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[第5回:東京オリンピックと上野]
●上野観光連盟会長 二木 忠男さん
●上野観光連盟事務総長 茅野 雅弘さん
●聞き手 佐藤 輝光(松坂屋上野店)
2020年に開催される、東京オリンピックは、上野にとっても、その歴史・文化・伝統などを世界中の人々に示す絶好の機会です。東京オリンピックに向けて上野が果たすべき役割、展望などについて、二木会長にお話を伺いました。
※上野観光連盟公式サイトは、こちら
■人のつながりが、上野を動かしていく
二木:そういえば、以前、寛永寺の浦井正明先生はじめ、上野警察署長、上野消防署長とで松坂屋上野店さんの朝礼をやったことがありますよ。
佐藤:え!ホントですか。
寛永寺 浦井長_
二木:それぞれ曜日を割り当てられて、10分間のスピーチをしました。5年くらい前ですかね。浦井先生は、江戸・徳川時代の上野の話で、私がアメ横とジャイアントパンダの話、警察と消防が治安や防火についての話をしました。10時の開店でお客さんが入って来るから、55分に終わらせないといけないんですが、なかなか面白い企画でしたよ。
佐藤:そうでしたか。でも、そういう方たちのつながりがあるというのが、上野のすごいところですね。
上野動物園 土居園長
茅野:そういった話があるとすぐに呼応して、誰かが動き出す。そうやっていろいろな人とつながっていくのが、上野の良さかもしれませんね。
二木:みんな、やりたいことはいっぱいあるんですよ。芸大の宮田亮平学長が不忍池に100万匹のホタルを放したいと、おっしゃったりね。
茅野:上野動物園の土居園長が、“うちの園に設備があるので、ホタルの養殖はできる”とお答えしていました(笑)。
二木:そうやって口に出したほうがいいんです。ああだこうだ、みんなで言いながら、結局、何とかやれる方向に持っていく。とにかく言ってみないと、人は動かない。発信すると、自然とそちらの方向に動き出すんですね。後は、粘りと根性です(笑)。
■オリンピックに向けて
佐藤:2020年の東京オリンピックに向けて、上野としては何か動きがあるのでしょうか。
東京オリンピック施設工事現場
茅野:オリンピックの開催都市というのは、文化事業をするという決まりになっているのですが、東京都は舛添知事が就任したばかりで対応が遅れているんですね。2013年12月に芸大の宮田亮平学長と青柳正規文化庁長官が共同発起人となって上野を「文化の杜」として国際的な文化都市、交流拠点にしようと、上野「文化の杜」新構想推進会議がスタートしたのですが、そのこともあって、話を耳にしていた舛添都知事が、記者の前で思わず、“上野を文化の一大拠点に”と発言し、東京オリンピックに向けた文化政策を強化すると発言されました。それで一気に風向きが変わった。それまで東京都は、桜の花見期間中は、上野公園でのイベントを絶対に許可しなかったのですが、ぜひ文化発信事業をやってほしいということになったのです。そうした経緯があって、4月の3、4,5日に、東京都と上野観光連盟共催による文化発信事業として、外国人観光客に着物の着付け体験や野点(のだて:屋外の茶会)、盆栽の展示など、日本文化を紹介するイベントを開催することになりました。ただ、伝統的な日本文化は紹介できても、日本文化の今については、ポップカルチャーを紹介しないことには全体像を伝えることにはなりません。なので、前の週も場所を提供してほしいと申し出たのですが、今年は1回でお願いしたいということになったので、来年からは秋葉原と組んでポップカルチャーの紹介も含めた2週間構成で日本文化の全体像を伝えるイベントにしたいと考えています。
上野公園満開の桜
二木:2020年までに、こうしたつながりを少しずつ創っていけば、いい形になっていくと思います。オリンピックのマラソンコースも、東京マラソンと違って国際映像ですから、歴史・文化のある場所を走ってほしいですよね。上野の山の横の中央通りを通って、昭和通りを抜けて、浅草・雷門の前を通る。秋葉原は中央通りを通って、外国の方のコスプレやメイドさんが沿道で旗を振る(笑)。日本の伝統文化、秋葉原のポップカルチャー、上野の歴史を伝えたい。恩賜上野公園を見ながら、マラソンを走るというのは、日本の文化を伝える大変意味あることだと思います。オリンピックに向けて国際的に人を呼ぶ、おもてなしをするにしても、受入体制を整えていかないと成立しません。2020年まで、あと5年しかないわけですから、まだまだ課題はありますが、一つ一つ着実に具現化していくことが大切だと思います。
佐藤:本日は、貴重で楽しいお話を、まことにありがとうございました。
(おわり)