その三十四 松坂屋の商標 井桁の文字は何?
#松坂屋ヒストリア小話 その三十四
松坂屋の商標「いとうまる」の井桁の文字は、創業家である伊藤家の「藤」の字である。
通常「いとうまる」と呼ばれている松坂屋の商標は、創業家である伊藤家の「藤」の文字を、組織と団結を表す「井桁(いげた)」と完全を意味する「円」で囲んだものである。1784年(天明4)に記された「暖簾(のれん)の明細書」には「白揚り 紋丸の内は井筒藤字」(白揚りとは模様を白く染め抜くこと、井筒は井桁の意)と表現されている。この、「いとうまる」の商標がいつ定められたものかは確かではないが、それが史料に出てくるのは、暖簾分けを成文化した1768年(明和5)の「定録(さだめろく)」が最初であった。この定録には、支配人以上は「いとうまる」、支配脇以下は井桁のない「まるふじ」の暖簾を許すということが記されている。呉服店の暖簾は、木綿製の紺染めを白抜きしたものが一般的であったが、松坂屋では、地色が黒もしくは赤(柿色)のものを用いていた。
暖簾の明細書
定録
赤いのれん
「安永元年上野店外郭図」(円志)