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2025.07.05【笹乃雪】絹ごし豆富発祥の店! 文豪たちに愛された老舗の魅力に迫る

JR鶯谷駅北口から徒歩5分ほどの場所に佇む格子戸が美しいモダンな白い建物。一見、新しくオープンした和食店に見えますが、こちらはなんと創業334年、絹ごし豆富発祥の店として知られる豆富料理専門店「笹乃雪」! 2024年夏にリニューアルオープンしました。
「笹」の家紋が描かれたのれんをくぐると笑顔で出迎えてくれたのは、11代目店主の奥村喜一郎さん。
「江戸時代以降このあたりは高級別荘地で、広い庭つきの大きな日本家屋がたくさん建ち並んでいました。芸妓さんも大勢通うような、お三味線の音が響く街だったんですよ」

 

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笹乃雪のモダンで美しい外観。すぐ隣にはかつて正岡子規が暮らした家「子規庵」がある

 

笹乃雪のはじまりは元禄4年(1691年)。京都で豆富職人をしていた初代・玉屋忠兵衛氏が研究を重ね、濃い豆乳で作った絹ごし豆富を宮様に献上すると、その味をお気に召された宮様が、ともに江戸の寛永寺に行こうと忠兵衛氏に声をかけたそうです。宮様とともに江戸へわたり、良質な湧き水があったここ根岸で、豆富茶屋を始めることに。

かつて根岸は、“呉竹(くれたけ)の里”と呼ばれるほど、竹林が豊富に生えていたそうです。竹林のいい地下水で作った豆富を寛永寺に持って行くと宮様はたいそう喜ばれ、「笹の上に積もりし雪の如き美しさよ」と賞賛されたといいます。これが屋号の「笹乃雪」のルーツです。

奥村さんいわく、かつて別荘地のようだったこの街には夏目漱石や谷崎潤一郎など数多くの文豪たちが訪れ、笹乃雪の豆富を味わったそうです。

 

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2階のテーブル席に通されると、目に飛び込んでくるのは歴史を感じる書道作品や絵画の数々。

窓から光も差し込んで開放的!

 

豆富料理コース(昼夜共に5,000円・税込)をいただきながら笹乃雪の魅力を探っていきましょう。10品の料理で構成されるコースは、最初から最後までまさに豆富づくし! そのメニューの一部をご紹介します。

300年以上前から変わらない「絹ごし豆富」をそのまま味わえるのは、なかなか貴重な体験です。笹乃雪の「絹ごし豆富」は口に入れるとふわっと豆富の香りが広がり、シンプルな中にも深みがあってのどごしもよく、また食べたい! と思えるおいしさでした。

 

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絹ごしの「冷やっこ」。しっかりとした舌ざわりの中に豆富の旨味が口いっぱいに広がる

 

そして笹乃雪の名物メニュー「あんかけ豆富」。鰹出汁のあたたかいあんかけを豆富の上にたっぷりかけ、からしをのせた極上の一品です。一人につき2碗出てくるので不思議だな? と思ったら、創業当時、忠兵衛氏が宮様にこの料理を献上すると、あまりのおいしさにおかわりをされ「これからはふたつ出すように」とおっしゃったのだそう。それをきっかけに2碗一組が習わしになりました。箸で豆富を4つに割り、からしとあんをよく混ぜたものをよく絡めていただきます。どの季節にいただいてもほっとできるやさしい味に、思わず笑みがこぼれます。

 

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おかわりしたくなるのが納得の「あんかけ豆富」

 

そのほかにも、湯葉と野菜の豆乳蒸し「雲水(うんすい)」や湯葉の炊き合わせなど、湯葉を使ったメニューもいくつか登場。豆富以外はそのときの旬の食材を使うので、料理の内容は毎月変わるそうです。蒸し料理も炊き合わせも、和食ならではの繊細で奥深い味わいに感動しました。

 

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あたたかい豆乳スープの中にポロネギなどの野菜、鶏団子、とろとろの湯葉が入った「雲水」。こちらも癒される一杯

 

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「湯葉の炊き合わせ」は、しいたけやいかの出汁を吸った湯葉から旨味がじゅわっと広がる至福の一品

 

こちらのコース料理のいいところは、豆富をさまざまな角度から楽しめるところはもちろんですが、たくさんいただいても高たんぱく、低カロリーなところです。家族や友人と気軽に来られるカジュアルな雰囲気もいいですね。

 

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締めは梅ごはんに冷やし吸いとろとお漬物。とろろごはんにしていただく

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デザートにももちろん豆富が使われているのでお楽しみに!

 

イートインだけでなく、笹乃雪にはお土産用の豆富もあります。
1日あたり3~5本の数量限定販売ではありますが、絹ごし豆富発祥の店で買える「絹ごし豆富」をお土産にすれば、話題になること間違いなし!
パッケージには初代の忠兵衛氏に宮様がかけた、あの名台詞も書かれています。

 

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テイクアウト用「絹ごし豆富」700円(税込)※数量限定

 

笹乃雪には、少しロマンチックな伝説もあります。『忠臣蔵』で知られる赤穂浪士のひとり、磯貝十郎左衛門に笹乃雪の娘のお静が恋をしていたというエピソードです。

“最初の出会いは、お静が雪道で足をとられ滑りそうになったのを十郎左衛門が助けた時。そして、十郎左衛門が俳人の宝井其角に連れられて来店したことで2人は再会します。その後も十郎左衛門はたびたび来店したようですが、もちろん本当の名前も身分も明かすことはありませんでした。”
笹乃雪公式HP( http://www.sasanoyuki.com/)より

 

絹ごし豆富をいただきながら、遠い昔の淡い恋物語に想いを馳せてみるのもいいのではないでしょうか。

最後に、奥村さんに334年もお店が続く秘訣を伺ってみました。
「代々受け継がれている豆富がメイン食材ではありますが、お料理の内容は日々アップデートしています。そのときの旬の食材を使って、お客様に春夏秋冬それぞれの味わいを楽しんでいただけているのがいいのかもしれませんね」

江戸時代からの歴史が息づくこの場所で、豆富料理を心ゆくまで堪能してみてください。


笹乃雪
住所 東京都台東区根岸2-5-12(根岸子規庵隣、台東区立書道博物館斜め前)
営業時間 11:30 ~ 20:30(19:00ラストオーダー)
電話 03-3873-1145 ※要予約
定休日 月曜(月曜が祝祭日の場合翌日)
http://www.sasanoyuki.com/(外部サイトへ移動します)

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