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皇室に代々受け継がれてきた美術品類を収蔵する宮内庁三の丸尚蔵館。この三の丸尚蔵館のよりすぐりの名品、優品と東京藝術大学のコレクションを加えた82件の作品が並ぶ展覧会、特別展「日本美術をひも解く―皇室、美の玉手箱」が8月6日(土)より東京藝術大学大学美術館で開催されています。
展示風景より 手前/右隻:狩野永徳、左隻:狩野常信 国宝《唐獅子図屏風》 右隻:桃山時代(16世紀)、 左隻:江戸時代(17世紀) 宮内庁三の丸尚蔵館蔵(8月28日まで展示)
宮内庁三の丸尚蔵館は、国に寄贈された昭和天皇のご遺品を中心に生まれた美術館です。1993年に開館し、現在約9,800点の美術品類を収蔵しています。この展覧会は、三の丸尚蔵館に東京藝術大学のコレクションを合わせて、日本美術の魅力に迫っていくという内容。昨年、三の丸尚蔵館の収蔵品として初めて国宝に指定された5つの作品も公開される注目の展覧会です。
展覧会で最初に目にするのはどの角度から見ても美しい《菊蒔絵螺鈿棚》(通期展示)。宮内省と東京美術学校によって後世に伝えるべく作られたもの。展覧会への期待が高まります。
展示風景 手前/図案:六角紫水、蒔絵:川之邊一朝(かわのべいっちょう)ほか、金具:海野勝珉(うんのしょうみん) 《菊蒔絵螺鈿棚》 明治36年(1903) 宮内庁三の丸尚蔵館蔵(通期展示)
展覧会は序章と4つの章で構成されています。1章「文字からはじまる日本の美」では、平安時代に生み出された仮名文字が発展し、美の概念へ結びつき、展開していく過程をたどります。
展示風景より 手前/藤原佐理(ふじわらのすけまさ) 《恩命帖》 平安時代 天元5年(982) 宮内庁三の丸尚蔵館蔵(9月4日までの展示)
藤原佐理の流麗な文字が美しい《恩命帖》(9月4日までの展示)は、宛名はないものの、とてもへりくだっている表現から佐理が上位者へ宛てたお詫び状だと考えられています。
展示風景より 伝 藤原行成 《粘葉本(でっちょうぼん)和漢朗詠集》 平安時代(11世紀) 宮内庁三の丸尚蔵館蔵(通期展示、場面替えあり)
伝 藤原行成の《粘葉本和漢朗詠集》(通期展示)は、竹製の紙に亀甲や牡丹などの文様が雲母で擦りだされた中国製の紙に『和漢朗詠集』が書き写されたもの。漢字のなかにひらがなが入り混じっているのは、読み取れなくてもなんとなくわかるはず。
続く2章は「人と物語の共演」がテーマで、人々が創り出した数々の物語をもとにした美術作品が並びます。狩野永徳の制作と伝えられている《源氏物語図屏風》(9月4日までの展示)は、左隻は「若紫」、右隻は右上に「常夏」、左上に「蜻蛉(かげろう)」の場面が描かれた屏風。もともとは襖絵だったと考えられています。
展示風景より 奥/伝 狩野永徳 《源氏物語図屏風》 桃山時代(16~17世紀) 宮内庁三の丸尚蔵館蔵(9月4日までの展示)
《伊勢物語図屏風》は、明治から昭和にかけて活躍した近代やまと絵を代表する画家4名による共作。伝統的な画題ですが、近代の画家たちも描いているのですね。古くから続く伝統を継承し、そして発展させていることがわかります。
展示風景より 右隻:高取稚成、前田氏実 《伊勢物語図屏風》 大正5年(1916) 宮内庁三の丸尚蔵館蔵(右隻9月4日までの展示、9月6日より左隻(小堀鞆音、吉川霊華筆)を展示)
山崎朝雲《賀茂競馬置物》(通期展示)は昭和天皇の皇太子時代に結婚を祝う献上品として制作されたもの。細部まで精緻に表現されています。
展示風景より 手前/山崎朝雲 《賀茂競馬置物》 大正13年(1924) 宮内庁三の丸尚蔵館蔵
