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2017.10.23第二弾 モノづくりから上野を知る!その3

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台東区産業うんちく
イラストレーター進士 遙さん 作

 

上野の魅力をモノづくりの側面から知るべく、ファッションディレクターとして活躍する黒島美紀子さんと一緒に、台東区のモノづくりに深く精通する方々にお話を伺いに行きました。
第二弾は、実際に上野やその周辺にお店を持ち、活躍されている方を中心に、ご紹介したいと思います。
3回目は、台東デザイナーズビレッジに居を構える、イラストレーター進士 遙(しんじ はるか)さんにお話を伺いに行ってきました。

 

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取材を受ける
イラストレーターの進士 遙さん

 

<黒島さん>こんにちは、進士さん、私は今年の“モノマチ”イベントでここ、台東デザイナーズビレッジを訪れた際に進士さんのイラストを拝見して、すっかりファンになってしまいました。
<進士さん>(笑)そうでしたね。ありがとうございます。

 

<黒島さん>代表作の『ロチャ王国』シリーズとかもそうですが、進士さんのイラストの世界感って単に『可愛い』とかだけではなく、人や動物の生き様とか、酸いも甘いも?み分けた物語が絵の中に包含されている感じがありますよね。私はそこに引き込まれてしまったわけですが。
<進士さん>そうなのです、イラストを描く時もモチーフが決まったあとに、長い下調べを行ってから一つの物語を描くので、イラストを描くのは一瞬なのです。ただ、準備に時間がかかります。
今回は「猫のイラストを描いて」と頼まれたケースがあったのですが、猫みたいな描き尽くされているモチーフを、この私が、というところで、こりゃ単に可愛い猫を書くのを求められてないなー、と。

 

<黒島さん>(笑)
<進士さん>でまずは語呂合わせで『猫』と『コロシアム』で『ネコロシアム』になり、そこから猫の世界でのプロレス開催のストーリーになりました。

 

<黒島さん>猫の社会のドンが、プロレス興業を開催していて、大きなイベントが開かれる。そういう闘いの興業に反対する「反社会行動撲滅団体」が、プラカード持って抗議デモする。でも、「マタタビウォーター」の広告も入り、興業的には成功している・・・
人間の社会の光と影の縮図みたいですよね、この作品、深いです!
<進士さん>そうですね。イギリスに行って最初の一年間ロチェスター(下町ではないです)に住んでいました。その時は、ロンドンの学校ではなく、となりの州(ケント州)の学校でした。下町は大学卒業後、大学院に行っている間、BARKINGという所に2年間住んでいました。移民が多い町でした。もともと造船業で栄えた街なのですが、私が留学していた時は廃れかけていて、暗い印象でした。日本以上に格差社会ですし、上流階級の人とは会う機会すらない。
でもそういう人の営みとか欲望を街や風景や歴史から想像して掘り起こす。そして、そのプロセスを絵にするのが、私は好きです。
今回のネコロシアムも全く知らなかったプロレスという世界をどんどん掘り下げて行ったら、ボリビアの民族衣装をきてプロレスをする女性のみの「CHOLITA」という団体にいき着いたり、調べているとどんどん拡がりました。

 

<黒島さん>(イラストを見ながら)本当だ、ここに描いてある!へえ・・・

 

 

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ネコロシアム
イラストレーター進士 遙さん 作

 

<進士さん>ビクトリア時代のロンドンイラストレイテッドという新聞をよく参考にしていたのですが、それこそ写真がまだ使えなかった時代なので、イラストが多く入っているのです。下世話なネタや対立構造、みたいな風刺もイラストになっていて。様々な人間模様をイラストにするという部分に特に惹かれました。
なので、私の作品も、イラストを描いている。というよりコンテンツをイラストで表現している感じです。

 

<黒島さん>なるほど。進士さんの作品は一瞬でわかる『絵』でもあるけれど、『読み物』としての価値も非常に高いのは、そういう過程があったからなのですね。
ところで、ロンドンの下町にお住まいだった進士さん、日本に戻られてもここ上野を拠点として選ばれていますね。
<進士さん>そうですね、アトリエはここ台東デザイナーズビレッジですし、住まいもずっと日暮里とか三河島とか月島とか。下町ばかりです。
下町のこの混沌とした“街”の風景が好きなのですね。今もチャリ通(自転車通勤)をしていますが、隅田川を渡って同じ下町でもどんどん風景が変わる。御徒町とかは駅を挟んで、全く様相が違うし、ちょっとおしゃれになってきた清澄白河とかマンションが立ち並び始めて住む人が変わってきた中央区、とか。
私はやっぱり、そういう風に“街”から人の営みを想像するのが大好きです。なので、田舎より断然街ですね。

 

<黒島さん>そういう進士さんからみた上野ってどんな街ですか?
<進士さん>ロンドンから帰ってきて日本にはあまり知り合いも居なかった状態から、ここに拠点を構えるようになって、ありがたいことにどんどんネットワークが広がりました。上野の街は私にとってはもはや『地元』です。友人とかに夜誘われても、「あ、今日はごめん、地元の飲み会があるから」みたいな断りをいれたり・・・
地元ってどこよ?と突っ込まれると、それがこの上野エリアって感じなのです(笑)。

 

<黒島さん>みなさん異口同音でおっしゃるのですが、やっぱり受け入れる広い心のある街なのですね~、街も人も、上野エリアは!
<進士さん>ですね。

 

<黒島さん>絵に描くと、どんな感じですか?上野エリアは?
<進士さん>それはですね、やはり過去まで掘り下げてこのエリアのイメージを広げると、ちょっと暗いというか、うら寂しいけれど希望のある絵、みたいのを描きそうです。

 

<黒島さん>面白い!
<進士さん>集団就職で上京した子が毎日大変だけれども、下町のコの字居酒屋ではげましあいながら明日への希望を確信する・・・

 

 

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コの字居酒屋 イラストレーター進士 遙さん 作

 

<黒島さん>昭和だ!(笑)
<進士さん>そういうノスタルジーを喚起するような温かさがあるのが上野エリアなのですよ!

 

【編集後記】
これからはどういう風にお仕事を広げていかれたいですか?との質問に少し間をおきながら、「私の仕事は研究者と一緒で、好きなことをずっと探求し続けていくことなのです」と語られた進士さん。その求道者のような真摯な心とキッチュで風刺的なイラストが絶妙なマッチングで人の心を捉える。ぜひみなさん彼女の絵を色々なところで見つけてくださいね。
進士 遙にお願いして描いていただいたパンダのラフ画!
今回は、こちらのイラストを開業ノベルティに使わせていただきました↓

 

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上野が、すき。の依頼で描いた親子パンダのラフ画
イラストレーター進士 遙さん 作
 

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