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2022.09.21上野の森美術館「長坂真護展 Still A "BLACK" STAR Supported by なんぼや」内覧会レポート

世界中の電子ゴミが行き着くガーナのスラム街の現状を知り、アートの力で解決を図ろうと試みているアーティスト、長坂真護さんの個展「長坂真護展 Still A "BLACK" STAR Supported by なんぼや」が、9月10日(土)より11月6日(日)まで、上野の森美術館で開催されています。美術館での展覧会は初となる長坂さん本人が解説した内覧会の模様をレポートします。

 

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《Star boy III》2021年

 

長坂真護さんは1984年生まれのアーティスト。2017年の6月にガーナの首都・アクラ近郊にあるスラム街、アグボグブロシーを訪れ、その惨状にショックを受けます。かつては青々とした湿地帯だったアグボグブロシーは、今や先進国の人々が廃棄した電子機器が集まる「世界の電子機器の墓場」と呼ばれる場所。
電子ゴミは化学物質が含まれており、焼却するときに有害物質を含む煙が出るため、きちんと処分しようとすると費用がかかります。そのため、世界中の電子ゴミが貧困率の高いガーナに送られていたのです。ゴミを焼却処分して生計を建てるガーナの人々のなかには、健康を害する若者も多くいました。けれどもその賃金は1日500円程度。

 

長坂さんは「このゴミをアートにして価値を生み出し、その利益でさまざまな問題を解決出来ないか?」と思い至り、現地から持ち帰った廃棄物で作品を制作します。

 

そして、その売上で現地に還元する「サステナブル・キャピタリズム」を提唱。現在も、アート活動を行いつつ、世界からスラム街をなくすために精力的に活動を行っています。
「2030年までに資金を貯めて、ガーナに最先端のリサイクル工場を作りたい。新しい産業と雇用を作り出していきたいです」と長坂さんは語ります。

 

 

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アーティスト・長坂真護さんと《真実の湖II》

 

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展示風景より

 

展覧会は、そんな長坂さんの活動を多角的に捉えたもの。展覧会冒頭では、ガーナと出会う前、世界各地を旅し、路上でアーティスト活動していたころの作品を紹介していきます。

 

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長坂真護 学生時代の作品

 

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《無精卵を被る女》2015年

 

そして、長坂さんは2017年にガーナへ向かいます。《Ghana's son》でコラージュしてあるゲーム機などは、すべてガーナにゴミとして送られてきていたもの。1,500万円という値段がつき、長坂さんのスラム撲滅活動を本格的に始めるきっかけとなった作品です。

 

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《Ghana's son》2018年

 

《Ghana's flag》はガーナの国旗と電子ゴミを組み合わせたもの。ガーナの国旗の赤色は、植民地からの独立によって流された血を、黄色は金に代表される豊富な資源を、緑は豊かな大地を表しているそう。そして、中央の黒い星は反植民地主義のアフリカ開放と独立のシンボルです。長坂さんは「この黒い星が煌くまで絵を描き続けることを決意し、活動を続けています」と語っています。

 

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《Ghana's flag》2020年

 

2021年、スラム一掃プロジェクトによりアグボグブロシーが消滅し、長坂さんが現地に設立したミュージアムや無料の私立学校も取り壊されてしまいました。スラムの消滅は、電子ゴミを焼いていた人たちの失業にも繋がります。そこで、長坂さんは環境を汚染しない農業などの事業を展開すべく、オリーブ栽培を学ぶため小豆島を訪れ、気付きとともに作品づくりへと繋がりました。《向日葵》は小豆島で拾ったシーグラスやプラスチックごみを使用して作られた作品です。

 

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《向日葵》2022年

 

このほかにも、ポップでかわいらしい作品でありながら、私たちの社会について改めて考えさせてくれる作品が数多く展示されています。入場時にもらえる展示品リストについているQRコードにアクセスすると、展示作品のオンライン販売サイトにアクセスできます。「自分の家に置くとしたら、どんな作品がいいかな?」と考えながら展示を見るのも楽しいですよ!

 

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《We are same planet》2021年

 

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《質量保存の法則》2020年

 

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《I'm Princess》2022年

 

併設されているギャラリーでは購入可能な作品が展示され、展覧会を記念した長坂真護さんと自然派コスメブランド「THE BODY SHOP」のコラボレーションアイテムも販売。長坂さんのアートが施された限定パッケージのボディケアアイテムが、展覧会ショップで販売されています。売上の一部はガーナへの支援活動に充足されるそうです。

 

 

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ハンドクリームとボディバター、シャワージェルまたはシャワークリームのセット「ザボディショップキット」5,900円(税込) ※数量限定

 

「アートをきっかけに、いろいろなことを考えてもらいたい」と語る長坂さん。その思いが多くの方に届いてほしいと願うほど、不条理な現実を変えようとする望みが一つひとつの作品に込められています。みなさんも、ぜひ足をお運びください。

 

長坂真護展 Still A "BLACK" STAR Supported by なんぼや
会期 2022年9月10日(土)~11月6日(日)
開館時間 10:00~17:00 ※入館は閉館の30分前まで
会場 上野の森美術館
観覧料(税込) 一般1,400円、高・大学・専門学校生1,000円、小・中学生600円
https://www.mago-exhibit.jp(外部サイトへリンクします)
問い合わせ 050-5541-8600(ハローダイヤル)

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