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2020.10.23

生理用品を買えない現実も存在する。 「生理格差」を可視化し、解消するために

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生理用品を買えない現実も存在する。 「生理格差」を可視化し、解消するために

 

「生理の貧困」とは

 


1年前の10月19日。この日を「National Period Day(生理の日)」と定めたアメリカのNPO「PERIOD(ピリオド=生理)」は、全米各地で「生理の平等化」を目指すデモ行進を行いました。「生理の平等化」については、9月5日掲載の「生理はいつからタブー視されていたの?『生理の近代史』をレクチャー ―ミチカケ オンライントークイベント「michi kake at online」レポートvol.2」でも少し触れていますが、ひと言で言うと、「生理をタブー視せず、生理のある誰もが生理用品を入手できる状態にすること」です。

 


アメリカでは、貧困のために生理用品を買うことができない女性がたくさんいることから、こうした活動が始まったわけですが、「生理の貧困」は、アメリカに限ったことではありません。イギリスでも、生理用品が買えないために不登校となる女子生徒が少なからずいることがわかり、民間団体が生理用品の配布を始めました。そして今年1月、イングランドの学校が生理用品の無償配布を始め、2月にはスコットランドで、生理用品を必要とするすべての女性が生理用品を無料で入手できるという法案が可決されました。

 


一説によると、イギリスの女性が一生のうちに生理用品や生理痛の薬に支払う金額は、平均250万円とも言われており、こうした法律ができることで救われる女性は大勢いると思われます。日本で生理を経験しているみなさんも、一度、一生の間に生理にかかる費用を計算してみるといいかもしれません。使用する生理用品の種類や、生理に関する不調の程度、その対策によって個人差はあると思いますが、びっくりするような金額になるのではないでしょうか。

 

 

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ミチカケの各ショップで取扱いのある洗って繰り返し使用できるサニタリーアイテム

(左奥)月経カップ  (左前)布ライナー  (右)吸水ショーツ

 

 

 

 

命に関わる月経不浄視

 

 

欧米で「生理の貧困」が可視化され、解消される流れにある一方で、インドやネパール、アフリカなどでは、いまだに「生理のある女性」の存在自体が可視化されていない地域もあります。生理中は隔離され、文字通り「見えない」ようにされているのです。それでも最近は、月経不浄視に基づく理不尽な慣習が徐々に可視化され、国際的な批判にさらされるようになってきました。ネパールの西部で行われている「チャウパディ」という隔離の慣習がそれにあてはまります。

 


この地域では、生理中の女性が家にいると家族が病気になる、あるいは家が火事になるなどと信じられているため、女性たちは一定期間、掘っ立て小屋に隔離されます。掘っ立て小屋ならまだいい方で、体がやっと入るサイズの穴倉で過ごす女性もいます。小屋は吹きっさらしで寒いため、暖をとろうとして火を焚いた女性が、煙に巻かれて亡くなるという事故や、猛獣や人間の男性に襲われるという事件も多発してきました。

2005年に、ネパール議会は「チャウパディ」を廃止すると決めましたが、その後も慣習はなくならず、相変わらず死者が出続けました。2017年には、隔離中の少女が毒蛇に噛まれて亡くなるという事故が発生したため、ネパール議会は「チャウパディ」を実行した人物に罰金を科すという法律を定めましたが、それでもまだ慣習はなくなりません。罰金よりも、「月経による災い(病気や火事など)」の方が恐れられているのかもしれません。

 


また、現実的な問題として、隔離の慣習が行われている地域では、いわゆる生理用品がありません。隔離されているから必要ないという見方もできますが、生理用品がないために小屋や穴にこもるしかないという見方もできます。女性たちの命にも関わる隔離の慣習をなくすためには、まずは清潔な生理用品の頒布が必要であり、そのための活動を行っている団体もあります。どのような方法で、どのような生理用品を頒布するのか、よりよい方策を模索しながらの活動が続けられています。

 


欧米のように経済的な理由で生理用品を入手できない「生理の貧困」もあれば、そもそも生理用品という概念さえ存在しない「生理の貧困」もあるのです。

 

 

 


日本にもある「生理格差」

 


では日本はどうでしょう。生理用ナプキンの性能は世界最高水準ですし、さらに便利で快適な新しい製品も次々と登場しています。ミチカケの売り場を見れは、日本の女性の「生理環境」がいかに恵まれているかは一目瞭然です。生理痛や月経前症候群(PMS)も、安全で有効な鎮痛薬や低用量ピルでかなりコントロールできるようになりました。IUS(子宮内黄体ホルモン放出システム)を装着するなどして、生理自体をなくしてしまうことも可能です。

 


もはや、生理にまつわるわずらわしさや困難を完全に克服してしまった女性たちもいることでしょう。しかし、誰にでもそれが可能かというと、そうではありません。さきほど触れたように、これらにかかる費用を計算すると、人によってはびっくりするような金額になります。

 


びっくりしない人、つまり生活に余裕のある人たちは、より快適な「生理環境」を手に入れることができますが、出費が痛くて手が出ない、という人も少なくありません。SNSには、こうした女性たちの率直な声があふれています。

 


「月経カップや吸収型サニタリーショーツに興味はあっても、数千円出して買ってみて、もし自分には合わなかったら……と躊躇してしまう」「月経カップは繰り返し使えるので、長い目で見たら経済的だけど、ショーツは当初から2枚は必要だから購入を迷ってしまう」「ピルで生理をコントロールしたいけど、毎月の薬代が侮れない」など。「生理の貧困」とまではいかないまでも、「生理格差」は日本の社会にも存在するのです。

 

 

 

 

「毒親」にナプキンを買ってもらえない女の子たち

 


日本の「生理環境」に関して気になっていることは他にもあります。初経を迎えても保護者から生理用ナプキンを買ってもらえない女の子たちの存在です。保護者に経済的な余裕がなく、そのシワ寄せでナプキンを買うことができない女の子もいれば、「毒親」による「ネグレクト」によってナプキンを買ってもらえない女の子もいます。日本の「生理環境」に関して、いまだ可視化されていない大問題です。

 


生理をはじめとする女性の身体にまつわる事々について、日本ではタブー視が払拭されつつあり、ミチカケのような空間も登場しています。ミチカケが「生理環境」の「光」の部分を象徴しているとすれば、ナプキンさえ手に入れることのできない女の子たちの存在は「影」と言えます。

 


彼女たちの存在を可視化し、手を差し伸べることはできないでしょうか。

 

 

 

 

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プロフィール:
田中 ひかる
1970年東京生まれ。歴史社会学者。著書に『月経と犯罪 女性犯罪論の真偽を問う』(批評社)、『「オバサン」はなぜ嫌われるか』(集英社新書)、『生理用品の社会史』(角川ソフィア文庫)、『明治を生きた男装の女医 高橋瑞物語』(中央公論新社)など。

 

HP:http://tanaka-hikaru.com/

 

 

<田中ひかる先生のこれまでの #わたしのミチカケ コラム>

2019年11月 「ミチカケ」オープンに、アンネナプキンのデビューを思う

2020年2月 生理用品の進化は“タブー視”との闘いだった

2020年4月 なぜタンポンは “タブー視” されてきたのか

2020年6月 スペイン風邪で逝った恋人を追った「女優」の話

2020年9月 生理はいつからタブー視されていたの?「生理の近代史」をレクチャー

 

 

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