盆栽の「正面」、どこから見る?
こんにちは。盆栽 清香園 大丸東京店の照井です。
盆栽の「正面」、どこから見る?
今回は、盆栽のちょっとコアなお話をしたいと思います。
皆さんは盆栽には「正面」があることをご存じでしょうか?それぞれの盆栽に最も美しく見えると考えられる角度があり、飾る際にはそちらをお客様に向けます。いわば盆栽それぞれの「顔」です。基本的に一つの盆栽に正面は一つ。ですが、中には複数の角度から鑑賞できるものもあります。今回大丸東京店にやってきたこちらの五葉松もそのひとつです。
五葉松といえば、短い葉がまとまって生える繊細で品格のある樹種。こちらの樹は2本の幹が寄り添うように立ち上がり、それぞれ異なる方向へと伸びています。幹の動きに合わせて枝葉が左右へ広がり、伸びやかでありながらどこか緊張感のある姿をつくっています。
そしてこの樹の面白いところは、見る角度によってその印象が大きく変わることです。
今回は3つの角度から見比べてみましょう。
パターン①

パターン②

パターン③

いかがでしょうか。同じ樹でも見る角度によってずいぶん印象が違うのがお分かりかと思います。
①は、2本の幹がつくる交差と、左右に広がる枝葉のバランスが印象的です。樹全体に動きがありながらもまとまりを感じさせます。
②は、幹の立ち上がりや、2本の幹がどのように関わり合っているかがよく見える角度です。樹の骨格が強調され、立体的な構造を楽しめます。
③は、幹の流れが比較的すっきりと見え、枝棚の広がりも印象的です。①とはまた異なる伸びやかな表情があります。
皆さんはどの角度がお好みでしょうか?
ちなみに、私のお気に入りは①です。
盆栽を仕立てるうえでは、幹や枝が交差して見えることは、基本的に避けるのが好ましいとされています。幹や枝の流れが分かりにくくなり、樹形の美しさを損なうことがあるためです。しかしこちらの五葉松はどうでしょうか。
①の角度から見ると、右側から伸びた幹が手前にせり出し、左側の大きな幹と交差しています。それでも、全体としては絶妙なシルエットを保っています。「しっくりくる」のです。その理由のひとつは、枝葉の配置にあるのかもしれません。左下の余白に枝葉がほどよく収まり空間を適度に埋めることで、幹の交差がありながらも全体のバランスが整っています。
さらに幹の繊細な曲線や、そこから伸びる枝の動きも見どころです。整然とまとまっているだけではない、少しくせのある樹形。それでいて不思議と見飽きることがありません。
実は以前この樹が盆栽雑誌に掲載された際にも、①の角度が正面として採用されていました。
基本となるセオリーがある一方で、そこから少し外れたところに生まれる面白さもある。今回の五葉松はそんな盆栽の奥深さを感じさせてくれる一樹です。
正面を考えるときは、幹の動きや枝葉の配置、空間の取り方など、さまざまな要素を見ながらその樹の魅力が最もよく伝わる角度を探していきます。
もちろん、見る人によって感じ方が異なるのも盆栽の面白さです。ご自分だけのお気に入りを見つけてみてください。
大丸東京店10階 盆栽清香園では、初めて盆栽に触れる方にも分かりやすくその魅力や楽しみ方をご紹介しております。
店頭に並ぶ盆栽は週に一度全て入替を行っており、毎週異なる作品をご覧いただくことができます。
お近くにお越しの際は、ぜひお気軽にお立ち寄りくださいませ。