3章「生き物わくわく」は、桃山時代から昭和にかけての生物をテーマにした作品を揃えています。狩野永徳、狩野常信による国宝《唐獅子図屏風》(8月28日まで展示)や、伊藤若冲 国宝《動植綵絵》(宮内庁三の丸尚蔵館蔵)全30幅のうち10幅(8月30日より展示)などが並ぶ空間は圧巻。360度どこを見ても名作ばかりです。
国宝《唐獅子図屏風》は、右隻を狩野永徳が桃山時代に、左隻を狩野常信が江戸時代に描いた屏風です。その巨大さはもちろんのこと、永徳の迫力あふれる獅子、そしてその獅子よりも若干落ち着きのある常信の獅子の両者の違いも見比べてみると、よりいっそう作品がおもしろく感じられます。
展示風景より 奥/右隻:狩野永徳、左隻:狩野常信 国宝《唐獅子図屏風》 右隻:桃山時代(16世紀)、 左隻:江戸時代(17世紀) 宮内庁三の丸尚蔵館蔵(8月28日まで展示)
そして、酒井抱一の《花鳥十二ヶ月図》(8月28日まで展示)や、葛飾北斎の肉筆画《西瓜図》(8月28日まで展示)、重要文化財である高橋由一《鮭》(東京藝術大学蔵、通期展示)など、人気の作品もズラリ。本当に豪華な空間なので、鑑賞時間は長めに見積もっておきましょう。
展示風景より 酒井抱一 《花鳥十二ヶ月図》 江戸時代 文政6年(1823) 宮内庁三の丸尚蔵館蔵(8月28日までの展示)
左/葛飾北斎 《西瓜図》 江戸時代 天保10年(1839) 宮内庁三の丸尚蔵館蔵(8月28日までの展示) 右/重要文化財 高橋由一《鮭》明治10年(1877)頃 東京藝術大学大学美術館蔵(通期展示)
そして最終章、4章「風景に心を寄せる」は、自然や風景をモチーフにした作品を紹介します。桃山時代の屏風絵から江戸時代の蒔絵、明治、大正、昭和時代の七宝や洋画なども並びバラエティ豊か。日本美術の奥深さを感じ取ることができます。
初代飯塚桃葉 《宇治川蛍蒔絵料紙箱・硯箱》 江戸時代 安永4年(1775) 宮内庁三の丸尚蔵館蔵(8月28日まで展示)
左/高橋由一 《栗子山隧道(くりこやまずいどう)》 明治14年(1881年) 右/五姓田義松(ごせだよしまつ)《ナイアガラ景図》 明治22年(1889年) いずれも宮内庁三の丸尚蔵館蔵(通期展示)
展覧会はこちらで終了。そして、おたのしみの展覧会特設ショップへ!
なんといっても今回は、高橋由一の重要文化財《鮭》のコラボグッズが注目の的。「KIRIMIちゃん.」のアクリルキーホルダーはなんと3種類も用意されています。「KIRIMIちゃん.」のグッズは、この他に「A4ファイル」495円(税込)も用意されています。
「KIRIMIちゃん.アクリルキーホルダー」660円(税込)
そして、鮭ふりかけ! こちらは高橋由一の《鮭》がラベルになったインパクトあふれるグッズです。ギフトにも自分用にもどちらにも活用できそう。
「重要文化財《鮭》特別ラベル 鮭ふりかけ」972円(税込)
この展覧会は、展示替えする作品が非常に多いことも特長のひとつです。目当ての作品をしっかり見られるよう、事前に展覧会公式ホームページにある出品リストなどで展示日程をきちんと抑えたうえで美術館へ赴くことをおすすめします。
特別展「日本美術をひも解く―皇室、美の玉手箱」
会期 2022年8月6日(土)~9月25日(日) ※会期中、作品の展示替えおよび巻替えがあります。
開館時間 10:00~17:00、9月の金・土曜は19:30まで開館 ※入館は各閉館時間の30分前まで
観覧料(税込) 一般2,000円、高・大学生・専門学校生1,200円、中学生以下無料
https://tsumugu.yomiuri.co.jp/tamatebako2022/(外部サイトへリンクします)
問い合わせ 050-5541-8600(ハローダイヤル)