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2023.06.29東京国立博物館 特別展「古代メキシコ ―マヤ、アステカ、テオティワカン」内覧会レポート

35もの世界遺産のあるメキシコ。そのなかでも独自に花開いた古代文明は特に人気があります。東京国立博物館 平成館で6月16日(金)よりスタートした特別展「古代メキシコ ーマヤ、アステカ、テオティワカン」は、そのなかでも特に人気の3つの文明に焦点を当てた展覧会。見どころをダイジェストで紹介します。

 

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《鷲の戦士像》アステカ文明、1469~86年 テンプロ・マヨール博物館蔵

 

紀元前15世紀からスペインが侵攻してくる16世紀まで、3000年以上にわたりメキシコでは独自の文明が栄えていました。この展覧会は、そのなかでも代表的な「マヤ」「アステカ」「テオティワカン」の3つの文明に焦点を当てたもの。独自の宗教観、自然観を持ち、そこから生み出された古代メキシコの至宝、約140件を見ていくことで、その文明の魅力に迫っていきます。

 

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展示風景より

 

展覧会は4章構成。第一章「古代メキシコへのいざない」では、前1500年頃、メキシコ湾岸部に興ったオルメカ文明の作品を通して、後の文明に通底する考え方、キーワードを紐解いていきます。

 

こちらは泣いている赤ちゃんのような《オルメカ様式の石偶》。人間とジャガーの特徴が併せて表現されている幼児像で、オルメカ文明を象徴する作品の一つです。

 

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《オルメカ様式の石偶》オルメカ文明、前1000~前400年 メキシコ国立人類学博物館蔵

 

力士が相撲を取っているかのように見えるこの像は《球技をする人の土偶》。マヤの王侯貴族は、大きく重たいゴムのボールを、おもに腰を使って打つ球技を行っていました。マヤにおいて、球技は戦争など人身供犠と深く繋がっていたもの。ときには王も球技をしていたそうです。

 

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《球技をする人の土偶》マヤ文明、600~950年 メキシコ国立人類学博物館蔵

 

第二章「テオティワカン 神々の都」ではメキシコ中央高原にある都市遺跡、テオティワカンを取り上げます。テオティワカンとは、古代から話されていたナワトル語で「神々の座所」を意味する言葉。海抜2300mの高地にあり、「死者の大通り」と呼ばれる巨大空間を中心に、ピラミッドや儀礼の場などが整然と立ち並んでいたといいます。

 

《死のディスク石彫》は、地平線に沈んだ夜の太陽を表すものであると考えられています。メキシコ先住民の世界観では、太陽は西にいったん沈んでから(死)、夜明けとともに東から再生するものであると考えられていました。

 

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《死のディスク石彫》テオティワカン文明、300~550年 メキシコ国立人類学博物館蔵

 

チャーミングな《鳥形土器》は、商人の墓からの出土品です。胴体には多くの貝が貼り付けられ、多くの貝製品とともに見つかったことからメキシコ湾との交易を行う貝商人の基地だった可能性があるそう。

 

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《鳥形土器》ティオティワカン文明、250~550年 メキシコ国立人類学博物館蔵

 

そして、《シパクトリ神の頭飾り石像》と《羽毛の蛇神石彫》はともに王権の象徴でした。200年に建造された羽毛の蛇ピラミッドは、これらのような巨大な石彫で覆われていた、メソアメリカで最初の大モニュメントとされています。

 

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左《シパクトリ神の頭飾り石像》テオティワカン文明、200~250年 テオティワカン考古学ゾーン蔵  右《羽毛の蛇神石彫》テオティワカン文明、200~250年 テオティワカン考古学ゾーン蔵

 

第三章「マヤ 都市国家の興亡」は、日本人にも知名度が高いマヤ文明の章です。前1200年頃から後16世紀までメソアメリカ一帯で栄えたマヤ文明は、後1世紀頃には王朝が成立。交易や交流、戦争などを通して大きなネットワーク社会を形成していました。日本初公開となる《赤の女王のマスク》は、マヤ王朝の美術のなかでも傑作と名高いものです。

 

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《赤の女王のマスク》ほか マヤ文明、7世紀後半 アルベルト・ルス・ルイリエ パレンケ遺跡博物館蔵

 

《円筒形土器》はカカオの飲料用に使われ、描かれているのは宮殿における外交儀礼と推察されています。定期的な儀礼や王の即位の際に、他の都市の王や貴族が美しい彩色土器などが贈られたりしたそう。

 

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《円筒形土器》600~850年、マヤ文明 メキシコ国立人類学博物館蔵

 

そして最終章「アステカ テノチティトランの大神殿」は、14世紀から16世紀まで気づかれた文明、アステカを紹介します。首都テノチティトランは、現在のメキシコシティにあたる場所で、7層の大神殿「テンプロ・マヨール」が建てられていました。《鷲の戦士像》は王直属の戦士、「鷲の軍団」の一員、もしくは戦場で英雄的な死を遂げ、鳥に変身した戦士の魂を表した像と言われています。

 

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《鷲の戦士像》アステカ文明、1469~86年 テンプロ・マヨール博物館蔵

 

《エエカトル神像》は、アステカでは風を意味するエエカトル神の像。雨が降る前に風が吹くことからエエカトルが雨の神々の通り道を清めると信じられ、ピラミッドに祀られていました。農耕社会であったため、雨乞いの祈祷やお供え、生贄なども行われ切実だったことがわかります。

 

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《エエカトル神像》1325~1521年 アステカ文明 メキシコ国立人類学博物館蔵

 

この他にも、メキシコの古代文明の展示物は魅力的なものがたくさん。キュートな造形なものも多く、見ていて楽しくなるものばかりです。

 

そして、ショップもまた、オリジナルグッズがいっぱい。アステカ文明の時代に作られた《テクバトル》(儀礼用ナイフ)は、かわいらしいフェルトブローチのセットに大変身!

 

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左右とも《テクバトル》(儀礼用ナイフ)1502~1520年 アステカ文明 テンプロ・マヨール博物館蔵

 

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「フエルトブローチセット」2,200円(税込)

 

この他にも、豆皿やトートバッグ、ショルダーバッグなど展覧会オリジナルグッズが充実しています。

 

子どもたちもワクワクする古代文明の展覧会。これからやってくる夏休みのおでかけにもぴったりです。知られざる古代メキシコの文明を、じっくりと楽しみましょう!

 

特別展「古代メキシコ ―マヤ、アステカ、テオティワカン」
会期 2023年6月16日(金)~9月3日(日)
9:30~17:00
※ただし、毎週土曜日は19:00まで延長、6月30日(金)~7月2日(日)、7月7日(金)~9日(日)は、メキシコウィークのため20:00まで延長
※いずれも入場は閉館30分前まで
会場 東京国立博物館 平成館
休館日 月曜、7月18日(火)※ただし、7月17日(月)、8月14日(月)は開館
料金(税込) 一般2,200円、大学生1,400円、小・中・高校生1000円 
https://mexico2023.exhibit.jp(外部サイトへリンクします)
問い合わせ 050-5541-8600(ハローダイヤル)

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