その七十七 400点以上の衣裳が未公開の宝の山!
#松坂屋ヒストリア小話その七十七(2022/3/16配信)
松坂屋コレクションは、まだ400点以上もの衣裳が未公開の宝の山!
松坂屋コレクションとは、昭和初期に松坂屋がオリジナル呉服の創作に役立てるため収集した、江戸時代以前の衣裳や裂、雛形本などの染織工芸品コレクションの総称である。
松坂屋コレクション 貝桶模様振袖(江戸時代 J.フロントリテイリング史料館蔵)
コレクションを参考に松坂屋が製作した貝桶模様振袖(昭和50年代 個人蔵)
松坂屋コレクションが収集された昭和初期の松坂屋名古屋店(1925年(大正14)新築開店)
松坂屋コレクションの収集活動を担った松坂屋京都仕入店(1931年(昭和6))
松坂屋は、戦中・戦後を通じて京都仕入店内に大切に保管していたこのコレクションを、学術文化の振興に寄与する目的で一般公開することとし、『小袖 江戸のオートクチュール』展を2008年から2009年(平成20から21)にかけて名古屋、東京、大阪地区の美術館・博物館で開催し、衣裳193点を含む約300点の松坂屋コレクション作品を一挙に公開した。
名古屋市博物館「小袖 江戸のオートクチュール」展チラシ(2008年)
東京・サントリー美術館「小袖 江戸のオートクチュール」展ポスター(2008年)
大阪市立美術館「小袖 江戸のオートクチュール」展チラシ(2009年)
この大公開は各方面の注目を集めることとなり、3年後の2011年(平成23)にはコレクション作品の江戸時代の小袖1点が、そして2018年(平成30)には桃山時代の能装束4点が国の重要文化財に指定となった。
2011年重文指定「染分綸子地御所車花鳥文様繡箔小袖」(江戸時代)
松坂屋コレクション J.フロントリテイリング史料館蔵
2018年重文指定能装束4点のひとつ「紺地菖蒲菊桐文様小袖」(桃山時代)
松坂屋コレクション J.フロントリテイリング史料館蔵
また、2011年には松坂屋コレクションの保存・公開を目的に「一般財団法人J.フロントリテイリング史料館」が設立され、これまでに松坂屋美術館(名古屋店)での『松坂屋コレクション』展(2011年)や『うつくしき和色の世界-KIMONO-』展(2021年)をはじめ、国内外の有名美術館・博物館で開催された数々のきもの展への出展を促進してきた。
『うつくしき和色の世界-KIMONO-』展覧会の図録(2021年 松坂屋美術館)
※図録は、名古屋店南館7階松坂屋美術館ミュージアムショップで販売中です。
その結果、これまでに約400点の松坂屋コレクションの時代衣裳が展示・公開されたが、実は松坂屋所蔵のコレクションは衣裳だけでも800点以上あるため、まだ残りの約400点以上が未開の宝の山となっているのである。
例えば写真①の島津家伝来の二葉葵の図柄の小袖もそのひとつである。二葉葵は徳川家の女性の小袖に多い図柄だが、この衣裳は綸子の総模様の小袖の意匠形式の中でも模様が緻密であり刺繍も手が込んでいることから将軍家の女性が有力であり、断定はできないが時代様式からは天璋院篤姫から島津家に贈られた可能性がある作品である。
写真① 白綸子地瑞雲水葵藻蛍模様打掛(江戸時代)
松坂屋コレクション J.フロントリテイリング史料館蔵
衣裳の刺繍は二葉葵と蛍の緻密な模様
また写真②の小袖も武家女性が着用したもので、こうしたいわゆる「御所解模様」は武家女性の礼服と考えられているが、衣裳の模様に夫婦和合の象徴である鴛鴦(おしどり)が表された貴重な作品である。
写真② 鼠縮緬地雪中風景鴛鴦模様小袖(江戸時代)
松坂屋コレクション J.フロントリテイリング史料館蔵
衣裳には鴛鴦模様が表されている
そんな、どの衣裳をとっても興味津々の松坂屋コレクションだけに、今後も残りの作品の展示公開は学術関係者の大きな注目を集めていくものと思われる。乞うご期待!
※「松坂屋コレクション」および「重要文化財指定作品5点」については、以下の「松坂屋史料室」URLでご覧ください。
<松坂屋コレクションについて>
https://www.matsuzakaya.co.jp/nagoya/museum/collection.html
<国の重要文化財5点のご紹介>