その六十四 松坂屋の戦災復興記念に作られた両口屋是清の幻の落雁
#松坂屋ヒストリア小話 その六十四
昭和28年松坂屋名古屋店は戦災復旧工事を完了・新装開店し、両口屋是清が記念の落雁を製造した。
「千なり」「旅まくら」「をちこち」など数々の人気銘菓で知られる両口屋是清の創業は1634年(寛永11)。以来380有余年、尾張藩の御菓子御用をつとめるなど名古屋を代表する老舗和菓子店として発展を遂げ、いまや全国の百貨店や路面店など計70店舗を展開しています。両口屋是清と松坂屋の取引関係は、昭和33年(1958)に松坂屋名古屋店地下1階の「名物街」に両口屋是清が百貨店初の常設店舗を構えたときから始まったと伝えられていますが、厳密には取引の歴史は戦前まで遡り、昭和7年(1932)4月、当時栄町角にあった、いとう呉服店の旧店舗「栄屋」内の中庭で両口屋是清が「桜茶屋」という茶店を運営していたという記録が残っています。
栄屋 外観
栄屋にあった「桜茶屋」の写真
名古屋店 全館改装開店 1953(昭和28)年
名古屋店B1F「名物街」昭和33~34年頃
栄屋は昭和20年(1945)3月に空襲で焼失し、このとき名古屋店も炎上しますが、昭和28年(1953)9月名古屋店の戦災復旧工事が完了した折には、両口屋是清が全館新装完成を祝って名古屋店の建物を模った記念の落雁(縦15.5cm×横26.5cm×幅3.8cm)を製造しています。当時この落雁がなぜ製造され、どのように使われたのかは定かではありませんが、両口屋是清と松坂屋が取引を開始する5年も前に製造されたこの幻の落雁の木型は、いまも両口屋是清の小牧工場の収蔵庫に大切に保存されているということです。
落雁の木型(昭和28年製造)
名古屋店新装完成記念の落雁