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2016.04.28Special Interview「魅力がいっぱい!上野公園」③

[第3回:不忍池と蓮]


●建設局東部公園緑地事務所長/細岡 晃さん ●聞き手 佐藤 輝光(松坂屋上野店)

 

不忍池は、桜と並んで上野を代表する顔の一つでもあります。琵琶湖を模したとされる不忍池の歩みと蓮について、建設局東部公園緑地事務所長の細岡晃さんにお話を伺いました。

 

※写真は、満開のソメイヨシノと不忍池

 

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■不忍池と上野

 

佐藤:不忍池も、上野の顔の一つですね。 

 

細岡:不忍池は約11ヘクタールあって、池としては23区内でいちばん大きいのではないかと思います。水元公園の「小合留」も大きいのですが、池ではなくて、準用河川という川なのです。不忍池をはじめ、皇居の内堀・外堀、石神井池や善福寺池といった市街地にある池というのは、東京にとって重要な環境の財産となっています。天海僧正が琵琶湖を摸して、寛永寺の立地を選んだのが不忍池の始まりですが、重要な江戸の鎮めの地であったり、レクリエーションの場だったり、また水鳥や蓮の名所であったり、というように時代は変われども連綿と今につながり、残ってきたのです。

 

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不忍池から街をのぞむ

 

実は昭和20年代に、埋め立てて野球場にしようという話もありました。大変にリベラルな討議がなされて、賛成・反対の意見がたくさん出ました。文化人の間でも意見が分かれ、大切な景観資源であり文化資源だとする意見がある一方、埋め立てて野球場にしたほうが役に立つ、という意見も出たようです。不忍池に注いでいるのは、谷中から流れてきている藍染川ですが、昔は蛍川と呼ばれていたそうです。谷中のコミュニティセンターがある防災広場の上の方に、蛍坂という坂がありますが、昔はあの辺りに蛍が多かったのでしょう。ただ、蓮が生えている不忍池に蛍が乱舞していたかどうかは、わかりませんが。

 

 

■不忍池の蓮にも、レンコンはつくのか?

 

佐藤:先日、私の職場の松坂屋で、あの不忍池の蓮にはレンコンがつくのだろうか、という話題が出て、どうもつくらしいと話していたのですが、どうなのでしょうか。 

細岡:はい、根がないと蓮も育ちませんから、当然レンコンはあるのですが、細くて食用のレンコンとは明らかに違います。食べて食べられないことはないと思いますが。

 

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佐藤:食べたという人に聞いたら、細くて味がなかったといっていました(笑)。

 

細岡:私は食べたことはありませんが、蓮の刈り取りの時に取れるので見たことはあります。蓮の全面的な刈り取りは、ここ2年続けて実施しています。あれだけ養分を蓄えたものが、枯れて水の中に沈んで分解されるわけですから、池の水質の悪化を改善するために、冬季に上の枯れた部分を刈っています。以前はいろいろな理由から、岸から一定の幅の部分のみを刈り取っていたこともあります。蓮は今、一つの種類だけが見られるようですが、昔は何種類もあったようです。鑑蓮会という蓮を鑑賞する会があって、昔の不忍池には白い花の蓮など、いろいろな種類があったようですね。蓮見茶屋の向こうに、昔からの品種を含めいろいろな種類の蓮を植えようと考え、植えたのですが、でもある時、気づいたら、外来種のカメや魚が芽を食べていたんです。慌てて網で囲いましたが、手遅れでした。また工夫して、昔からある蓮を楽しんでいただけるような環境にしたいと思っています。

 

佐藤:不忍池の蓮は大きくて迫力がありますね。

 

細岡:花も葉もとても大きい。江戸時代からあった蓮もあの大きさだったのかどうかはわかりませんが、少なくとも私が子どものころも今のような大きさでしたね。上野というと桜が有名ですが、蓮も昔からある大切なリソースの一つなんですね。

 

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上野不忍池の蓮

 

佐藤:昔からあったリソースをもう一度、再編集して、人の目に触れるようにしていく。上野でなければ、なかなかできないことですね。

 

我々の店も上野で250年続いています。今の時代、もう一度百貨店の良さを見直し、持っているリソースに光を当て直して、お客様に“百貨店でお買い物をするって、やっぱり楽しいね”と思っていただけたらと考えています。どこか通じるものがあるように思います。

 

(つづく)

 

[第1回:上野公園誕生と、そこに込められた意味]
[第2回:世界が憧れる上野公園の桜]
[第4回:想い出の上野]
[第5回:上野、変わるものと変わらないもの]

 

 

 

 

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