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みなさんは、「べっ甲」が何から作られているかご存知ですか?
深い光沢が美しい「べっ甲」は、ウミガメの一種であるタイマイの甲羅を素材として作られています。べっ甲製品は飛鳥時代に伝わり、江戸べっ甲の技術は江戸幕府が開かれた頃に始まったといわれています。
お寺が多く立ち並ぶ谷中の静かな通りに、江戸べっ甲を扱う赤塚ベッ甲製作所はあります。工房を切り盛りするのは二代目の赤塚顕さん。訪ねた日は、壊れたべっ甲眼鏡の修理に向き合っていました。

一見、住宅のように見えるここが工房

かんざしやアクセサリーの販売もしている。
外ではあまり販売してないらしいので買うならここがおすすめ

動物のブローチも。天然の甲羅を組み合わせてここまでの表現ができる
今回は、眼鏡のふちとツル(棒の部分)の修理工程を見学させてもらいました。
天然素材であるべっ甲は、一枚ごとに色も斑の出方も異なります。そのため、つなげた部分が目立たないよう、元の眼鏡に近い色柄を選び、つなげ方まで考えて作業していきます。

壊れた部分を切り取り、新しい材料を使って継ぎ直す

壊れた部分を糸のこで切り取る

眼鏡の形に合わせて、やすりで削っていく。べっ甲細工にしか使わないやすりもあるそう

形を細かく調整していく
ある程度削り終わったら、接合の過程に移ります。べっ甲の接合には接着剤を使わず、水・熱・圧力で素材同士を圧着するというから驚きです。べっ甲自体に膠質が含まれており、それが接着剤の役割をするそうです。

接合は三段階。使用する道具をガスコンロで温めておく。下にあるのは冷ますための水

一回目。熱したコテを水で冷やして適温にし、仮止めする。接合しているのは眼鏡のツルの部分

二回目は箸を使い、熱と圧力を加えて圧着する

最後、濡れた布巾にべっ甲を挟んで、圧着で潰れたべっ甲の厚みを戻す
圧着できたら一度冷まし、再度やすりで形を整え、眼鏡の耳にかかる部分を作っていきます。

熱した鉄板にべっ甲を当て、水を少々。湿ったべっ甲が温められて乾く瞬間が変形しやすくなる

このように、ぐにゃりと曲がる

規格に合うように組み立てて形を正確に合わせる
形を合わせたら、仕上げに研磨し、改めて組み立てたら完成。
圧力をかけすぎれば素材を傷め、弱ければ接合面がきれいにつかない。熱で柔らかくなった状態のまま加工すると形が崩れるため、圧着後はいったん冷まし、成形と微調整を重ねてから磨き上げます。切る、つなぐ、冷ます、削る、磨く。ひとつひとつの工程は単純に見えても、手の感覚で判断する場面が連続します。

房州粉を泥状にしたもので研磨する

バフモーターでツルツルに仕上げる

修理完了
店頭に並ぶべっ甲の艶は、素材がもともと持つ光沢ではなく、職人が磨いて引き出したもの。水分や皮脂に触れることで曇ることがありますが、磨き直せば艶を取り戻せます。使いながら手を入れ、直しながら長く付き合えることも、べっ甲の魅力です。

1841(天保12)年発行『玳瑁亀図説 : 天・地』の復版
赤塚さんが見せてくれた江戸時代の資料には、水桶や作業台、現在とよく似た道具が描かれていました。磨きの方法など一部に変化はあっても、基本の仕事は大きく変わっていないといいます。その一方で、作るものは時代とともに変化してきました。かんざしからネックレス、ブローチへ。変わらない技術が、その時代の暮らしに必要とされる形を生み出しています。

工房では、べっ甲のアクセサリーを作る体験も行っている
現在、べっ甲の仕事はさまざまな課題を抱えています。現在は養殖された素材のほうが天然素材より価格が高くなることもあるそう。製品価格との折り合いがむずかしいうえ、道具と職人不足という問題もあります。材料、道具、分業を支える人、そして買い手との出会い、そのすべてがつながってはじめて技は次の世代へと受け継がれていきます。
赤塚ベッ甲製作所では、現時点で三代目は決まっていないそう。赤塚さん自身も、別の仕事を経験してから家業に入りました。次の世代にも、まず外で働き、社会のルールや人との関わり方を学んだうえで、本人が望むなら考えればよいと話します。技術だけを早く身につければよいのではない。工房の外を知ることも、これからの職人に必要な土台だという言葉が印象に残りました。
赤塚ベッ甲製作所
住所 東京都台東区谷中7-6-7
JR日暮里駅から徒歩10分
TEL 03-3828-7957
営業時間 9:00~18:00
定休日 不定休
アクセサリー制作体験 約2時間/料金・予約等はお電話から











