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2023.07.12ドキュメンタリー映画『わたしたちの国立西洋美術館』大墻敦監督インタビュー

文化施設が多く集まる上野のなかでも、国立西洋美術館はル・コルビュジエが設計した建物が世界遺産に認定されている、国際的な注目を集める美術館です。この国立西洋美術館を舞台にしたドキュメンタリー映画『わたしたちの国立西洋美術館』が、7月15日より封切られます。この映画を企画した映画監督、大墻敦(おおがき あつし)さんにお話を伺いました。

 

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映画『わたしたちの国立西洋美術館』より Ⓒ大墻敦

 

上野駅前にある国立西洋美術館は、1959年に開館した西洋美術専門の美術館です。大正から昭和にかけて精力的に印象派の絵画やロダンの彫刻などを集めたコレクター、松方幸次郎の「松方コレクション」が、フランス政府から寄贈返還されたことをきっかけに開館、現在は6000点もの作品を収蔵しています。

 

『わたしたちの国立西洋美術館』は、この国立西洋美術館の舞台裏を丁寧に追ったドキュメンタリー映画です。監督の大墻敦(おおがき あつし)さんは「母親が上野学園大学の卒業生、義父が公園史・造園史の研究者でした。私自身も東京文化会館へコンサートに行きますし、子どもが小さかったころは動物園にも通いました。上野の美術館、博物館も仕事で伺っていました」と、むかしから上野とゆるやかに繋がりがあったそう。そんな大墻さんは2020年の前庭整備のための休館から22年4月のリニューアルオープンまで、なんと1年半撮影を続け、撮影時間はゆうに100時間を超えたそうです。

 

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『わたしたちの国立西洋美術館』大墻敦監督

 


 この映画では、野外展示されていたロダンの彫刻が工事のために「お引越し」する過程や、作品購入の会議で起こった学芸員たちの緊迫したやりとり、作品のコンディションチェック作業など、ふだん私達が見ることができない美術館で働く人たちの姿を丁寧に記録したドキュメンタリー映画です。

 

ドキュメンタリー映画とは、私達がよく観るフィクションの映画とは異なり、現実に起こったことのみを撮影し、再構成したものです。美術館の前庭に配置されているロダンの彫刻が、工事に備え破損しないように、包帯をぐるぐるに巻かれ、台座から外され運ばれていきます。このシーンは、ロダンの作品に慣れ親しんでいる私達にとってはとてもインパクトが強いもの。上野、そして美術館という普段慣れ親しんでいる場所で、見たことがない出来事が起きている、それだけでもとても驚きます。

 

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映画『わたしたちの国立西洋美術館』より Ⓒ大墻敦

 

もともと、大墻さんは美術館のドキュメンタリー映画を撮影したいと考え、取材を受け入れてくれる先を探していたそう。「そんなときに国立西洋美術館の方と話す機会があり、受け入れてくださいました」と大墻さん。けれども、撮影を進めていくうちに、美術館や文化行政がさまざまな問題を抱えていることがわかってきました。

 

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映画『わたしたちの国立西洋美術館』より Ⓒ大墻敦

 

「撮影当初は西洋美術館のリニューアルオープンに向かって華やかで楽しく終わる映画になるのかな、と思っていたのですが、いろいろな人のお話を伺っていると、美術館が抱えている課題や問題を、映画を見ていただいたお客様に理解してもらいたいと考えるようになりました」と大墻さん。映画のなかでは美術館のスタッフだけでなく、大型展覧会の企画に携わったジャーナリストらの証言も加えられ、予算のこと、人員のこと、人々の理解や文化行政にまつわることなど、美術館の現状と問題点をわかりやすく描き出しています。

 

大墻さんはこうも語ります「ただ、いろいろな問題点も紹介していますが、美術館の印象が変わったということではありません。わたしたちが展覧会を楽しく、安全に鑑賞するために、とてもたくさんの人達が関わっていて、大変な労力がかかっているということを改めて実感しました。ですから、美術館運営は大変だと思っていたけれど『やっぱりそうだったんだ』という思いが強いですね」。

 

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映画『わたしたちの国立西洋美術館』より Ⓒ大墻敦

 

『わたしたちの国立西洋美術館』というタイトルの「わたしたち」にも願いがこめられています。「西洋美術館は「国立」の美術館、つまり「わたしたち」の美術館です。国立西洋美術館は、東京都の人たちだったら小さいころに遠足で訪れただろうし、地方にお住まいの方も修学旅行で立ち寄った人も多い。本当に、たくさんの人と関わりが深い美術館です。上野駅からすぐに行ける場所にあり、世界遺産でもある美術館です。美術館というのは、意識はしていないけれど「わたしたち」のものなんですよ。この映画をみて、そのことに改めて気づいてもらえればと思います」と映画に込められた願いを語りました。

 

上野のシンボルのひとつである国立西洋美術館。この映画を通して、あらためてその価値に気づいてみませんか?

 

映画『わたしたちの国立西洋美術館 奇跡のコレクションの舞台裏』

https://www.seibi-movie.com/ (外部サイトにリンクします)
7月15日(土)より シアター・イメージフォーラムほか全国順次ロードショー

 

製作・監督・撮影・録音・編集:大墻敦
録音・照明:折笠慶輔
録音:梶浦竜司
カラーグレーディング:堀井威久麿
音楽:西田幸士郎
演奏:閑喜弦介(クラシックギター)多久潤一朗(アルトフルート)
音楽録音・リレコーディング:深田晃
技術協力:KIN 大石洋平 宮澤廣行
協力:国立西洋美術館
配給宣伝:マジックアワー
2023年/日本 /105分
Ⓒ 大墻敦

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