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[第4回:上野東京ライン・ネーミング秘話]
●上野観光連盟会長 二木 忠男さん
●上野観光連盟事務総長 茅野 雅弘さん
●聞き手 佐藤 輝光(松坂屋上野店)
上野東京ラインは、名称に“上野”という文字が刻まれたことが、上野の存在感を示す上で大きな意味を持っています。ネーミングに際し、“上野”の文字を入れるために尽力された二木会長に、上野東京ラインの名称決定にまつわる裏話を伺いました。
※上野観光連盟公式サイトは、こちら
北陸新幹線「かがやき」
■“上野”という名称が刻まれたことの意味
佐藤:上野東京ラインという名称ですが、どういう経緯で決まったのですか?
二木:上野東京ラインは、構想6年、工事に6年かかりました。会長に就任して最初に取り組んだのが、このネーミングに“上野”という文字を入れてもらうよう働きかけることでした。名前は末代まで残るし、誰が乗っても、この電車は“上野”へ行くというのがわかりますからね。そういう目印になるものとして、電車の名前に地名が入るかどうかは重要なのです。
最後は決選投票だったらしいです。湘南東京ライン、湘南上野ラインなどいくつか候補があって、トーナメント式でだんだん落ちていった。最後に上野と東京という名称が残って、順列で上野が先になったようです。上野の名前が先頭に来たことは大きい。決定した12月9日にプレス発表がありました。その日、プレス発表の10分前にJRの担当者がこの紙を持って、私のところに、“これに決まりました!10分後に「愛称について」の記者発表をします!”って前もって来てくれて。嬉しかったですよ。名前の順番が逆になっていたら、意味ないですからね。名前というのは、多くの人に知ってもらうために重要なことなのです。最近は、古い町名もどんどん消えています。御徒町という名前は、御徒組の「御徒」ですが、今は駅名だけしか残っていません。そこの住所は「台東区上野」ですからね。そういう中で、新たに上野東京ラインという名前を通じて、上野という地域を多くの人に知ってもらえるのは、とても意味のあることだと思います。
佐藤:ネーミングで、“上野”が先に配置されたのは、どういう理由からでしょう?
会長の手帳に張られたプレスリリース
二木:歴史的な重みや意味合いが大きいと思います。私たちも、上野は東北からの玄関口であるということを強く主張してきたし、名称の順番について、そこはどうしても譲れませんでした。集団就職の歴史があって、その時代を体験した人がたくさんいる。上野が東京の玄関口となって、ここからさまざまな仕事先へ旅立っていった金の卵たちがたくさんいたわけです。昭和29年から20年間ずっと、その金の卵たちを東北から迎え入れていたのが上野です。そういう時代を生きた人たちのノスタルジーやそこに込められた強い想いというのは、大きなものがあると思います。
■上野、鉄道新時代
佐藤:北陸新幹線も、上野に停まりますね。
茅野:北陸新幹線「かがやき」は一日10往復していて、そのうち、一日1往復だけ上野に停まらない列車がありますが、それ以外はすべて停まります。
二木:9往復もしてくれれば、十分(笑)。上野に魅力があれば、降りてきてもらえますから。
茅野:湘南方面については、とにかくダイレクトに行き来できるようになったことが大きいと思います。京浜東北線は一本でダイレクトに横浜まで行けそうですが、途中停まりというのが多い。ダイヤでいうと、上野東京ラインは東京停まりが一本もなくて、東京は完全に通過駅になります。上野駅は、東北線・常磐線・高崎線の始発駅というのは変わらないし、その1/3が東京駅からになりますが、残りの2/3は上野が始発。逆に、東海道線は東京発が一本もなくて、一部は上野発になります。一方、常磐線が品川まで延びて、品川停まりになるものがあります。それで、上野観光連盟では、この上野東京ラインの開業に合わせて、国立博物館・西洋美術館・科学博物館と共同で、3館共通パスポートという形式で共通入場券「UENO WELCOME PASSPORT」を発行します。期間中、各館に各1回入場できるようになっています。
二木:3館共通で1000円。1館あたりの入場料が640円なので、かなりおトクですし、このパスポート自体が記念になりますからね。こうしたことをみんなで考えて、上野に足を運んでもらう工夫をしていく必要があります。そもそも上野には、歴史・文化・伝統があり、動物園や文化施設、商店街もあるわけですから、その財産を活かして“上野に行ってみよう”というきっかけづくりをしていく。他の地域にはないこうした総合力こそ、上野の強みなので、そこをどんどんアピールしていきたいですね。
(つづく)
※写真左から「東京国立博物館」、「国立科学博物館」、「国立西洋美術館」。
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