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2025.09.18【東京国立博物館 本館 特別5室】特別展「運慶 祈りの空間―興福寺北円堂」内覧会レポート

境内にいくつもの建物があり、国宝や重要文化財が多い奈良の興福寺。日本に現存する八角円堂で最も美しいと賞賛される北円堂には、本尊の弥勒如来坐像と、無著(むじゃく)菩薩立像、世親(せしん)菩薩立像が安置されています。いずれも鎌倉時代を代表する仏師・運慶による作品。北円堂は通常非公開ですが、東京国立博物館で特別展「運慶 祈りの空間―興福寺北円堂」が開催されている今、直接会えるチャンスです!

 

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上野公園内にある東京国立博物館の本館で開催中

 

弥勒如来坐像が寺外で公開されるのは、なんと約60年ぶり。弥勒如来坐像の修理完成を記念して行われる特別な企画だそうです。正面を見据えるまなざし、身体の厚みは、運慶の作品によく見られる特徴なのだとか。当時60歳前後だった運慶が、6人の息子やベテランの弟子たちを率いて取り組んだプロジェクトでした。

画像国宝7軀が一堂に会したエネルギッシュな空間

 

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本尊の弥勒如来坐像(中央)と、無著菩薩立像(右)、世親菩薩立像

 

展示室に入ると、そこで待ち受けていたのは、弥勒如来坐像を中心にフォーメーションを組んだ国宝7軀。醸し出される空気に触れ、思わず身が引き締まります。弥勒如来坐像、無著・世親菩薩立像をぐるりと取り囲んでいるのは、かつて一緒に安置されていた可能性が高い四天王立像。このように、鎌倉復興当時の北円堂内陣を再現しているのも、今回の見どころの一つと言えます。


画像静かな空気を纏った弥勒如来坐像。横顔からも穏やかさが伝わってくる

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背後に回ると、まるで背中で色々と語っているよう。衣文の流れがリアル

 

センターに鎮座する弥勒如来坐像は、北円堂では光背を背

負っていますが、ここではあえてはずして展示。おかげで正面だけでなく、後ろから、横からじっくり見ることができます。適度にくびれのある腹回り、自然な衣のひだなど、目を引くポイントがたくさん。仏像の後ろ姿を眺められる機会というのも、こういった展示ならでは。

 

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北円堂でも弥勒如来坐像と一緒に安置されている無著菩薩立像(右)と世親菩薩立像

 

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そばに立つと、深い光を宿した玉眼で心を見透かされそう

 

弥勒如来坐像の両脇に佇んでいるのは、無著菩薩立像と世親菩薩立像。この2人は兄弟で、胸の前で包みを持っている年老いた僧が兄の無著、たくましさが感じられる壮年の僧が弟の世親です。玉眼という技法で目には水晶がはめ込まれ、見つめていると吸い込まれるよう。こちらに何かを語りかけてくるような表情をしていて、なんだか目が離せません。

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四天王立像の持国天。左手で戟を構え、右手で拳を作る姿が力強い

 

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四天王立像(増長天)。胸元の鬼面、人面、肩の獣などユニークなモチーフも興味をそそる

 

躍動感あふれる四天王立像も、一説によると運慶一門が手掛けた可能性が高いとか。現在、興福寺では中金堂に安置されていますが、興福寺曼荼羅に描かれた図によると、元々は北円堂に安置されていたとも考えられます。その考察を踏まえ、今回、一堂に集められた7軀の仏像。もしかしたら、鎌倉時代にはこんなふうに並んでいたのかもしれません。

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四天王立像(広目天)。戟を地面に突き立て、腰に手を当ててこちらを見下ろす

 

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四天王立像(多聞天)。右手に戟を持ち、左手で高く宝塔を掲げる

 

四隅に配置された四天王の役割は、本尊の弥勒如来を護ること。それぞれ戟(げき)や宝剣などの武器を持ち、全身に力がみなぎっているようです。表情にも迫力があり、今にも動き出しそうな雰囲気。静かに鎮座している弥勒如来とのコントラストが味わい深い。

展示を隅々まで堪能したら、展覧会特設ショップへ。来館記念に、ぜひ何か手に入れたい。アクリルスタンドやキーホルダー、文房具、お菓子など、バラエティに富んだグッズがずらり。お気に入りの一品を探してみてください。

 

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老舗洋菓子店「アンテノール」とコラボしたオリジナルの「クッキー缶」2,600円(税込)

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アクリルスタンドがあれば、奇跡のフォーメーションを自宅で再現できる。各1,650円(税込)

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東京国立博物館を出たら、上野公園をのんびり散歩してみよう

 


特別展「運慶 祈りの空間―興福寺北円堂」
会期      2025年9月9日(火)~2025年11月30日(日)
会場      東京国立博物館 本館 特別5室(上野公園)
住所      東京都台東区上野公園13-9
開館時間 9:30~17:00 ※毎週金・土曜、および9月14日(日)、10月12日(日)、11月2日(日)、11月23日(日)は20時まで開館
※入館は閉館30分前まで
休館日    9月29日(月)、10月6日(月)、14日(火)、20日(月)、27日(月)、11月4日(火)、10 日(月)、17日(月)、25日(火)
当日券料金(税込) 一般 1,700円、大学生900円、高校生600円
※前売券の販売は終了しています
※中学生以下、障がい者とその介護者1名は無料。入場の際に生徒手帳、障害者手帳等をご提示ください
お問い合わせ 050-5541-8600(ハローダイヤル)
展覧会公式サイト  https://tsumugu.yomiuri.co.jp/unkei2025/events.html(外部サイトへ移動します)

 

 

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