その十八 昭和天皇・皇后両陛下に玉座を上納
#松坂屋ヒストリア小話 その十八
終戦後、松坂屋は昭和天皇・皇后両陛下が儀式で使用する金の玉座を製作していた。
昭和26年(1951年)春、宮内庁から、松坂屋をはじめ都内有名デパート3社に、天皇陛下の御椅子(玉座)謹製の内意が伝えられました。これは3社でそれぞれデザイン設計を出し合い、採用されたデパートが製作するというものでした。この玉座は、戦災により焼失した明治宮殿に代わって宮内庁庁舎3階に作られた仮宮殿の宮中表北の間(謁見の間)に儀式用に置かれるとのことでした。松坂屋は早速専属の家具工場であった子会社の(株)誠工舎(現在は(株)J.フロント建装)に発注を依頼しデザイン設計にとりかかりました。デザインにはほぼ6ヶ月を要し、肘掛下部には百獣の王ライオンが彫られ、背もたれ上部には鳳凰を配した見事な彫刻、金箔押しの木部にアズキ色の布部、房は金糸とするなど重厚荘厳にデザインされた松坂屋の設計図は、他デパートと競い合った結果見事採用されたのです。正式のご下命は昭和27年5月で同年10月に納入を完了していますが、デザインにかかってから完成まで50人もの職人の手をかけ、ほぼ1年半の歳月を費やしています。金色燦然たる玉座は昭和28年の新年祝賀の儀で初めてご使用になられ、以来昭和44年新宮殿に移られるまでの16年間、つねに両陛下とともにあったと伝えられています。
松坂屋子会社 (株)誠工舎による玉座の設計図
陛下の御椅子(玉座)
玉座の背部分(鳳凰)
玉座の脚部分(獅子)