2018.02.03第二弾モノづくりから上野を知る!その5

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上野の魅力をモノづくりの側面から知るべく、台東区のモノづくりに精通する方々にお話をお伺いに行きました。第二弾は、実際に上野やその周辺にお店やアトリエを持ち、活躍されている方を中心に、ご紹介したいと思います。
5回目は、台東区小島の台東デザイナーズヴィレッジ(以下、デザビレ)を拠点にしてコスチュームジュエリーを製造販売するブランド、LA COQUINE(ラ コキーヌ)のデザイナー、沼本真希さんにお話を伺いました。

 

<山田>沼本さんは、東京藝術大学出身ですが、以前からジュエリーに関心があったのですか?
<沼本さん>正直言いますと、元々ジュエリーに関心があった訳ではなく、最初は東京藝大の存在も知りませんでした。ただ、昔から絵を描くのが得意でしたので得意分野を活かして藝大に進学しました。専攻も現業とは異なる「鍛金」を専攻していました。
<山田>絵画ではなく、ジュエリー製作とも異なる「鍛金」を専攻された理由は何ですか?
<沼本さん>現在文化庁長官に就任されていらっしゃる宮田亮平先生が、私が学生だった頃鍛金の教授をされていて、先生の人柄に惹かれて専攻しました。将来のことを考えて選んだというより、その当時の気持ちを優先して鍛金を選びました。

 

<山田>藝大を卒業されてからすぐ「ラ コキーヌ」を立ち上げたのですか?
<沼本さん>卒業後は、子供の頃からずっと関心のあったファッション業界に進みました。販売から始めてバイヤーのお仕事や企画職など約8年間経験を積んだ後に、一度ファッション業界を離れて、友人からの誘いもありアンティークジュエリーの会社に転職しました。
その会社で買い付け業務のためパリに出張したのですが、その際にパリの魅力にすっかりハマってしまったんです。街並みや文化にも魅了されましたが、現代のファッションに身につけるにはあまりにも華美なアンティークジュエリーが、パリで見ると街並みに不思議と溶け込みすごく興味をそそられました。それまで私が知っていたジュエリーとは大きく異なる自由で優美なデザインだったので、ジュエリーに対する可能性を感じる機会となりました。

 

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2/7(水)から松坂屋上野店北口イベントスペースにて販売予定

 

<山田>そうなんですね。学生の頃に学んでいたことや友人からの紹介という偶然のつながりが、このコスチュームジュエリーブランドを始める決め手になったんですね。
藝大を卒業して約10年間、上野エリアからは離れていたかと思いますが、久しぶりに戻ってきた感想を教えてください。
<沼本さん>コスチュームジュエリーの材料問屋は蔵前・浅草橋エリアに集中しているため、仕事をするにはとても便利な場所です。また、お取り引き先の工場や職人さんは、顔なじみになるにつれて細かい単位の発注なども親身に対応してくださるようになりました。下町にはお祭り文化もあるためか、やはり人と人との距離が他のエリアと比べて密な印象を受けます。

 

<山田>では、独立されてデザビレにつながるまでの経緯を教えてください。
<沼本さん>デザビレに入居したのは2018年4月で、まもなく1年になります。仲の良い友人でありガラスアクセサリー作家の福村彩乃さんから2年ほど前に評判を聞いたのが最初でした。
ブランドを立ち上げて間もなかった私は、当時既に入居していた彼女から同年代のクリエイターやデザビレを卒業して活躍されている方々の話を聞いてすごく刺激をもらい、入居したいと決意しました。

 

<山田>デザビレに入居されてなにか変わりましたか。
<沼本さん>デザビレに入居すると自然と成長すると思われがちですが、入居すれば必ず伸びるのかといえばそんなことはありません。デザビレは卒業後の目指す姿を考える場所で、ビジネス全般について考える機会が入居者には与えられます。活躍中のデザイナーや雑誌の編集者の方など外部講師を招いたセミナーに参加したり、デザビレの責任者である村長との面談を受けたり、同期や卒業生にアドバイスを聞いたり、様々な学びの機会がある中で、自分で試行錯誤しながら成長の道筋を描いて行かなければいけません。
それでもデザビレに入る前と比べると、一人で悶々と考えていたことが相談できるという環境に居る、ということは大きい変化だと思います。

 

<山田>入居後に苦労されていることはありますか。
<沼本さん>アクセサリーやジュエリーを扱っている卒業生で活躍されている方々が多いので、自分が先輩達のようになれるかがプレッシャーです。。

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沼本さんが製作したアクセサリー

 

【編集後記】
フランス語で、ラコキーヌは「いたずらっ子」という意味。
女性がいつも輝きながら、自由で幸せな人生をファッションと共に送って欲しいという願いをこめて、
遊び心のある女性らしいオリジナルアクセサリーを一つ一つ丁寧な手仕事で作りあげています。
沼本さんだからこそ考えつくネーミングであり、彼女らしさがそこに表現されていると思います。
自分にあった色のコスチュームジュエリーを見つける楽しさがそこにあるかもしれませんよ、みなさん。

<山田>その気持ち、わかります。
<沼本さん>ですが、最近細かい目標を持つことが大切だと感じるようになりました。細かい目標を一つ一つクリアしていけば、結果的に目指す姿に近づくことができると思えるようになりました。モノが売れないと言われる時代に、多くの方から求められるブランドになれたらと思いますが、そのためには「人を感動させないとモノは売れない。」とも思っています。目指す姿には簡単にはなれませんが、「人を感動させる」商品をつくることができるように、今後もがんばりたいと思います。

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