• TOP
  • 記事一覧
  • 【国立西洋美術館】「オルセー美術館所蔵 印象派―室内をめぐる物語」内覧会レポート

2025.11.08【国立西洋美術館】「オルセー美術館所蔵 印象派―室内をめぐる物語」内覧会レポート

上野の国立西洋美術館で「オルセー美術館所蔵 印象派―室内をめぐる物語」が10月25日(土)よりいよいよ始まりました。今回はその内覧会の様子をレポートします。

「印象派」と聞くと、まず「戸外の光」を捉えた風景画が思い浮かびますが、室内を舞台とする作品も多く存在します。本展では「印象派の殿堂」ともいわれるパリ・オルセー美術館所蔵の傑作約70点を中心に、国内外の重要作品も加えた計約100点により、室内をめぐる印象派の画家たちの関心のありかや表現上の挑戦をたどります。

 

画像
「オルセー美術館所蔵 印象派―室内をめぐる物語」展示風景、国立西洋美術館、2025年
厳かな雰囲気が漂う展覧会の始まり

 

第1章のテーマは「室内の肖像―創作の部屋で/モデルを映し出す部屋で」。
絶えず変化する世界を前に「新しい絵画」を生み出すことを目指した印象派の画家たちは、肖像画のモデルを日常的な環境のうちに捉えることで、描かれた人物の個性のみならず、美的な趣味や社会的な属性までをも表そうと試みました。つまり、この時描かれた室内は「富、階級、職業」などを知る手がかりを与えてくれる空間としての重要な役回りを担ったのです。
そのことを踏まえ、描かれている人物の背景―ファッションや家具、調度品、書斎の本や飾られた絵画などーに注目してみると、その人物の職業上の特性や知的関心、創作上の探究を示す品々などが浮かび上がってきます。

 

画像
エドガー・ドガ《家族の肖像(ベレッリ家)》1858-1869年 オルセー美術館
肖像画の名手たるドガの傑作である本作は日本初公開。旧来の理想的な家族像への挑戦かのような、

緊張感のある家族関係が映し出された作品。迫力ある縦2メートルの大画面はぜひ会場で堪能してほしい

 

画像
エドゥアール・マネ《エミール・ゾラ》1868年 オルセー美術館
自然主義を代表する小説家エミール・ゾラの肖像画。壁にはゾラが称賛したマネの《オランピア》

(オルセー美術館)やベラスケスの絵画の複製画、浮世絵版画などが描かれている

 

画像
クロード・モネ《アパルトマンの一隅》1875年 オルセー美術館
パリ近郊のモネ家の住まいを描いた作品。佇む少年はモネの長男ジャン。光と影、寒色と暖色の

ドラマティックな対比に目を奪われる。肉眼で確かめてほしい

 

第2章のテーマは「日常の情景―気晴らし、夢想、親密さ」。
19世紀には、都市を中心に公的空間と私的空間の境界が明確になり、憩いの場としての室内の重要性が高まっていきます。それに伴い、印象派の画家たちも室内での暮らしや日常の一コマをモティーフとする作品を多く描きました。

 

画像ピエール=オーギュスト・ルノワール《ピアノを弾く少女たち》1892年 オルセー美術館
当時流行の画題であったピアノ演奏をモティーフに、優雅でくつろいだ理想的な家庭像を見事に表現している。

温かな色調でまとめられており、美しい音色が聞こえてくるかのよう

 

画像
フレデリック・コリデー《タペストリーを作るコリデー夫人》1879年 オルセー美術館
針仕事に没頭する画家の母の姿を描いたもの。ありのまま、いつもの仕事にいそしむ様子を捉えている。

何気ない日常のスナップにも、タペストリーや肘掛け椅子の描写などに、中流階級の快適な室内がほの見える

 

画像
エティエンヌ・モロー=ネラトン《読書》1903年 オルセー美術館
19世紀の重要なコレクターとして名を残したネラトンが息子のドミニクを描いたもの。ルイ16世様式の

家具やピアノ、さまざまな色合いの織物など室内の様子が細かく描かれており、

コレクターの私的空間を垣間見ることができる

 

2章の後半は、家の中でも最もプライベートな領域へと足を踏み入れていった19世紀後半の室内表象へと移ります。女性たちが入浴や身づくろいする姿を描いた作品は、伝統的な裸体画のジャンルを思わせる一方で、新たな視覚表現や慣習にとらわれないアプローチを見てとることができます。

 

画像
エドガー・ドガ《背中を拭く女》1888-1892年 国立西洋美術館
鍵穴から覗き見しているかのような感覚にさせる、大胆な構図にハッとさせられる

 

第3章は「室内の外光と自然―取り込まれる風景、植物」。
印象派による室内画は、閉鎖的な屋内空間にはとどまらず、バルコニーやテラス、温室など、屋内と屋外の境界に位置する「あわい」の空間が描かれました。これら半屋外的な空間と、そこから臨む庭や海などの自然が交錯する表現を紹介しています。

