2014.10.01Special Talk 第4回 上野の桜を守る人々

[第4回:上野の桜を未来へ]
●上野桜守の会
・運営委員長/木村 雄二さん(しゆう株式会社)
・事務局長/佐藤 一也さん(有限会社みはし)
●聞き手
・佐藤 輝光(松坂屋上野店)
上野の財産である桜を後世に伝えるために、さまざまな活動に取り組む、上野桜守の会。最終回を迎える今回は、上野の桜を守り、未来につなぐための試みについて、お二人にお話を伺いました。

 

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小松乙女(上野桜守の会 提供)

 

■後継樹を育てる

 

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小松乙女(上野桜守の会 提供)

 

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朝露桜(公益財団法人日本花の会 提供)

 

佐藤:会では、後継樹育成の活動に取り組んでいて、接ぎ木や芽接ぎを行っています。小松宮彰仁親王像の側にある小松乙女や大噴水の西側にあった朝露桜など、少し傷んでいる桜の後継をつくるのが目的です。
木村:同じ性質の木を子供に継がせようとすると、交配ではできないんです。例えば、赤い花と白い花の交配で種ができると、何ができるかわからない。だから、野生種以外の桜は、接ぎ木、つまりクローンをつくらないと、同じ木になりません。大島桜や江戸彼岸桜を台木として接ぎ木や芽接ぎをし、それが育てば、親とまったく同じ遺伝子になる。つまり、種として存在しているものであれば、一つ一つの遺伝子は違っても、交配でほぼ同じ種類のものできるので、それで品種が保たれるわけです。でも、野生種以外の桜の場合は、まったく同じ桜をつくろうとすると、枝や芽を接ぐしか方法がない。なので、会としては、接ぎ木などの作業を後継樹育成として行っているのです。
佐藤:逆に言えば、親と同じものができないということは、違う性質を持った新しい種類が無限にできるということです。そうやって名前がつけられている桜は300種くらいあります。
木村:交配によってできた桜の中に、たまたまきれいな花があると、それに名前を付けて保存しようということになります。小松宮彰仁親王像の下にある小松乙女は意図して植えられたものではなく、おそらく鳥が種を運んできたんだろうと思いますが、東京都の職員の方が、ちょっと変わった花の桜があるということで、小松乙女と名付けて登録したものです。だから、あれが原木なんですね。その原木を接ぎ木で増やしたものが三宅坂の国立劇場の庭に植えられ、今、立派に育っています。
佐藤:そういえば、7,8年前に松坂屋さんの物産展で展示した桜を上野公園に植えましたよね。
木村:函館の湯の川温泉の物産展を開催された時に、正面玄関に、“おかめ”という桜を鉢植えで3本植えてあったんです。催事が終わった時に、それをいただいて、今、清水観音堂のそばに植わっています(笑)。


?それは、知りませんでした。250年も上野で店をやっているのに、その一種類しか植えていないというのはちょっと寂しいですが(笑)。
佐藤:“おかめ”というのは、豆桜系ですね。枝振りも花も小さくて、かわいい桜です。

 

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オカメ(公益財団法人日本花の会 提供)

 

■上野の桜の未来

 

 

木村:活動をしていて感じるのは、皆さん、本当に桜を見るのが好きですね。それはもう、日本だけではなくて、世界中から来ます。上野の桜は世界的に有名で、中国や韓国からも上野公園の桜をめざしていらっしゃる。みんなニコニコしながら楽しんでいる様子を目のあたりにすると、これこそ、平和ための最高の国際交流だと思います。
佐藤:桜を見るために、朝から海外の人が訪れているんですからね。我々もびっくりするくらいです。
木村:吉野山と比べてどうかはわかりませんが、一カ所でこれだけ人を集めるところはないと思います。駅前というアクセスの良さもありますし。これだけ多くの人に愛されている上野の桜は、宝であり、先祖から受け継いだ大切な財産。会としては、それを後世に残していこうということで、いろいろ活動を行っています。大それたことを考えているわけではありませんが、後世に伝えていくのがいちばん重要な役目。今、会の参加者は、大学生の方もいますが、定年過ぎた方が圧倒的に多い。会の仕事としては、穴を掘るなどの肉体労働もあるので、ぜひ若い人に入ってほしいですね(笑)。


私も若くはないですが、ぜひ参加したいと思います(笑)。大学の時に、自然科学系の研究室にいたこともあり、桜には興味があります。参加したいという方は、まだまだたくさんいると思うので、上野のためになるよう、非力ながら協力していきたいと思っています。本日は、貴重なお話をいろいろとありがとうございました。

 

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ソメイヨシノの下に(上野桜守の会 提供)


(終わり)

 

 

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