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2023.03.31国立西洋美術館「憧憬の地 ブルターニュ ―モネ、ゴーガン、黒田清輝らが見た異郷」内覧会レポート

国立西洋美術館で3月18日より「憧憬の地 ブルターニュ ―モネ、ゴーガン、黒田清輝らが見た異郷」がスタートしました。芸術家たちが「憧れの地」だったフランスはブルターニュ地方に着目した展覧会です。国内の美術館を中心とした関連作品160点余りを、さまざまな切り口で展観する本展の内覧会を取材してきました。

 

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展示風景より

 

ブルターニュ地方は、フランスの北西部に位置する大西洋に突き出た半島の地方。フランス王国に併合される前は、ブルターニュ公国という独立した国家だったこの土地にはケルト人たちが多く暮らし、独自の文化と言語が伝えられてきました。それゆえ、ロマン主義が勃興した19世紀以降、数多くの画家たちがこの地にテーマを求め、訪れるようになりました。

 

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ブルターニュの場所を解説する会場の展示パネル

 

この展覧会では、そんなブルターニュ地方にまつわる作品を展示。画家たちが、そしてブルターニュの外に暮らす人々がブルターニュという地にどのような感情を持ち、そしてどのような表現をしていったのかを丁寧にたどっていくものです。

 

物語は4章構成。第1章「見出されたブルターニュ:異郷への旅」では、19世紀後半から20世紀前半にかけて、ブルターニュの地がどのように扱われてきたのかを追っていきます。ミュシャの作品をはじめ、主にパリで制作されたポスターなどを見ると、当時の都市で暮らしていた人たちは、ブルターニュを「かわいらしい民族衣装を来た女性たちのいる地方」という、エキゾチックなイメージを持っていたことがわかります。

 

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アルフォンス・ミュシャ  左 《岸壁のエリカの花》 右 《砂丘のあざみ》1902年 OGATAコレクション(緒方寿行氏コレクション)

 

ブルターニュは豊かな自然があることでも知られています。モネら印象派の画家たちは荒々しいブルターニュの海や、崖の絵などを描き出しました。

 

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クロード・モネ 左 《嵐のベリール》1886年 オルセー美術館蔵 右 《ポール=ドモワの洞窟》1886年 茨城県近代美術館蔵

 

第2章「風土にはぐくまれる感性:ゴーガン、ポン=タヴェン派と土地の精神」では、ブルターニュ地方で、自分たちの個性を開花させたゴーガンやポン=タヴェン派の作品を紹介していきます。
パリでの貧困生活から逃れるためにブルターニュ地方のポン=タヴェンにやってきたゴーガンは、この土地の素朴な生活や、人々の厚い信仰心などに興味を持ち、やがて絵画のモチーフにするようになりました。

 

会場には、ゴーガンがブルターニュ地方を描いた作品が年代順に並べられています。訪れたばかりの印象派の影響を受けていた1886年から、独自の画風を確立していた晩年に訪れた1894年まで、その変化は一目でわかるほどはっきり。ぜひ、会場で見比べてください。

 

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展示風景より。ゴーガンがブルターニュ地方を訪れた初期のころの作品群

 

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展示風景より。年月を経て独自の画風を確立したゴーガン
左 ポール・ゴーガン《画家スレヴィンスキーの肖像》1891年 国立西洋美術館蔵(松方コレクション) 右 ポール・ゴーガン《ブルターニュの農婦たち》1894年 オルセー美術館蔵

 

また、エミール・ベルナールやポール・セリュジエら、ゴーガンに強い影響を受けたポン=タヴェン派の作品も必見。多くの画家たちが、ブルターニュ地方に強く惹かれていたことがわかります。

 

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左 ポール・セリュジエ 《森の中の焚火》1889-90年頃 岐阜県美術館蔵 右 エミール・ベルナール 《ポン=タヴェンの市場》1888年 岐阜県美術館蔵

 

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ポール・セリュジエ 左 《急流のそばの幻影、または妖精たちのランデヴー》1897年 岐阜県美術館蔵 右 《森の中の4人のブルターニュの少女》1892年 国立西洋美術館蔵

 

第3章の「土地に根を下ろす:ブルターニュを見つめ続けた画家たち」は、保養地として注目されていたブルターニュに別荘を構え、「第二の故郷」とした画家たちに注目します。画家たちはさまざまな描き方で、ブルターニュの自然を描きました。

 

アンリ・リヴィエールは日本に強い影響を受け、独学で木版画技術を習得した画家。独特の色彩でブルターニュを描写しています。

 

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アンリ・リヴィエール 左《サン=ブリアックの三つの標識、夕暮れ》1890年 右 連作「ブルターニュ風景」より:《ロネイ湾(ロギヴィ)》1891年 国立西洋美術館蔵

 

ナビ派の画家として知られるモーリス・ドニは、ブルターニュをギリシャ神話の世界のように捉え、神秘的な印象を与える作品を多く制作しました。

 

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展示風景より モーリス・ドニの作品たち

 

そして、ブルターニュに憧憬の念を持っていたのはフランス人だけではありませんでした。第4章「日本発、パリ経由、ブルターニュ行き:日本出身画家たちのまなざし」では、日本人画家たちが描いたブルターニュ地方の作品を紹介していきます。洋画の黎明期に活躍した黒田清輝から、世界にその名を轟かせていた藤田嗣治まで、フランス人とは異なるブルターニュの捉え方があることに気付かされます。

 

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黒田清輝《ブレハの少女》1891年 石橋財団アーティゾン美術館蔵

 

そして、展覧会が終わったらミュージアムショップへ。ブルターニュ地方といえばおいしい料理とお菓子があるところ。そば粉のクレープ・ガレットや、クイニーアマン(ブルトン語が語源だそう)や、ファーブルトン(ブルターニュ地方の牛乳で煮たお粥という意味)などは日本でもおなじみですね。
そのため、かわいらしいお菓子が並びます。

 

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左 「ラ・トリニテーヌブルターニュマップ缶 厚焼きパレット&薄焼きガレット」2,200円(税込) 右「ラ ポワント デュ ラ アンリオ ガレット缶」2,570円(税込)

 

ガレットに合わせるととてもおいしいシードルも取り揃えられています。

 

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「シードル」各種605円~(税込)

 

画家たちが憧れた地、ブルターニュ。展覧会をひととおり見ると、私達もブルターニュ地方に行ってみたくなるはず。この春必見の展覧会です。

 

憧憬の地 ブルターニュ ―モネ、ゴーガン、黒田清輝らが見た異郷
会期 2023年3月18日(土)~ 6月11日(日)
開館時間  9:30~17:30(金・土曜は20:00まで) ※5月1日(月)~4日(木・祝)は20:00まで開館 ※入館は閉館の30分前まで
休館日 月曜(ただし、5月1日(月)は開館)
会場 国立西洋美術館
観覧料(税込) 一般2,100円、大学生1,500円、高校生1,100円
問い合わせ 050-5541-8600(ハローダイヤル)
※本展は日時指定制です。詳細は展覧会公式サイトをご確認ください
https://bretagne2023.jp/(外部サイトへ移動します)

 

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