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[第1回:国立西洋美術館、世界遺産登録決定の瞬間]
●国立西洋美術館世界遺産登録たいとう推進協議会 会長 石山 和幸さん ●聞き手 佐藤 輝光(松坂屋上野店)
2016年7月17日(日)、国立西洋美術館が世界遺産に決まりました。登録に至るまで、実は長く地道な推進活動を続けてきた孤軍奮闘の努力がありました。世界遺産達成の立役者ともいえる国立西洋美術館世界遺産登録たいとう推進協議会の石山和幸さんにお話を伺いました。
■燃え尽きて
佐藤:世界遺産登録決定の瞬間、石山会長は現地にいらしたそうですが、改めて今のご心境はいかがですか。
石山:イスタンブールの国際会議の場に政府要人として出席していましたが、世界遺産一覧表に記載されることが決まった瞬間、飛び上がるほど嬉しかったです。でも、その一瞬が過ぎてしまうと、自分がこれまで12年間、一生懸命に取り組んできた苦労がようやく報われたという思いでいっぱいになり、“ああ、これで決まったんだ、終わったんだ”と、力が抜けてしまいました。テレビや新聞などに取り上げられて、取材もたくさん受けましたし、スカイプで日本にいる台東区の服部区長をはじめとする関係者の方々が喜んでいましたが、それを見ていても、どこか他人事のような感じで、自分は心から騒ぐことができず、誰かと口をきくのさえ、億劫という感じでした。
決定の瞬間 第40回イスタンフール委員会
国立西洋美術館の世界遺産登録に向けて、これまでありとあらゆることをやってきましたからね。いろいろな想いが駆け巡って、これで終わって、すべてやり切った。頭の中が真っ白になって、何をやっていいのかわからない、そんな感じです。“終わった”という虚脱感で、もうイスタンブールから日本へ帰る気力もありませんでした(笑)。
(つづく)
[解説]
2016年7月17日(日)17時14分(現地時間同日11時14分)、トルコのイスタンブールで開かれた第40回ユネスコ世界遺産委員会において、日本の国立西洋美術館を含む「ル・コルビュジエの建築作品?近代建築運動への顕著な貢献」(7ヶ国17施設※写真はその一部:フランス・ドイツ・日本・ベルギー・スイス・アルゼンチン・インドの共同推薦)の審議が行われ、世界遺産登録に記載されることが決定されました。
世界遺産とは
人類が、その歴史の中で大切に受け継いできた自然や文化?その人類共通の宝を世界の人々と共有し、未来へつないでいくため、1972年の第17回ユネスコ総会において採択された世界遺産条約(正式名称:世界の文化遺産及び自然資産の保護に関する条約)に基づいて登録された文化財や自然環境を「世界遺産」といいます。世界遺産には、記念物や建造物、遺跡、文化的景観などの普遍的価値を有するものを対象とした「文化遺産」、地形や地質、生態系、絶滅の恐れがある動植物の生息・生育地などを対象とした「自然遺産」、そして文化遺産と自然遺産の両方の価値を備えた「複合遺産」の3種類があり、有形の不動産を対象としています。世界遺産条約の締約国は191カ国(2015年12月現在)あり、1031件の世界遺産(文化遺産802件/自然資産197件/複合遺産32件)が登録されています。
世界遺産登録までの流れ
●世界遺産条約締約国の推薦
国内の世界遺産候補物件リスト(暫定リスト)を作成、その中から条件の整ったものをユネスコ世界遺産委員会に推薦
●専門機関による現地調査
文化遺産候補については、国際記念物遺跡会議(ICOMOS)、自然遺産候補については、国際自然保護連合(IUCN)が現地調査を行い、ユネスコ世界遺産センターに報告
●世界遺産委員会(原則年1回)
ICOMOS・IUCNの報告書をもとに、条約締約国の代表で構成される世界遺産委員会が世界遺産リストへの登録の可否を決議。
●世界遺産登録決定
〔参考〕
※公益社団法人日本ユネスコ協会連盟Webサイト
http://www.unesco.or.jp/isan/about/