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2015.08.31SPECIAL INTERVIEW「日本の玄関口・JR上野駅今昔物語」⑤

[第5回:東北と共に]
●JR上野駅駅長 太田 稔さん ●聞き手 佐藤 輝光(松坂屋上野店)

 

北の玄関口として東北との強い絆を持つ、JR上野駅。東日本大震災後、東北の復興を応援するため、観光をベースにさまざまな取り組みを行っています。観光を切り口とした東北と上野駅のつながりについて、JR上野駅駅長の太田稔さんに伺いました。

 

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太田駅長の活躍が伝わる、数々のスナップ


■東北とのつながり

 

佐藤:よく駅構内で産直市を開催されていますね。なぜか、東北や北陸のものは、上野駅に似合う。心が受け入れているというか、上野だとすごく自然な感じがします。

 

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ふくしまディスティネーションキャンペーン記念植樹(2014年4月)

 

太田 :ほとんど毎週、産直市や観光キャラバンを行っていまして、東北各地、新潟、信州、北陸の皆さんからのご希望が多いですね。私は、ここ10年程、観光関連の仕事が多く、ちょうど東日本大震災の時に、JR東日本の営業部門の観光関連の責任者だったので、あの状況から東北がどうやって立ち直っていくかということについて、やはり観光で応援していこう、立ち直っていこうと考え、デスティネーションキャンペーンを開催し、全国から応援していただきました。デスティネーションキャンペーンは、旅行会社各社に応援いただいて、地元の皆さんと一緒に取り組むもので、実質上、日本で最強の観光キャンペーンです。当時、青森の三村申吾知事に相談し、これを青森県からやっていこうということでスタート、東北6県、新潟も含め7県で順番に行い、この4月に最後の福島県のキャンペーンが予定通り行うことができました。東京に大きな駅はいくつもありますが、これほど力強く観光で地方を応援しているのは、上野駅がいちばんで、こうしたことも駅の役割の一つだと考えています。福島の地元の皆さんからも感謝の言葉をいただいていますが、上野駅としては、恩返しの気持ちが強いんですね。だから、地方が苦しい時は、東京で中心となって復興支援のような取り組みを行って応援していきたいと考えています。

 

■東北の窓を世界に開くために

 

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太田:東日本エリアは、数年前までは日本に14の世界遺産がある中で、日光と白神山地にしかなく、海外から来られた方も、東京で買い物をすると、みんな関西に行ってしまいます。東北エリアに来る海外からの旅行者は、2%くらい。ですから今後は、地域の方たちと共に、まだ知られていない東北エリアを掘り起こしていきたいと思っています。毎日1万人来なくても、毎日30名来てくれれば、1年間で1万人になるし、そういうものが100あれば100倍になります。そういう街づくりをして、鉄道をご利用いただき、世界の皆さんに東北各地を訪れていただく。観光による地域振興は、ずっと力を入れてきたことであり、そこに私どもが生き残る道があると考えています。東海道新幹線は大動脈として首都圏と関西を結んでおり、8割方、ビジネスのお客様ですが、東日本エリアの新幹線は半分が観光のお客様です。そういう中で、観光づくり、地域振興に一生懸命、取り組みながら応援を続けていきたいと思います。

 

佐藤:百貨店の話を聞いているみたいです(笑)。業種が違うとは思えない。

 

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上野駅長号で行く、ふくしまDCいわき応援の旅
(2015年5月)

 

太田:定期的に若い社員を連れて、学びの旅というのを実施しているんですね。仕事とは少し違って、自分の時間とお金を使って旅に行く。自分から訪ねてみて、地域の皆さんと会話し、あたたかいものを食べて、おもてなししていただいたことを思い出せば、社員自らが自信を持って、東北の旅をお勧めできると思うんです。小さなことかもしれませんが、そういうことがきっかけで広がっていくものだと思っています。毎回、地元の皆さんに会いにいくような手作りの旅なのですが、いい出会いもあって、自分の人生の中でとても大切にしていきたいものになっています。

 

佐藤:お人柄がにじみ出ていらっしゃいますよね。なるべくして、上野駅の駅長になられたような気がします。

 

太田:上野駅は一つのチームであって、5000人の力で築き上げているものです。“おもてなしステーション上野”であって、本当の上野の街の玄関口、もしかすると歴史や文化の玄関口であって、北の玄関口というだけではなく、世界から見ても上野というのは、日本の玄関口としての役割を果たしていると思います。そう考えると、余計、しっかりおもてなしをしていかなければならないと身の引き締まる思いでいます。

 

佐藤:この度は、いろいろな楽しく貴重なお話をお伺いすることができました。ありがとうございました。
(おわり)

 

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