 

画像
アルベール・バルトロメ《温室の中で》1881年頃 オルセー美術館
画家の妻プロスペリーはこの作品が描かれてまもなく病に倒れ、亡くなってしまう。悲しみに暮れた画家は

絵画だけでなく、彼女が着ていたこのドレスも終生手放すことはなかったという

 

画像
アルベール・バルトロメ夫人のドレス1880年 オルセー美術館
1880年代初頭の夏の流行を特徴づける水玉と縞模様をあしらった細身のロングドレス。絵画と並んで展示されており、絵と実物を見比べることができるまたとない機会

 

1860年代以降の日本美術の流行により、ジャポニズムの影響を受けた印象派の画家たちによる室内装飾も多く見られ、当時の流行をうかがい知ることができます。

 

画像
「オルセー美術館所蔵 印象派―室内をめぐる物語」展示風景、国立西洋美術館、2025年
日本の浮世絵版画から図柄を借用し、その自然描写を装飾芸術へと落とし込んだ絵画的要素の強いこのシリーズは、

日用食器というよりも飾り皿として室内装飾を担ったと考えられている

 

第4章は「印象派の装飾―室内への新しいまなざし」。
印象派の画家たちは、私邸や自宅の装飾にその手腕を発揮します。彼らは壁面装飾によって室内を自然の光や風景で満たしました。紹介する作品群には、内と外の世界を融合させる新しい眼差しが息づいています。

 

画像
「オルセー美術館所蔵 印象派―室内をめぐる物語」展示風景、国立西洋美術館、2025年
実業家エルネスト・オシュデの依頼で制作されたモネとマネの作品が並んで展示されている。どちらも明るい色調で描かれている

 

画像
「モリゾの応接間兼アトリエの再現模型」ベルト・モリゾが自ら設計した応接間兼アトリエを再現。

室内装飾としての絵画がどのように配置されていたかがわかりやすく展示されている

 

画像
エルネスト・クォスト《バラ》1909-1916年 オルセー美術館
フランス国家の正式な委嘱に基づいた作品で、美術局次官室の応接間を飾るために制作された。

目の前に立つと窓の外に咲き誇るバラを眺めているかのような気分になる

 

画像
「オルセー美術館所蔵 印象派―室内をめぐる物語」展示風景、国立西洋美術館、2025年
クロード・モネが大装飾画プロジェクトのために習作として描いた《睡蓮》などが並ぶ。いつまででも眺めていられる

 

印象派の絵画を思う存分堪能したあとは、この余韻にいつまでも浸るべく、自宅に、誰かに、何か痕跡を持って帰りたい。この想いを満足させるべく、特設ショップですてきなお土産を手に入れてはいかがでしょうか。こちらではほんの一部をご紹介します。

 

画像
パリの老舗「LADURÉE」が贈る限定ボックス「コフレ・フィナンシェ&マドレーヌ」2,970円(税込)。

ルノワール《ピアノを弾く少女たち》を描いたボックスに入ったフィナンシェとマドレーヌの詰め合わせ

 

画像
「アクリルスマホスタンド」2,200円(税込)。置いたらスマホの格が上がりそうなステキなスタンド。

お部屋のインテリアのポイントにも◎

 

画像
「ドレスキーホルダー(くま)」各3,080円(税込)。展覧会に登場する人物たちの衣装をまとったくまのキーホルダー。

バッグのチャームにしたいかわいさ!

 

マネ、ドガ、モネ、ルノワール、セザンヌらをはじめ、オルセー美術館の印象派コレクションがこの規模で来日するのはおよそ10年ぶりだそうです。優れた作品群はため息が出るほどすばらしく、ひとつひとつをじっくり鑑賞しているとあっという間に時が経ってしまいます。しっかりと時間を確保して、お出かけください。

 

オルセー美術館所蔵 印象派―室内をめぐる物語
会期    開催中~2026年2月15日(土)
会場    国立西洋美術館(東京・上野公園)
住所    東京都台東区上野公園7-7
開館時間  9:30~17:30、金、土曜日は20:00まで(入館は閉館の30分前まで)
休館日   月曜、11月4日(火)、11月25日(火)、12月28日(日)〜2026年1月1日(木・祝)、

     1月13日(火)
     ※11月3日(月・祝)、11月24日(月・休)、1月12日(月・祝)、2月9日(月)は開館
通常券料金(税込) 一般 2,300円、大学生1,400円、高校生1,000円 ※12月12日(金)〜12月26日(金)高校生無料観覧日
お問い合わせ     050-5541-8600(ハローダイヤル)
展覧会公式サイト https://www.orsay2025.jp(外部サイトへ移動します)

  • X
  • facebook