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「帆船」シリーズ(瀬戸内海集)
明治から昭和にかけて風景画の第一人者として活躍し、深化した木版画の表現を切り開いた吉田博。西洋の写実的な表現と日本の伝統的な木版画を融合させて、新しい木版画の創造を目指しました。本展では、画業後期から晩年にかけて制作された木版画の数々が、一挙に公開されます。
見どころは、自然をこよなく愛した吉田博の眼差しが捉えた風景。日本はもとより世界各国を旅し、生涯にわたり風景を描き続けました。みずみずしい色合いの木版画は早くから海外で紹介され今なお高く評価されています。
「エル・キャピタン」(米国シリーズ)
同時代の著名な画家たちの多くは渡仏した一方で、吉田博は渡米。ここで開いた個展で好評を得て、その後再訪した際に自ら版元となって版画を制作することを決意し、以降世界を股にかけて描いていきました。
「レニヤ山」(米国シリーズ)
淡いグラデーションによって奥行きや立体感を表現するだけでなく、自然の神秘や深山幽谷の静けさや険しさ、自然が織りなす優美な姿を丁寧に描き伝えます。自身が登山家であったことから「山岳画家」とも呼ばれ、実際にその険しい山々を登り訪れないと表現できない風景世界が広がります。
「御来光」(冨士拾景)
版を摺り重ね、色彩を細やかに変化させることにより、風景の印象の変化や精細さを表現しました。木版画は絵師が描いたもの(版下絵)を彫師と摺師が分業で担い完成しますが、この二者の側にいて一切の妥協を許さなかったといいます。
「劔山の朝」(日本アルプス十二題)
例えば「瀬戸内海集 帆船」シリーズでは、同じ版木を使って摺色を替える「別摺」と吉田が呼んだ手法で、朝から夜までの同じ光景を捉えた6作品を発表しました。それぞれの時間帯によって異なる見え方を、丁寧に表現しています。
「帆船」シリーズ(瀬戸内海集)
また、日光東照宮の「陽明門」は96度摺という驚異的な摺数で、精細に表現されています。浮世絵は10度程度の摺数で制作されたということを考えると、吉田博の木版画がいかに緻密な工程を経て制作されたかがわかるでしょう。西洋画をベースにした細やかな絵を再現する彫師と摺師の努力もあって、質の高い数々の作品が生まれました。
歌川広重の『名所江戸百景』の名作「亀戸天神境内」とほぼ同じ構図の「東京拾二題 亀井戸」など、東京を題材にした作品も手がけています。
「陽明門」
「亀井戸」(東京拾二題)
明治時代から多くの美術展が開かれ、吉田博にとっても特別な場所であったであろう上野の風景も見どころです。
「上野公園」(東京拾二題)
展覧会場を抜けるとグッズショップ会場でオリジナルグッズも販売。塗り絵セットやチケットファイル、ノートやポストカードも多数あります。
西洋の写実的な表現と日本の伝統的な版画技法の融合を追求した吉田博。意欲的に海外の名所も訪れ、世界百景の制作を夢見たという彼の、旅の軌跡をぜひ辿ってみてください。
没後70年 吉田博展
会期 2021年1月26日(火)~3月28日(日) ※会期中、一部展示替えがあります
時間 9:30~17:30(入室は閉室の30分前まで)
休館日 月曜
会場 東京都美術館
料金(税込) 一般1,600円、大学・専門学校生1,300円、高校生800円、65歳以上1,000円
※事前予約なしでご覧いただけます。ただし、混雑時は入場制限を行う場合があります。
問い合わせ 03-5777-8600(ハローダイヤル)