様子や繊細な色使いから、冬の空気に春の陽気が混ざってきているのが伝わってくるよう

 

祖国の豊かな自然は、チュルリョーニスにとって創作の源でした。《春》《冬》などの連作では、自然の動的な移ろい、循環のプロセスがテーマになっています。本展では、春に関連する作品も印象的。雪解けが始まった大地に日差しが柔らかく降り注ぐ「春」は、観る側の心をふと和ませてくれます。

 

画像

四楽章からなる《第3ソナタ(蛇のソナタ》。左から《アレグロ》《アンダンテ》《スケルツォ》《フィナーレ》(作家:ミカロユス・コンスタンティナス・チュルリョーニス/制作年:1908年/国立M. K. チュルリョーニス美術館(カウナス)所蔵 M. K. Čiurlionis National Museum of Art, Kaunas, Lithuania.)

 

音楽形式を取り入れ、音楽と絵画の融合を試みた作品も大きな見どころ。「ソナタ」「フーガ」など、音楽用語をタイトルに冠した連作が並び、展示室に流れる音楽と合わさって観る側の感覚を刺激します。

《第3ソナタ(蛇のソナタ》には、リトアニアの神話や民俗信仰において神聖視されている蛇が登場。三枚の絵で構成された《第5ソナタ(海のソナタ)》は、表情の異なる3つの海が描かれています。


画像 

《第5ソナタ(海のソナタ)》。左から《アレグロ》《アンダンテ》《フィナーレ》(作家:ミカロユス・コンスタンティナス・チュルリョーニス/制作年:1908年/国立M. K. チュルリョーニス美術館(カウナス)所蔵 M. K. Čiurlionis National Museum of Art, Kaunas, Lithuania.)

 

画像

《ピアノのための交響詩「海」の楽譜草稿》(作家:ミカロユス・コンスタンティナス・チュルリョーニス/制作年:1903年/国立M. K. チュルリョーニス美術館(カウナス)所蔵 M. K. Čiurlionis National Museum of Art, Kaunas, Lithuania.)

 

ちなみに、同時代のヨーロッパで活躍した多くの画家たちがそうだったように、チュルリョーニスも日本の浮世絵に関心を持っていたとか。《第5ソナタ(海のソナタ)》のうち「フィナーレ」のモチーフと構図は、江戸時代の絵師・葛飾北斎の影響だと言われています。確かに、激しくうねりを上げる白波と大波に揉まれる帆船は、北斎の《冨嶽三十六景》にある「神奈川沖浪裏」を思わせます。そういった共通点に触れると、異国の文化がぐっと身近に感じられるはず。

 

画像

左から《ライガルダスⅠ[三連画「ライガルダス」より]》《ライガルダスⅡ[三連画「ライガルダス」より]》《ライガルダスⅢ[三連画「ライガルダス」より]》(作家:ミカロユス・コンスタンティナス・チュルリョーニス/制作年:1907年/国立M. K. チュルリョーニス美術館(カウナス)所蔵 M. K. Čiurlionis National Museum of Art, Kaunas, Lithuania.)

 

民話や民謡、民芸など、民族文化に着想を得ることも多かったチュルリョーニス。三連画《ライガルダス》は、故郷であるドルスキニンカイ近くの谷間の風景です。伝承によると、この谷には美しい町がありましたが、栄えてにぎやかになると人々は高慢になり、怒った神は地中深くに町を沈めてしまいました。今でも静かな夜に、かつての住民たちの叫び声が聞こえるのだとか。

 

画像

《祭壇》(作家:ミカロユス・コンスタンティナス・チュルリョーニス/制作年:1909年/国立M. K. チュルリョーニス美術館(カウナス)所蔵 M. K. Čiurlionis National Museum of Art, Kaunas, Lithuania.)

 

画像

日本初公開の《レックス(王)》(作家:ミカロユス・コンスタンティナス・チュルリョーニス/制作年:1909年/国立M. K. チュルリョーニス美術館(カウナス)所蔵 M. K. Čiurlionis National Museum of Art, Kaunas, Lithuania.)

 

《祭壇》は、チュルリョーニスの中でひときわモニュメンタルな作品。巨大なピラミッド型の建築とその背後に広がる平面の海がコントラストを成しています。

最もサイズの大きい《レックス(王)》は、多層的なモノクロームの構造が見れば見るほど奥深い。ここでの「王」はただの権力者ではなく宇宙の支配者、世界の普遍的な精神を表しています。

 

画像

同時開催中の展覧会「北斎 冨嶽三十六景 井内コレクションより」。全体に早い時期、版木がフレッシュなうちに摺られたため、描線が細くシャープなのが特徴

 

本展と同時開催されている「北斎 冨嶽三十六景 井内コレクションより」も必見。葛飾北斎の代表作『冨嶽三十六景』シリーズ全46図が一挙に公開されています。もちろん、チュルリョーニスが参考にした「神奈川沖浪裏」も。実際に見比べると、さらに興味が広がります。

 

画像

「ブランドミニキャンパス」990円(税込)は全8種(ランダム販売)

 

画像

《祭壇》をデザインした「クッションカバー」3,080円(税込)

 

併設の特設ショップでは、展覧会にまつわるオリジナルグッズを販売。図録は読み応えがあり、チュルリョーニスついてさらに理解が深まること間違いなしです。

 

すべての作品に物語があり、目の当たりにすると世界にぐっと引き込まれます。ぜひ実際にその目で観て、全身で体感してください。

 

「チュルリョーニス展 内なる星図」「北斎 冨嶽三十六景 井内コレクションより」

会期 開催中~2026年6月14日(日)

会場 国立西洋美術館 企画展示室B2F、B2Fにてそれぞれ展示

住所 東京都台東区上野公園7-7

開室時間 9:30~17:30(金・土曜は20:00まで) ※入室は閉室の30分前まで

休室日 月曜、5月7日(木) ※5月4日(月・祝)は開館

観覧料(税込) 一般 2,200円、大学生 1,300円、高校生 1,000円、中学生以下と障害者手帳をお持ちの方とその付添者1名は無料

お問い合わせ 050-5541-8600(ハローダイヤル)

展覧会公式サイト https://2026ciurlionis.nmwa.go.jp/(外部サイトへ移動します)

  • X
  • facebook