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上野の魅力をモノづくりの側面から知るべく、台東区のモノづくりに精通する方々にお話をお伺いに行きました。第二弾は、実際に上野やその周辺にお店やアトリエを持ち、活躍されている方を中心に、ご紹介したいと思います。
8回目は、花の本場北欧フィンランドでフラワーデザイナーとして活躍していたヘンティネン・クミさんにお話を伺いました。
<山田>台東区にも花屋や花に関する教室が多数あると思いますが、フラワーデザイナーになるために、北欧のフィンランドで学んだ経緯などを教えてください。
<クミさん>自然豊かな北欧フィンランドでは、いろいろな行事やプレゼントには必ず花が使われ、普段の生活の中でもほとんどの家庭で花が飾られてます。フラワーデザインとしての技術も北欧はワールドカップやヨーロッパカップで常に上位入賞者を排出するなど高い技術をもっています。日本の花の学校では、生け花なら生け花について学び、花を育てるところからは始めませんよね。しかし、私の娘が留学しているフィンランドの学校では、1年目に実際にハウスで花を育てながら、その花に適した土について勉強したり、森に入り植物が育つ環境や特性を学ぶことから始めます。私もデザインの壁にぶつかったときにデザインは自然の模倣、森から学べと教わりました。日本に帰国して同業者の方から聞いたのですが、フィンランドは小さい頃から花を教えるという「花育」として有名らしいです。確かに、親が子供と一緒に森などに出かけた際に、植物について教えている場面を何度も見かけました。
森の別荘でゆったり過ごす際のナチュラルデザイン
スタイリッシュでシンプルなデザイン
<山田>フラワーデザインとフラワーアートはどのような違いがありますか。
<クミさん>アートは、芸術のことを表していますよね。例えば、日本の生け花はアートの分野です。習い事や自身の精神修行として。また、神社やお寺、床の間などに飾られることも多いと思いますが、普段その活けた花を販売しているお店を見かける事は少ないはずです。反面、フラワーデザインは、不特定多数の方に「販売すること」を目的としています。その花を置く空間デザインのインテリアの一つとしての捉え方です。フィンランドの「花」は、生活の一部で欠かせないものであるため、とても重要なインテリアとされています。例えば、仕事のオン・オフで、過ごす場所が異なります。オンのときは、仕事で忙しいこともあるため、スタイリッシュなデザインでシンプルなフラワーデザインが好まれ、オフのときは、森の別荘でゆったり過ごすことが多いため、ナチュラル系の落ち着くデザインが好まれることが多いです。また、北欧フラワーデザインを代表する植物のラインを活かしたシンプルでスタイリッシュなフォーマルリニアスタイルは、一説では日本のいけばなをモチーフにしたと言われています。フィンランドは、親日家が多いので、フラワーデザインの世界も人もそれぞれの良い特徴を認め合い今後もっと、深い繋がりができたらと思います。
<山田>フィンランドから帰国して、新御徒町にオフィスを構えようと思った理由やこのエリアの印象について教えてください。
<クミさん>新御徒町に落ち着いたのは、同じビルに入居している4Fのオーナーの紹介で入居しました。その当時は、上野が「ものづくり」として有名ということは知らず、交通の便が良いという印象でした。
<山田>ものづくりの街としての印象はどうですか。
<クミさん>分野は違えど、想いを持ってモノを作る方が多い街ですので、同じ目線で話しやすいです。また、材料などフラワーデザインに必要な道具を揃えやすいということもあり、ものづくりをされる方には過ごしやすい街だと思います。
<山田>今後の上野・御徒町の展望について教えてください。
<クミさん>上野は、地元の方に愛されている街だと思います。お祭りをはじめ行事イベントというのは、地元の方の協力なしでは開催できないことです。また、お寺の多さにもびっくりしました。今後はそれらも踏まえて、生け花とヨーロピアンフラワーデザインを絡めた和モダンのご提案やもちろん北欧フラワーデザインを発信して行き、花をキーワードに地元の方を始め、多くの方が上野とお花を愛してくれる憩いの場となってくれたらと思います。
ハーバリウム(紫)
【編集後記】
クミさんが、手掛けたフラワーデザインのどこを見てほしいのかポイントを聞いていた中で、「素人が見て綺麗な花でも、プロが見ると綺麗でないという花を今まで何度も見た。」という言葉がありました。「本物」というのは、その素材の特性を知り、細かいところまで活かしきれていることなのかもしれません。