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2022.06.22「国立西洋美術館リニューアルオープン記念 自然と人のダイアローグ」内覧会レポート

リニューアルのため休館していた国立西洋美術館。2022年4月から常設展の展示は再開していましたが、企画展も6月4日(土)から1年半振りに開催されています。9月11日(日)までの会期で行われる注目の「国立西洋美術館リニューアルオープン記念 自然と人のダイアローグ フリードリヒ、モネ、ゴッホからリヒターまで」の内覧会をレポートします。

 

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左 ポール・セザンヌ《ベルヴュの館と鳩小屋》1890~1892年頃 フォルクヴァング美術館蔵/右 ポール・シニャック《サン=トロペの港》1901~1902年 国立西洋美術館蔵

 

開館当初の佇まいに近づける工事のため、約1年半のあいだ休館していた国立西洋美術館。リニューアル初となる企画展は、ドイツはエッセンにあるフォルクヴァング美術館の協力を得て開催され、近代の絵画の変遷を自然と人をテーマにたどるものです。

 

フォルクヴァング美術館は、実業家のカール・エルンスト・オストハウス(1874-1921)の個人コレクションを核とした美術館です。国立西洋美術館も実業家、松方幸次郎(1866-1950)のコレクションが基盤となって生まれた美術館。オストハウスと松方が同時代を生きていたことなど、2つの美術館は共通点も多いのも注目のポイント。

 

 

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左 ウジェーヌ・ブーダン《トルーヴィルの浜》1867年/右 エドゥアール・マネ《嵐の海》1873年 ともに国立西洋美術館蔵

 

第1章は「空を流れる時間」。技術革新が進み、携行できる絵の具が普及した19世紀、画家たちは盛んに戸外に出て、変化する光の姿を捉えようとしていました。展覧会はモネの師匠でもあり、海辺の風景を描き続けたブーダンの作品からはじまり、自然をさまざまな形で捉えようとする画家たちを取り上げていきます。

 

 

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左 マックス・リーバーマン《ラーレンの通学路》1898年 フォルクヴァング美術館蔵/右 エドゥアール・マネ《ブラン氏の肖像》1879年頃 国立西洋美術館蔵

 

ドイツの画家マックス・リーバーマンやマネは、木漏れ日と人々をモチーフに、光のきらめきを描いています。おなじような場所を描いているにもかかわらず、画家ごとに絵に個性が出ているのがおもしろいですね。

 

そして、この章で一番の盛り上がりを見せるのは印象派の巨匠として知られるモネと現在、世界でもっとも人気のある画家のひとり、ゲルハルト・リヒターの共演です。きらめく水面のコントラストが美しいモネの作品と、写真にも見えてしまう青空と雲を描いたリヒターの作品が隣り合った空間は、とても印象的です。

 

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左 クロード・モネ《舟遊び》1887年 国立西洋美術館蔵/右 ゲルハルト・リヒター《雲》1970年 フォルクヴァング美術館蔵

 

第2章は「〈彼方〉への旅」と称し、自分の心象や観念を自然の風景と結びつけた画家たちの作品を紹介していきます。絵画のなかに理想や理念を入れ込もうとする「ロマン主義」の代表的画家として知られるカスパー・ダーヴィト・フリードリヒは、夕日を見つめる後ろ姿の女性像を描き、そしてヨハン・クリスティアン・クラウゼン・ダールは窓とその向こうの神秘的な風景を描き、それぞれ人間の理想を追求することを試みようとしました。

 

 

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左 カスパー・ダーヴィト・フリードリヒ《夕日の前に立つ女性》1818年頃/右 ヨハン・クリスティアン・クラウゼン・ダール《ビルニッツ城の眺め》1823年 ともにフォルクヴァング美術館蔵

 

また、ゴーガンはブルターニュ地方にあるポン=タヴェンやタヒチなど、あえて都会から離れて制作することで、自らの芸術をを追求しようとしました。

 

