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2018.03.21第二弾モノづくりから上野を知る!その14

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上野の魅力をモノづくりの側面から知るべく、台東区のモノづくりに精通する方々にお話をお伺いに行きました。第二弾は、上野にアトリエを持ち、活躍されている方を中心に、ご紹介したいと思います。
14回目は、これまでにない視点から新しい普通を発明させる染谷 昌宏さんにお話を伺いました。

 

<山田>染谷商店について教えてください。
<染谷さん>染谷商店で商品を製作する際、大切にしていることは、「普通」であることです。暮らしの端々で、使い手に寄り添いながら長く愛用されてきたものには、しばしば素晴らしいデザインを見ることができます。企画しているブランド『sugata』の名前は、日本語の「姿」という言葉に由来していて、「内実を映すものとしてのものごとの外にあらわれた様相」という意味を持ちます。ものごとや使い手と真摯に向き合い、ものの在るべき姿について考えることで、これまでにない定番品をつくりたいと考えています。

 

<山田>例えば、どのような「普通」を提案されましたか。
<染谷>『sugata』の商品に、「平らな立体」というテーマで製作した小銭入れがあります。

 

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「平たい立体」をテーマにした小銭入れ

 

小銭入れの多くは、小銭を入れるスペースを確保することで厚みが生じます。この商品は、構造の工夫によって、とても平らにできていてかさばりにくい。そのうえで、およそ25枚の硬貨が収まる収納力もあります。一見すると、何の変哲もないようなまるい形ですが、普段持ち歩くときは「平らな」小銭入れが、使う際は側面を押すことで口が開き「立体」になるというデザインです。

 

<山田>どのようにして、多くの「ひらめき」を生み出していますか。
<染谷さん>デザインは視覚的な面白さを重視しているものも多く見受けられますが、私は手触りや、動作など触覚を大切にしています。機能や実質に即したかたち、いわば「理由のある美しさ」をデザインに落とし込もうと試みているのですが、ひらめくタイミングは、例えば散歩の途中や入浴中といった、くつろいでいるときが多いですね。

 

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輪留めを利用したキーケース

 

<山田>染谷さんは、もともとなにかを作ることが好きだったのでしょうか。
<染谷さん>手を動かしてモノを作ることが好きでした。前職では義肢装具士として義手足やサポーターなどの製作に携わっていたのですが、それもやはりものを作ることが誰かのためになるということが喜びだったからだと思います。子どものときの自由研究や工作などでも、自分の作ったモノで人が驚いたり笑ったりすることが嬉しかったので、その頃から作るということが好きだったのかもしれません。

 

<山田>台東区がモノづくり産業の盛んなエリアであることは知っていたのですか。
<染谷さん>以前、上野まで歩いて行ける場所に住んでいたこともあり、当時からお世話になっている業者さんが上野御徒町エリア周辺に店舗を構えていたこともあって、台東区はとても身近な地域でした。頼りになる業者さんや、素晴らしい技術を持つ職人の方々がいらっしゃるということで、モノづくり産業が盛んという印象はありましたが、デザイナーズビレッジに入ってから一層その底力を感じています。

 

<山田>デザイナーズビレッジに入るきっかけについて教えてください。
<染谷さん>2015年にジャパンレザーアワード2015で部門賞をいただいた際に、モノづくりを仕事にしていくと決めました。そのとき、お世話になった方からデザイナーズビレッジのことを伺い、モノづくりの盛んな台東区を拠点に活動したいという考えもあって入居を志しました。また、デザイナーズビレッジ村長の『「好き」を仕事にする自分ブランドのつくりかた』という著書を読んでいたこともきっかけのひとつです。

 

<山田>デザイナーズビレッジに入居後、変わったことはありますか。
<染谷さん>とにかく人と話す機会が増えました。それまでは、すべての作業を1人で行っていたため、誰かの前でプレゼンテーションをしたり、意見をいただいたりということがほとんどなかったんです。色々な方とお話をさせていただく中で、自分の個性をより客観的に認識することができ、自分にとってのデザインの在り方というものが明確になりました。

 

<山田>デザイナーズビレッジに入居して台東区とのかかわりが密になったと思いますが、染谷さんの台東区の印象を教えてください。
<染谷さん>台東区は、新しい店舗が次々できるなど発展が目覚ましいですが、一方で美術館や博物館、アメ横、経験豊富なメーカーや職人の方々など、長く続いているものも多くあります。そうした多様性を受け入れる懐の深さがとても魅力だと思っています。また下町の良さと言うのか、人と人との距離が近くて親しみやすいですね。例えば台東区の鳩は、人が近寄っても逃げないことが多いんです。安心感があるのでしょうね。私の中での台東区の印象をよく表していると思います。

 

<山田>上野御徒町エリアの展望について教えてください。
<染谷さん>台東区は、やはりモノづくりの盛んな街ですから、誰かの生活を豊かにするようなモノを多く生み出していくことが大切だと考えています。私も自身のモノづくりを通じて、このエリアの発展の一助となれるよう日々活動しています。また上野御徒町エリアは、多様なものを受け入れる懐の深さも魅力だと思っていますので、あまり整理整頓され過ぎることなく、街の個性を活かしながら発展していってほしいと思っています。

 

 

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