その六十二 松坂屋名物「白いとんかつ」が人気メニュー!
#松坂屋ヒストリア小話その六十二
昭和5年3月、松坂屋銀座店6階に百貨店初の「お好み食堂」が開設された。
銀座店の「お好み食堂」は、天ぷら、お寿司、とんかつ、おでん等の第一級の職人を集め、来店客は各カウンターで希望のメニューを注文できる、これまでにない新しい趣向の食堂だった。「百貨店の食堂に旨いものなし」といわれていた当時にあって、銀座店のお好み食堂のメニューは、どれも本格的に調理された一品揃いだったため、たちまち大評判となり、昭和12年には松坂屋名古屋店、昭和21年に静岡店にも開設され、他の百貨店も追随した。銀座店のお好み食堂で特に人気だったのはとんかつで、140度くらいの低温で長めに揚げたとんかつは、表面は白いがなかの肉にはちゃんと火が通っており、衣も毎日食パンの耳から作られる自家製パン粉で揚げるため独特の柔らかい食感で、その味は松坂屋名物「白いとんかつ」と多くの人から称賛された。
銀座店お好み食堂メニュー(1991年)
そのほか、魚河岸直送の新鮮なネタが評判の寿司コーナー、知る人ぞ知るおでんコーナー、常連客で賑わう天ぷらコーナーなど、戦後も開業以来の伝統の味が継承された銀座店のお好み食堂は食通の人気を集めたが、平成25年6月松坂屋銀座店の営業終了とともに、その輝かしい歴史に幕を閉じたのである。
銀座店お好み食堂①(昭和30年代)
銀座店お好み食堂②(昭和30年代)