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左 ポール・ゴーガン《扇を持つ娘》1902年 フォルクヴァング美術館蔵/右 ポール・ゴーガン《海辺に立つブルターニュの少女たち》1889年 国立西洋美術館蔵

 

第3章「光の建築」では、自然のなかに普遍的な秩序や法則、本質的な構造を見出し、絵のなかに取り入れようとした画家たちの作品を紹介していきます。スーラの点描技法に強く影響を受けたベルギーの画家、レイセルベルへは水面と月の光を丹念に点描で描き、フィンランドの国民的画家、ガッレン=カッレラは、静かな湖面にさざなみが立つ場面を装飾的に描いています。

 

点描技法をスーラとともに実践し、後の画家たちに大きな影響を与えたシニャックは、パリや南仏などさまざまな場所の風景を描いています。

 

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左 ポール・シニャック《ポン・デ・ザール橋》1912/1913年 フォルクヴァング美術館蔵/右 ポール・シニャック《サン=トロペの港》1901~1902年 国立西洋美術館蔵

 

そして、最終章となる「天と地のあいだ、循環する時間」では、めぐる季節や生と死など自然のなかにおける「循環」を描いた作品を展示していきます。

 

ゴッホの《刈り入れ(刈り入れをする人のいるサン=ポール病院裏の麦畑)》は、ドイツから初来日。ゴッホの死の12年後にオストハウスが購入、フォルクヴァング美術館の開館を飾った記念碑的な作品です。

 

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左 カミーユ・ピサロ《収穫》1882年 国立西洋美術館蔵/右 フィンセント・ファン・ゴッホ《刈り入れ(刈り入れをする人のいるサン=ポール病院裏の麦畑)》1889年 フォルクヴァング美術館蔵

 

ドニとモネの作品は、どちらも縦に伸びる木々が画面を分断する印象的な作品。ドニの作品が制作されたのは、モネの作品が描かれてからわずか15年後。その当時の芸術のあり方、価値観が大きく変化していたことも伺えますね。

 

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左 モーリス・ドニ《踊る女たち》1905年/右 クロード・モネ《陽を浴びるポプラ並木》1891年 ともに国立西洋美術館蔵

 

そして、展覧会は国立西洋美術館の所蔵するモネの2点、《睡蓮、柳の反映》《睡蓮》を中心にノルデやゴッホの絵画作品、ドイツの写真家、エンネ・ビアマンの写真など、花の作品で締めくくられます。

 

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クロード・モネ 左《睡蓮、柳の反映》右《睡蓮》 いずれも1916年 国立西洋美術館蔵

 

そして、今回もミュージアムショップが充実しています。オリジナルグッズやスヌーピーとのコラボグッズなど満載!

 

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スヌーピーグッズと睡蓮の共演! 「マルチケース」715円、「マスキングテープ」605円(ともに税込)

 

使いやすい一筆箋や、これからの季節に大活躍するミニタオルなどが揃っています。こちらも上野のお土産として活用してみてください。

 

 

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オリジナルの「一筆箋」550円(税込)

 

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「ミニタオル」660円(税込)

 

国立西洋美術館、フォルクヴァング美術館の珠玉の作品を通して、芸術家と自然との関わり方も知ることができる展覧会です。リニューアルしてまもない国立西洋美術館でぜひ鑑賞してみてくださいね。

 

 

国立西洋美術館リニューアルオープン記念 自然と人のダイアローグ フリードリヒ、モネ、ゴッホからリヒターまで

会期 2022年6月4日(土)~9月11日(日)
開館時間  9:30~17:30(金・土曜は20:00まで)
休室日 月曜日、7月19日(火)(ただし、7月18日(月・祝)、8月15日(月)は開館)
会場 国立西洋美術館
観覧料(税込) 一般 2,000円、大学生1,200円、高校生800円
問い合わせ 050-5541-8600(ハローダイヤル)
※本展は日時指定制です。詳細は展覧会公式サイトをご確認ください
https://nature2022.jp(外部サイトへ移動します)

 

 

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