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2021.10.20多彩な天台の宝物が一堂に会する特別展「最澄と天台宗のすべて」レポート

比叡山延暦寺を開いた伝教大師最澄。開宗から江戸時代までを振り返る、伝教大師1200年大遠忌記念 特別展「最澄と天台宗のすべて」が東京国立博物館で10月12日に開幕しました。

 

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最澄は、弘法大師空海と並び新しい仏教を日本にもたらし、万人を救うという『法華経』の説く理想の世界を実現することに生涯を捧げました。その教えが受け継がれ、比叡山延暦寺をはじめ全国に天台宗が広がり数々の名宝も生まれました。本展では、受け継がれる多彩な名宝を通して最澄と天台宗について迫ります。

 

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国宝 聖徳太子及び天台高僧像 平安時代・11世紀 兵庫・一乗寺蔵
右から円仁、最澄といった日本の天台やインド・中国の僧たちを描いた十幅が並ぶ

 

早くから厳しい修行に励み、国家公認の僧侶となった最澄には約束された道が用意されていましたが、故郷の比叡山に籠もり一人で修行を続けました。そして延暦寺の始まりとなる一乗止観院を建てて自ら刻んだ薬師如来を安置。この時、19歳という若さでした。
最澄はさらに仏教を深めようと中国に渡り、帰国後、天台宗が公認され従来の仏教とは異なる独自性を打ち出していきます。

 

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重要文化財 薬師如来立像 平安時代・11世紀 京都・法界寺蔵
延暦寺の総本堂、根本中堂に安置される最澄作の秘仏本尊の薬師如来像に近い姿と考えられている

 

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重要文化財 伝教大師(最澄)坐像 鎌倉時代・貞応3年(1224) 滋賀・観音寺蔵
かつてから信仰されてきた現存する最澄の最古の肖像

 

最澄が入寂し意思を継いだ慈覚大師円仁と智証大師円珍は、最澄が中国で学んだ密教をより本格的に学び、日本に帰国。天台密教の基礎が築かれ、相応や安然によって教学的に体系化されていきました。独自の発展を遂げた日本天台宗の弟子たちの功労と、発展を見ることができます。

 

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重要文化財 両界曼荼羅図 平安~鎌倉時代・12~13世紀 大阪・四天王寺蔵(11月7日まで展示)
胎蔵界曼荼羅は真言宗の曼荼羅と比べると一部の図様や仏の配置が異なり、現存する台密系両界曼荼羅の最古例とされる

 

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重要文化財 千手観音菩薩及び両脇侍立像 平安時代・12世紀 滋賀・明王院蔵
明王院は相応によって開かれ、現在この三尊が本尊となっている。比叡山の横川中堂特有の尊像構成

 

10世紀半ばには、比叡山中興の祖・慈恵大師良源が国の有力者から後ろ盾を得て、延暦寺は盛栄しました。さらに弟子の恵心僧都源信は極楽往生を願う浄土教思想を説き、天台浄土教を完成。天台浄土教は日本仏教に多大な影響を与え、貴族の信仰と結びつきました。そのような背景から、華やかな仏教美術も生まれました。

 

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国宝 法華一品経(慈光寺経)勧持品第十三 如意御前筆 鎌倉時代・13世紀 埼玉・慈光寺蔵
金銀切箔をちりばめた、鎌倉時代を代表する装飾経

 

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国宝 普賢菩薩像 平安時代・12世紀 鳥取・豊乗寺蔵(10月31日まで展示)
平安時代の普賢菩薩画像を代表する名品。高位の貴族が発願したと考えられる

 

鎌倉時代になると『法華経』の思想のもと、法然による浄土宗、親鸞による浄土真宗、日蓮による日蓮宗などが生まれ、鎌倉新仏教が興隆。天台宗では比叡山の鎮守である日吉山王社(日吉大社)の信仰が盛んになりました。「山王神道」が形成されると、曼荼羅や絵巻にも表われるほどに。

 

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重要文化財 日吉山王曼荼羅図 鎌倉時代・14世紀 滋賀・百済寺蔵(10月31日まで展示)
比叡山に祀られる諸神を、仏の姿を借りて描いたもの

 

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重要文化財 天狗草紙 延暦寺巻(部分) 鎌倉時代・13世紀 東京国立博物館蔵
鎌倉時代末期の諸大寺・諸宗派僧侶の慢心を天狗に表し風刺した絵巻。焼き討ち前の延暦寺の伽藍が描かれている

 

織田信長による焼き討ちにより甚大な被害に遭うものの、豊臣秀吉や徳川家康によって再興した延暦寺。復興に尽力した慈眼大師天海は家康の顧問的存在となり、上野の東叡山寛永寺や日光東照宮などを建立しました。このことにより江戸をはじめ、関東では天台宗が発展しました。

 

 

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重要文化財 慈眼大師(天海)坐像 康音作 江戸時代・寛永17年(1640) 栃木・輪王寺蔵
天海の強靭な精神が表情に現れている。108歳まで生きたといわれ、寛永寺で入寂した

 

『法華経』に基づいた「悟りに至る道は誰にでも開かれている」という思想が全国に受け入れられて広まった天台宗。特に日本の古来から信仰を集めた霊山では神仏が習合し、独自の信仰が現在まで残る地域もあります。そのように全国各地で昇華され、平安時代を中心としたさまざまな仏像が多数配され圧巻です。

 

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重要文化財 金剛力士立像 平安時代・12世紀 福島・法用寺蔵
威嚇の身振りや怒りの表情が控えめな、平安時代後期の作風

 

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重要文化財 薬師如来坐像 平安時代・12世紀 岐阜・願興寺(蟹薬師)蔵
平安時代後期の優品で、願興寺の秘仏本尊でもある

 

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奥正面/重要文化財 薬師如来坐像及び両脇侍立像 平安時代・12世紀 長野・瑠璃寺蔵
平安時代後期に流行した様式を基調とした、穏やかな作風の薬師如来坐像

 

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十二神将立像(2、4、6、9号像) 鎌倉時代・13世紀 愛知・瀧山寺蔵
それぞれユーモラスな表情をし、手前の4号像は甲(よろい)を身に着けない異色な形式

 

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慈恵大師(良源)坐像 鎌倉時代・13~14世紀 東京・深大寺蔵
205年ぶりの出開帳となる秘仏。高さ約2メートルという肖像彫刻で日本最大の大きさ

 

展覧会を堪能した後は、グッズ売り場へ。人気マンガ『阿・吽』とコラボしたグッズも並びます。

 

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画家・北畠聖龍デザインの「特別御朱印」1枚700円(税込)

 

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漫画『阿・吽』とのコラボ。左から「トートバッグ」1,100円、「一筆箋」550円、「クリアファイル」450円(各税込)

 

1200年という永きにわたって続く天台宗の歴史と、継承される名宝の数々。この機会にしかお目にかかれない秘仏もあります。展示空間でしか味わえない臨場感もぜひ堪能してください。

 

伝教大師1200年大遠忌記念 特別展「最澄と天台宗のすべて」
会期 2021年10月12日(火)~11月21日(日) ※期間中展示替えあり
開館時間 9:30~17:00
会場 東京国立博物館 平成館
休館日 月曜
料金(前売日時指定券/税込) 一般2,100円、大学生1,300円、高校生900円
※本展は事前予約制です。詳細は下記展覧会公式サイトをご確認ください

問い合わせ 050-5541-8600(ハローダイヤル) ※9:00~20:00/年中無休

 

 

 

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