2015.07.03SPECIAL INTERVIEW「五條天神社と上野」④

[第4回:五條天神社の神事]
●五條天神社 宮司 始澤 澄江さん ●五條天神社 禰宜 瀬川 真澄さん ●聞き手 佐藤 輝光(松坂屋上野店)

 

医薬祖神の二柱である大己貴命(おおなむちのみこと)と少彦名命(すくなひこなのみこと)を御祭神としてお祀りする、五條天神社。立春を迎えるための大切な行事「うけらの神事」や御神輿が巡行する「大祭」など、五條天神社の神事について宮司の始澤澄江さんと禰宜の瀬川真澄さんにお話を伺いました。

 

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大祭の御神輿の前で

 

■医薬祖神に所縁ある「うけらの神事」

 

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四ツ目の方相氏 

 

佐藤:2月に「うけらの神事」を取材させていただき、とても興味深く拝見しました。

 

瀬川:かつての日本人は春夏秋冬と新しい季節を迎えるに当たり、「節分」という季節の分かれ目を大切にしていました。その中でも「春」を迎えるということは旧暦では新しい年を迎えることになりますので、「冬」と「春」を分ける「節分」は特に大切にされてきました。古くから宮中でも「追儺式(ついなしき)」等の諸行事が行われていたそうです。
当社の神事に登場する「方相氏(ほうぞうし)」もやはりその頃の「追儺式」に登場していたようで、「四ツ目の金目で四方を睨み、熊の皮を蒙り、黒い袍を着、緋の袴を着け・・・」という姿を示した記述が古い書物に残されているようです。「豆」を使うようになったのは室町時代のようです。
神社で行われる神事は、神社で行う「祭祀」と人々が行う「行事」とが結びつくような形も多いと考えられます。もともと集落ごとにお祀りされていた神社は、地域の特性により、田畑を耕していれば田の神、漁業を営んでいれば海の神と自然に畏怖し、神の見えない力を頼りにしてお祀りされていました。祈りや感謝を捧げる際に、集落の人々が集まり祝詞をあげる祭祀だけではなく、神楽を舞ったり謡をしたりと伝統芸能のような事が行われます。
「うけらの神事」では、社殿での「節分祭」で年男や年女として豆まきを奉仕する皆様に玉串をお供えし「謹んでご奉仕いたします。」とお参りいただきます。続いて方相氏が登場します。方相氏は「お祓い」の役目を担いますので、四ツの目で四方を睨み、桃の弓に葦の矢を携え四方を祓うために「四方舞」を舞います。桃も葦も神話に出て来る「祓」の道具です。桃の実は神格化され意富加牟豆美命(おおかむずみのみこと)と神名を与えられています。

 

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蟇目式(悪霊を祀う弓の行事)

 

 

始澤:氏子の町々を四方舞で清めた後に、社殿では「うけら」という薬草を焚きながら「蟇目式」を行います。祓い清める神事が度重なることで鬼たちは居場所がなくなり出現します。鬼は「病鬼」と「悪鬼」で、「病や疫病」と「厄災」の象徴です。蟇目式で使う矢は「鏑矢」で矢先に穴があり穴に風が通ることにより音が出るようになっています。戦国時代には狼煙のように合図の役目を果たしましたが、野山では狐狸を払う役目を果たしました。うけらの神事では皆様がお出でですから矢を放てませんので蟇目の形をとります。神事の名称にもなっている「うけら」ですが屠蘇散にも使われている健胃薬で焚き込めることにより湿気を払い病を防ぎます。

 

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赤鬼、青鬼と方相氏

 

瀬川:神事の当日に限りますが「うけら餅」を授与しています。「うけら」と「餅」が」一組で入っていますので、うけらを焚きながらその煙でお餅を炙って食します。一年間を無病健康で過ごせるお咒(まじない)と伝わります

 

佐藤:私も、おいしくいただきました。

 

始澤:昔は炭がありましたが、今はフライパンの上に銀紙を敷いてうけらを焚きながらお餅を焼くのが一番安全な方法です。

 

■いろいろな五條天神社の神事

 

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大祭の御神輿 町内巡行の様子 

 

佐藤:その他にも、いろいろな神事があるのですか?

 

始澤:各々の神社で定める祭祀を軸に日々祝詞をお上げしていますが、神社庁の規定にもあり特に重んじられるのは、2月の「祈年祭」11月の「新嘗祭」、そして神輿の巡行なども行われ皆様もよくご存じの「大祭」です。当社では「うけらの神事」も其れに並ぶとしています。一般的には、新年の「歳旦祭」や茅の輪くぐりをする「大祓」もご存じでしょうか。去る5月25日は「大祭」でしたので、大祭式の行われる当日祭を前に2日間に渡り「奉納弓道大会」を実施しました。神楽殿では巫女舞や五條太鼓も奉納されました。

 

佐藤:御神輿の御渡は、数年毎と、お聞きしましたが?

 

瀬川:はい、基本的には3年に一度です。神幸祭と申しまして、千貫神輿といわれる大神輿と鳳輦(ほうれん)が神様の御蔵(みくら)として氏子の町を巡行します。昨年がその年でしたので次の巡行は平成29年の予定です。

 

佐藤:次回は是非拝見したいと思います。

 

(つづく)

 

 

 

 

 

 

 

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